『捨て猫』
著者:黒沢柚月
あの子を…抱き締めてあげてね。あの子には、それが必要なんだから。
―――そんなこと言われても。
僕はぽつりと呟く。彼女に聞こえないように、小さく。
彼女の言う「あの子」を拾って、ちょうど2週間が経っていた。
この街の景色や匂いは変わらないけど、流れてる時間は果たして繋がってるんだろうか。
僕は、家で待っている風邪っぴきの「元・捨て猫」のために、色とりどりの傘の間を縫って歩く。
秋の終わりの雨は、冷たくて、さみしい。
2週間前に、僕の住むアパートの前に捨てられていた猫。
今日と同じような小雨の中、そいつは階段の下でうずくまって眠っていた。
左側の三つ編みが乱れていた。それに、赤いリボンのセーラー服も。
声をかけて起こし、名前を訪ねると、猫はふわふわと欠伸をしてから
「麻衣。アサのコロモで、まい。」
と、鳴いた。
僕の心には何故か、麻の衣をまとったイエス・キリストが思い浮かび、片言の日本語で
「拾イナサーイ。ソシタラ飼エルヨー」
と彼が言ったので、僕はこの猫を拾うことにした。
そのくらい、僕の生活は鬱屈としていたのだ。…きっと。
麻衣は僕よりも4つ年下だった。
高校を中退して親に勘当されたとか、彼氏にフられて深く傷ついたとか、授業をサボって(彼女は「自主早退だよォ」と笑った)見上げた空が綺麗だったとか、その日によって違う家出の理由を語った。まぁ、僕にとってはそんな事はどうでも良くって、気まぐれな猫を飼い始めた自分がなんだか誇らしかった。
ただ、僕の家で暮らし始めた彼女に、少しだけ衰弱の色が見え隠れしてきたので、僕が学校に行っている昼のあいだだけ、麻衣を姉のところに預けることにした。
「姉さん、それでも一応精神科医の端くれなんだろ。少しでいいからさぁ、麻衣と喋ってやってよ。」
一応って何よ、と言いながら僕が連れこんだ新しい住人に驚いていた姉も、日が経つにつれて麻衣と親しくなったようだった。
はたから見たそれは、姉妹のようにも見えた。
その姉から告げられた、「抱き締めてあげて」の言葉。
風邪をこじらせないよう、姉の家に泊まらせるように、とも勧められた。
麻衣は精神が不安定なんだろうか?それは、僕のせいで?
好奇心は旺盛だが、同時に警戒心も強い猫のことだ。僕が麻衣を抱き締めたところで、嫌がられるだろうことは簡単に察しがつく。
麻衣にアパートを出ていかれるのが、僕は何だか怖かった。
「おかえり。ごめんね、まだ熱さがんないや;」
―――猫はよくなついている。
「ただいま。」
飼い主であるはずの僕もまた、自由奔放な猫に支配されつつあった。
二人きりの夜がまた、時間を紡ぎだす。
「暇だねぇ、マコトちゃん」
「―――何もする事ないからな」
「本の朗読してあげようか?」
「なんの本?」
「フランス書院文庫」
「…やめとく」
雨はやまず、ワルツなんだかマーチなんだかよくわからないリズムを刻み続けている。
「マコトちゃん」
心地よい沈黙を断ち切ったのは、麻衣のほうだった。
ついこの前まで見知らぬ赤の他人だった彼女が、親しげに僕の名前を呼ぶ。
それはまるで、日常の世界から鏡の間に迷い込んだかのような錯覚を思わせた。
「おしゃべりしよう。雨の音ばっか聞いてると、どっか遠くに行っちゃいそうだから」
僕の返事も待たずに、麻衣は窓の外を見ながらしゃべりだす。
「おしゃべりって言うより、あたしがこれから話すこと、聞いててくれる?」
なんとなく生真面目な気分になって、僕はうなずいた。
「私の名前は麻衣。これは本当。
私は、私を拾ってくれた優しいマコトちゃんに、いくつか嘘をつきました。」
僕は少しだけ笑った。
知ってるよ。
高校を中退したなら、何で制服で街を歩いてたのかな。
「学校の授業を抜け出したのは本当です。彼氏がいたのも本当です。
でも、私は学校にくるためにまず、病院を抜け出しました。」
―――病院?
麻衣は僕のほうを見ない。
トーンは明るいままの声に、僕の体温が奪われていくのがわかった。
病院って?
「私は心臓に爆弾を抱えています。それはそれは小さかったころから、ずーっとね。」
「・・・どういうこと?」
「あたしの親、普通の学校には行かせてくれたけど、いざ発作を起こしたときに見舞いにもこない。あたしより12歳も年が離れてて、健康な妹をかわいがる。
死んじゃだめだ、っていう言葉も、励ましのようには聞こえない。入退院とか、薬代とかにかかるお金の話ばっかりする。
あんたが帰ってきても、もう部屋空いてないわよって言われたんだよ。もうすぐ退院できるって言う喜びを、誰にも受け取ってもらえない。あたし、くやしくってさぁ。見返したくて、困らせたくて、病院から直接制服に着替えて、空っぽのカバン持って学校にいって、」
麻衣は泣いていた。
僕を見ようとはせず、多分僕自身の声も届いてはいない。
「高校に入った時にできた彼氏の隣には、いつのまにか違う女の子がいて」
麻衣は泣いていた。
でも、声はいつもと変わらない。
悔しさや悲しみを押し殺した、精一杯の明るさだった。
「全部失った状態で、自分の足でどこまで生きていけるか、あたしはあたしを試したの。でも、結局マコトちゃんに拾われて、何にも考えずに頼ってばっか。」
うれしかったんだよ、と小さな声がもれた。
何をいってあげられるだろう。
「かまってくれるって分かって、すごく幸せだった。どんなことでもしてあげようと思った。・・・でも、あたしは弱い。病気持ちだし、いつ死んじゃうかもわかんないし、無鉄砲だし、わがままだし、マコトちゃんに、何もしてあげられないまま負担になってる。」
あたし、死んじゃったほうがいいかもしれない。
麻衣に最後の言葉を言い切らせるわけにはいかなかった。
後ろから抱きしめた彼女の背中は、細くて、小さくて、悲しいほど小刻みに震えていた。
自分に対するみじめさか、それとも、みじめさよりももっとつらい、恐ろしい空虚のためか。
何も言えない僕の腕の中で、麻衣は声をあげて泣いた。
「麻衣、姉さんとこ行って、まずは元気になってから帰っといで。麻衣を突き放すわけじゃない。それとも、僕に突き放させるつもり?」
あのときの、僕の判断は、正しかったのか、
間違って、いたのか。
―――不安定な状態で、僕の家に一人でおいておくわけには行かないと、
預けた姉の家で、麻衣は一人ぼっちで死んだ。
鳴り響く電話。彼女が感じたのと同じ、果てしなき空虚。
姉さんの声が、僕の耳へと入って、抜けていく。
「朝、声をかけてみたら返事がなくって、お布団の中で眠ってるうちに、だったみたい――――・・・・」
●《自己批評》
『・・・うーん・・・こじつけ・・・(ぽそっ)
今回の自分のなかでの設定はですね、
前回が女主人公だったんで、男主人公に。
堅苦しい文章だったので、比較的読みやすい文体に。
最終的にこういう結末にはしたくなかったんですけど・・・かなり無理やりな感じに終わらせちゃった感じがします;
だめだめだー(ノД`;)
はじまりがこんなんで、申し訳ないですorz』
> > > > > > > > > > > > > > >
◎「朝、声をかけてみたら返事がなくって、お布団の中で眠ってるうちに、だったみたい」
『ハンドドッグ・マウンテン、時々水晶時計』
著者:七夜実
「朝、声をかけてみたら返事がなくって、お布団の中で眠ってるうちに、だったみたい」
ということは本人、死んだつもりが全くないだろうな。
成仏できるのだろうか?
本日の主役よりも幽鬼じみた母親の話を聴きながら、木の箱の中に横たわる、見たこともない口紅をした友人の顔を見ていた。
* * * * *
又、失敗してしまった。
次は上手くやらないと。
* * * * *
「ほんとに急だよね。こんなことなら、もっと遊びに誘えば良かったな」
とは言うものの、きっと話すことなんか、何にもなかったに違いない。
弔問客に出された、冷えて無駄に大きい弁当を箸でつつきながら話をする友達の話を耳に挟みながら、黒枠の中でハニかんでいる友人の顔を見ていた。
* * * * *
もう方法がない。
やりたくないけど、死ぬには仕方ない。
* * * * *
「これ、まだ大事にとってたんだね。それとも、捨てる時間が無かったのかな」
誰に向かって話しているのか、自問するのも野暮だと感じるほど、この部屋は友人の薄い気配で満ちている。
机の上、出したままの本の中に埋もれていた手帳の中で、私の作り笑いと一緒に写真に収まっている、愛想笑いを浮かべた友人の顔を見ていた。
* * * * *
久しぶりに街を歩く。
群衆を見ずに、上を見ながら歩いていく。
* * * * *
「・・・ん?早かったね。今日は友達と飲んでいくのかなと思ってたんだけど・・・どうかしたの?」
鉄の箱に入ってるくせに、その狭い隙間からしか見えないくせに、外のことにはよく気づくんだな、と失笑してみたりする。
似合ってしまう黒い服を着た私。ふと覗き込んだ窓に映る身体のない私の顔に、見飽きてしまった友人の顔を見ていた。
* * * * *
あの高さならば大丈夫だろう。
そのビルに入りながら、空を落ちる自分を夢想する。
* * * * *
「きっとあのおじさんも、そのロッカーを薦めたのはいいけれども、やっぱり、一人では死ねなかったんだよ、きっと」
話の間だけは、箱に徹してくれるつもりなのか、さっきから一言も返さないのが、なんだか面はゆかったりする。
箱に背を預けて、その冷たさを味わいながら、私がどうしても近寄れず、独りで死ぬことも出来ず、自分で死を与えることすらもできなかった友人の顔を忘れるために話を続ける。
* * * * *
屋上から下を覗き込み、見ることの出来ない世界を幻視する。
私
はびしょび
しょのコンクリート
に投げ出され
た、とてつもな
く大き
な魚の死骸だ
っ
た。
●《自己批評》
『今回の作品は、九月提出作品の、正当な続編となります。
これをよむことで、前回の続きの応酬も結論も、一発で分かるように出来てます。
最も、二人はそれどころではない、みたいですが。
最近、ロッカーにペンキで色を付けて、中の人がシンナー臭の激しさに発作を起こした
とか無いとか。
それでは、雲が凍り付く前に、ココロを凍り付かせてしまいましょう。
傷つかないように、傷つけないように、そっと・・・』
> > > > > > > > > > > > > > >
◎私はびしょびしょのコンクリートに投げ出された、とてつもなく大きな魚の死骸だった。
『コンクリートの上の魚 』
著者:亜季
私はびしょびしょのコンクリートに投げ出された、とてつもなく大きな魚の死骸だった。
「ミィ、愛してるよ・・・。」
その言葉と裏腹に、レイの体からは私を疑う不安さが全身で伝わってくる。
信じられずに愛されることが、
こんなにも苦しいものだとは思っていなかった。
ベッドの上で身動きを取れなくなった私は、
生きながらにして
コンクリートの上に投げ捨てられた魚のような気分だった。
私は海に戻りたかった。
けれど、例え海の中でなくとも
コンクリートの上でも愛という水があれば苦しいながらも
いつか大好きな優しい海に戻れる可能性を信じて
新しい海を探そうとは思えなかった。
大好きな海を当たり前のように思いすぎて、
自分に合いもしない他の海に目移りした自分が情けなかった。
そして、コンクリートの上で生き抜くために覚えた私の最後の抵抗は
自分で自分を傷つけることだった。
びしょびしょのコンクリートの上で
自分が傷ついてでも暴れもだえることで、少ない水を体中に行き渡らせた。
そうすることで、水の不足からくる心の苦しみを
自分の身を身代わりに抑えることができたからだ。
だけど、もう限界だった。
傷だらけになった魚の死骸のような私には、
コンクリートの水も、愛しい命の海でさえも意味はなくなっていった。
「ミィのこと、信じたいのに信じれないよ・・・。」
私を想い苦しむ気持ちはレイの中に納まりきらずに
それが私にも伝染していたのだ。
●《自己批評》
『壊れた恋愛を魚と海に例えてみました。』
> > > > > > > > > > > > > > >
◎それが私にも伝染していたのだ。
『伝染源』
著者:塵子
「それが私にも"伝染"しているのだ」
姐さんが俺にそれを告白したのは、公園で一緒だったちび…ミキちゃんを家に送り届けた帰りのことだった。
「"伝染"って…さっき姐さんが言ってた"能力"のことか?」
「そう、だから私は初めて会ったときに貴様に言っただろう?
"私は神だ"と。実際は神ではない。が、人間でもない。……暑さも寒さも感じない人間は、もはや人間ではないさ」
姐さん……サトイさんと会ってから数ヶ月、ずっと不思議に思っていたことがあった。
なぜか姐さんは、問題を抱えて追いつめられた人間のところに突然現れる。初めて会ったときもそうだ。あるカップルが住むアパートの前で会ったとき、姐さんは彼らの様子を見て、「試練が終わった」と言った。そして、次は俺の試練だと。
そのときは、確かに彼女の激しいハリセン乱舞のおかげで俺は人生に意味を見出した。でもそんなの偶然だと思ってたんだ。適当に、曖昧に言ったことが当たったように思えただけ。ノストラダムスの大予言と同じようなもんで、ただのこじつけだと思ってた。
だが、その後も彼女を観察していると、毎回毎回似たようなことが起きていた。つまり、俺のように「今どうしたらいいかわからない人間」……まあ言ってみれば人生の迷子みたいになったヤツラの前に現れてはハリセンでぶっ飛ばして血まみれにしていた。でも、確かに姐さんに殴られたヤツラは、みんな目に生気を取り戻して帰って行く。恋愛に悩む女子高生、家庭に悩むサラリーマン、自身の死を前に悩むご老人……とにかくたくさんの人々に姐さんは声をかけ、ときにはハリセンで殴りつけて血みどろにしながらも、最後に彼らは生き生きとした目で帰っていった。
一度なら、俺のことだけなら偶然だと思っただろう。しかし、二度三度と続いたことはもはや偶然ではない。必然だ。
俺は姐さんに聞いた。
なぜそうやって追いつめられた人間ばかりに声をかけるのか?
そして、なぜ彼らに生気を取り戻すことができるのか?
姐さんはいつものように、にやりと笑って答えた。
「私は悩みを持った人間の影が見えるのだ」と。
「その影を消す方法も知っている」と。
そして、「それが"伝染"した者だけが持つ能力なのだ」と。
伝染した者たち…"伝染源"は、俺らなんか思いもつかないようなおエライ組織の指令で動いているのだと。
俺は単純に、「そりゃすごいことだ」と思った。だって"伝染源"が大勢いれば、世界中のみんなの悩みが消えるんだぜ?
公園で会ったミキちゃんも家のことで悩んでいたようだが、姐さんと会うことでだんだん元気を取り戻しつつある。姐さんみたいな人がたくさんいれば、誰も悩まなくてすむだろう?
みんなハッピーじゃないか!
本気でそう思ってたんだ、姐さんの話を詳しく聴くまでは。
「私たち……"伝染源"の仕事は、要は"おせっかい"や"大きなお世話"というヤツだ。でも、世の中にはそうやって無理矢理蹴っ飛ばしてやらなければ、前に進めない人間もいる。そういう人間には影が見えるのさ、こう、黒いもやのようなものがね。そのもやさえとってしまえば、彼らは今まで見えなかった何かが見えるようになる。その結果、悩みが解消されるってわけさ。私たちは、ただ彼らの手伝いをしているに過ぎない。実際、蹴り飛ばされたあと何かに気付くか否かは、その本人の問題だからな」
じゃああのとき、将来のことで迷っていた俺にも黒いもやが見えたのだろう。そのことをおエライさんに伝えられて、姐さんは俺の前に現れたということか。
「まあ、問題は…もやを消すために、代償が必要になるってことくらいだな」
「代償!?」
「実を言えば、もやは消すのではなく吸収するのさ、"伝染源"がね。だからその分、体に徐々に負担がかかり、少しずつ"普通の人間"から離れて行くわけ。さっき言っただろう? 私は暑さも寒さも感じない、と。ついでに言えば、痛みも感じない。今ではこのざまだ」
そういうなり、突然姐さんは手首にナイフをあてがった。
「ちょっ! おい、何を!?」
「……な? 血も出ない人間を人間と呼べるか?」
……その通りだった。確かに姐さんは思い切り手首を切ったはずなのに、俺もハッキリとこの目で見たはずなのに、手首には血の一滴どころか傷すらついていなかった。
「まあ、そんな顔をするな。この体にももう慣れた」
ナイフをしまいながら彼女は言う。
姐さんに負担がかかるなんて、全く考えたことがなかった。いつも平然とした顔をしてハリセンを振り回すサトイ姐さん。メイド服やらチャイナ服やら、奇抜な格好でみんなの前に現れては、勝手に悩み相談を始めて相手を殴り倒して去って行く。この人には絶対悩みなんてねーんだろうな、そんな風に思っていたくらいだ。
姐さんは静かに言った。
「……私の子どもも、能力の代償として死なせてしまったようなものだ。まだ子どもが私の腹にいた頃、私は"伝染源"になってな。この力のおかげで負荷がかかり、男か女かもわからない胎児の状態で亡くしてしまったよ」
「………」
言葉も出なかった。俺は単純に考えていた自分に思いっきり腹が立った。姐さんは…というより"伝染源"たちは、他人を少しでも幸せにするために、自分の身を削っておせっかいを焼いているのだ。俺は少しでも考えたことがあっただろうか? 俺におせっかいを焼いてくれる人々の気持ちを。自分の身を削って他人のために尽くしている人々の気持ちを。そして、子どもを亡くしてまで他人のために動いているサトイ姐さんの気持ちを。
「ならっ! そんな仕事辞めちまえばいいじゃねーかよ! そしたら姐さんだって、普通の人間として生きられるだろう!?」
「……無理なんだよ。一度"伝染源"になってしまった者には、政府のチェックがついてまわる。逃げることはできない。それだけ特殊な存在なんだよ、私たちはね」
「そんな!! それじゃ、姐さんは他人のために一生を棒に振るってのかよ!」
「棒に振るとは思ってないさ。こうして誰かの役に立てる今の私は、昔の自分に比べればよほどましな存在だ。誰かに必要とされるのだからな。そして、私自身おせっかいを焼くのは嫌いじゃない。それに加えて守るべき家族もいない。まさにこの仕事は適任だよ」
「でもよ!! それじゃあ……」
食い下がる俺を見て、姐さんは苦笑しながらつぶやいた。
「……ひとつだけ、"伝染源"を辞める方法があるにはあるんだがね……」
「あるのか!? ならそれを教えてくれよ! 俺だって姐さんには世話になってんだ、このまま姐さんが辛い思いをするのなんか見てられねぇよ!!」
「他の誰かを"伝染源"にすることさ」
「なっ!?」
「私の夫は"伝染源"だったんだよ。彼は仕事を長くこなしていて、この業界ではエリートでね。その結果、私と結婚した2年後には、力を使いすぎて動くことすらできなくなった。私は彼をせめて人間として死なせてやりたかった。それで彼に限界が来る直前、新たな"伝染源"として仕事を引きついだのさ。双方の同意があれば、力を"伝染"させることはできる。だが、今の私にはとても他の人間に"伝染"させる勇気はない。他の人間に、私と同じ気持ちを味あわせる必要はない」
「そうは言われてもよ……!!」
「ナチ、あまり私にシンクロするな。考えるな。"伝染源"に関わりすぎると、イレギュラーだが"伝染源"の意思に関係なく"伝染"する可能性がある。それは私の本意ではない」
3日後。サトイ姐さんから"伝染源"の話を聞いてから、俺はずっと迷っていた。まず、ナゼ自分がこんなに迷うのか、そのこと自体に迷っていた。3日経って、やっと気がついた。俺はなんだかんだ言いつつも、サトイ姐さんのことが気に入っているのだ。いなくなって欲しくないのだ。でも、このまま"伝染源"として仕事を続ければ、いつかは姐さんは…彼女の夫のように、限界がきてしまうのかもしれない。"伝染源"の限界がどういうものなのかはわからないが、それだけはどうしても避けたかった。
「だが、俺に何ができるんだ?」
3日間考え続けた。未だに答えは出ない。
6畳一間のアパートで布団に倒れこみ天井を見上げる。天井に、姐さんの姿が浮かんでは、消えた。
本当はわかっていた。俺が姐さんのためにしてやれることはひとつしかない。
「だけど、それができるのかしら?」テレビが俺に語りかけた。
「ただの同情じゃあ、どうしようもねぇんだぜ?」冷蔵庫がそう言った気がした。
「だって人間を辞めるんだよ?」枕までもうるさく話し出したので、俺は思いっきり壁に投げ飛ばしてヤツの言葉を消してやった。
とりあえず寝よう。そう思った。
でも、思いは消えない。俺が彼女にできることは、やはりひとつしかないのだ。
「"伝染源"になる覚悟はあるか?」
布団に横になって目を閉じると、あの夜見たマンホールの蓋がぱくぱくと動いて、暗い穴が口をききはじめた。
●《自己批評》
『寸評…というか、感想だよっ! 感想だよっ!
なんかもう、どうにかしてギャグにしようと思ったけど今回は無理だったよ! 精神的にちょっとギャグにするのが苦しかったよっ!
やっぱりギャグには体力を使うねっ!
ということで、今回は珍しく暗い話だよ!
そしてなぜか内藤クンの真似して感想書いてるよっ!
謎だねっ! 謎だねっ!
今のあたしの精神構造がだいぶ謎だねっ!
脳みそがカレーになっちゃってるかもしれないねっ!
……そんなわけで、今回はギャグを入れる体力がありませんですた。破壊神としてはそこが悔やんでも悔やみきれない部分でございます』
> > > > > > > > > > > > > > >
◎布団に横になって目を閉じると、マンホールの蓋がぱくぱくと動いて、暗い穴が口をききはじめる。
著者:晴
プレッシャーに弱いか!?
命名、「晴みそ」
> > > > > > > > > > > > > > >
◎雨なんかもう降ってないのに、傘をさしてゆっくりと歩いてくる人がいる。
著者:癒月ハルナ
素敵な誕生日だねっ!(嫌味じゃ無いし)
命名、「ハルナみそフゥー」
> > > > > > > > > > > > > > >
◎「死んだことないくせに」
『フェアリーテイル』
著者:絵空ひろ
「死んだことないくせに」
私は机にほおづえをついたまま、少しあきれ気味に呟いた。
ここのところ、彼はおかしな本ばかり買って来る。
『死後の世界』『幽霊は実在するか』『輪廻転生を信じて』
夜更かしをして読み込んだ挙句、学校で友達に得々と披露するものだから、最近では彼の半径1メートル以内に近寄る人はいなくなってしまった。
「死後は・・・・生まれ変わりは・・・」
とお昼休みに得意げに語る彼の鼻先を、私は指でピンっとはじく。
17歳にもなってそんな嘘ばっかりの本を信じるなんて、我が彼氏ながら情けない。
死後の世界のことなら私のほうがずっと詳しい。
なんたって私は死んでいる。死んでる暦3ヶ月だ。死後の世界を語るのにこれほど相応しい人材はないだろう。百聞は一見にしかずとはこのことだ。
自転車で横断歩道を渡っていて、突っ込んでくるトラックに気付いた次の瞬間、すでに私はまぶしい光に包まれた建物の一室で、お堅いスーツに身を包んだ死神と面接をしていた。
残業疲れのような顔色の死神に、事務的に名前と住所と年齢を聞かれ、幾つかの契約書にサインし、ちょっとしたアンケートに答えた後、
「それで、ご希望の姿は?」
と聞かれた。驚いたことに、死後の世界ではなりたい姿に変身できるのだという。
聞けば、若い女性で一番多いのは、やはり真っ白いドレスに身を包んだ花嫁さんスタイル。何か恨みをもっていて化けて出てやりたい!と気合の入っている人は「幽霊スタイル」を選ぶ。昔は着物に流血メイクがはやっていたが、最近では白いワンピースに黒の長髪から片目だけ可愛く覗かせるのが人気だという。
私は妖精の姿にしてくれるようお願いした。
幼い頃大好きだった、大人になりたくない少年の冒険物語。それに登場する愛らしい妖精。小さく軽やかな身体に、薄くしなやかな羽根を持ち、大好きな人の周りを愛しげに飛び回る彼女になりたかった。彼女のように大切な彼の為に何かしてあげたかった。
望みは叶えられ、私の背中には透明で可愛い羽根が生えた。身体も手のひらに乗るくらい小さくなった。
そして今、愛する人のそばにいる。
「・・・はずだったんだけど」
私はまたため息をついた。
当の彼氏は、大人になりたくない少年どころか、危ないオカルトオタクになってしまった。ロマンチックもファンタジックもあったものではない。
私が死神の面接を受け、この世界に戻ってきたときにはすでに1ヶ月が過ぎていて、お葬式も何もかも終わっていた。その間、サッカー部で元気に駆け回っていた彼はすっかり変わってしまい、あまりの変貌ぶりにこっちが幽霊を見たような気分になった。
それから2ヶ月間、私は以前の元気な彼に戻ってもらえるように、さりげなくサッカーボールを彼のそばに転がしたり、シューズをぴかぴかにしたり、プロリーグの試合の結果を耳元で囁いたりした。
けれどそんな努力も空しく、彼のオカルト趣味は日を追うごとにひどくなり、買って来る本もどんどん怪しくなっていった。
『生まれ変わりを信じますか』『よみがえり魔術入門』までは笑ってすませた。
しかし、今日買ってきた本をみて私はひっくり返った。
『イザナキが教える黄泉の国への渡り方』『オルフェウスに学ぶ死後の世界』
「それって・・・」
そんな本があるのも驚きだけれど、何よりその題名が意味している事を考えると胸が痛くなった。
「・・・私を迎えに来ようとしてくれてるの・・・?」
嬉しくて切なくて涙がにじんだ。しかし物語のようにヒロイン気分で感傷にふけっている暇はなかった。彼はその本を読み終わると、なんと夜の学校に向かい、屋上に続く階段を上り始めたのだ。
「嘘でしょ。ちょっと、ダメだよ。ねえ!」
引き止めようと必死に服をひっぱったり、耳元で怒鳴ったり、往復ビンタをしたりしたけれど全部無駄に終わった。
彼を止めることが出来ない。何も伝えることが出来ない。何の役にも立たない。私はなんて落ちこぼれのフェアリー・・・。
どうしようもなくて彼の肩の上でただ泣きながら、月が輝く屋上に出た。お昼休みに一緒にお弁当を食べた思い出の場所。二人にとってとても大事なこの場所で、彼はこの世に別れをつげるべく手すりに手をかけている。
「お願い、思いとどまってー!」
必死に制服をひっぱっていると、彼のポケットから何かがガタッとコンクリートに落ちた。
それをみて私は電光石火で閃いた。
「コレだ!!」
生きてる時、一日に何度もメール交換した、恋人同士の必須アイテム『ケータイ』。
きっとこれなら彼に伝えられるはず。
「早打ちの修行の成果見せてやる!」
身体が小さくなっているので、全身でジャンプしてキーを打った。
「オバカナコトハ、ヤメナサイ!」
彼はポカンとした顔で手すりから手を離すと、勝手にメール作成画面になっているケータイの画面を見つめた。
「・・・?」
注意を引くことには成功した。ジャンプしてまたキーを打つ。
「オイカケテキテモラッテモ、ゼンゼンウレシクナイ!」
信じられないような呆然とした顔で、彼は膝を折ってコンクリートに座り込んだ。
「・・・ゆり?」
愛しい声で聞く、私の名前。泣きそうになるのを堪えて、私はまた続けてキーを打ち続けた。
「ワタシハ、テンゴクデ、カッコイイカレシヲツカマエマス。アナタモ、カワイイカノジョミツケテ、シアワセニナッテ」
心にもないことだけど、心の底からそうなって欲しい。彼はメールを打っているのが私だとすんなり信じたのか、会話するようにぽつんと呟いた。こんな時オカルトオタクは話が早くて助かる。
「僕ひとりで生きていけない。そんなこというなよ」
「アナタナラ、ダイジョウブ」
私はジャンプしながら、ぼんやりと死神と交わした契約のひとつを思い出した。生きている人と言葉を交わしてしまったら、幽霊はすみやかにこの世に別れを告げ、成仏しなければならない・・・。
契約どおり、身体からはエネルギーがなくなっていった。きっともう長くは動けない。私はふらふらしながらキーを打った。
「モウイキマス」
「待て!行くな!」
これで最後。もうジャンプできそうにない。私は最後の力をふりしぼってキーを打った。
「オトナニ、ナッテ」
それを読むと、彼はもう何も言わず膝をかかえてしまった。私もぐったりと彼の肩の上に倒れたまま長い長い時間が過ぎた。
やがて月もだいぶ傾いた頃、彼は涙を拭いてかばんをごそごそしはじめた。
「送ってやるよ。幽霊を成仏させるときには線香を焚いて見送ってやると、天国で幸せになれるってこの本に書いてある」
そう言いながら彼が取り出したのは『悪霊退散』という縁起でもない本だった。そして彼の手にあるお線香には『天然ハーブ レモングラスの香り』などと書いてある。
「私は悪霊か!しかもそれお線香じゃなくてハーブ香だし!」
ご丁寧に、セットでついてきた可愛いネコの形のお香立てに必死に立てようとしている。
全くもって最後までロマンチックもファンタジックもないんだから。
あきれたけれど嬉しかった。なんだかあわてている横顔も頼もしい。
きっと彼は今ひとつ大人になったんだろう。
柔らかで優しいお香の香りが私の身体を包み込み、透きとおる羽根に染み込んでいく。
ひとりぼっちで天国への道を登らなければならない私に、淋しくないよと語りかけてくるようだった。
「さよなら。幸せになってね」
二人の声が重なったちょうどその時、空から光が降りてきて、私の身体をゆっくりと持ち上げ地上から離していった。
私は、ネコのお香立てを片手に立ち尽くしている彼の姿を目に焼き付け、ゆっくりと生まれ育った街の夜景を仰ぐと、振り切るように月が浮かぶ空を見た。
身体はどんどん急上昇し、白い光の中に新しい世界の扉が見えてきた。天上のあまりの眩しさに目を閉じると、涙が一粒こぼれて落ちた。
もう戻れない。
彼が焚いてくれた、包み込むように暖かで優しいレモングラスの香り。
それは目を開けてからもしばらくの間、宙を漂いながら私にまとわりついた。
●《自己批評》
『かなりありがちなパターンのお話になってしまいました(^^;しかも結構長い・・。
題名のフェアリーテイルとは「おとぎ話、嘘」という意味で話とズレてるような感じですが、フェアリーという単語に掛けたのと、彼女が彼についたけなげな嘘、ということでカンベンしてください。
最初はズバリ「ティンカーベル」という題名だったんですが、どうもピーターパンって著作権切れてないらしいんです。
それに気付いてからあわてて考えたんですが、結局思いつかず、苦し紛れにつけてしまいました。
余談ですが、最近、映画「フック」を見てこのお話を思いつきました。ティンカーベルってすごく切ないキャラですよね。』
> > > > > > > > > > > > > > >
◎それは目を開けてからもしばらくの間、宙を漂いながら私にまとわりついた。
著者:Nomad
ギャグのオチが、出なかったのかな?
命名、「Noみそmad」
> > > > > > > > > > > > > > >
◎「どうして裸なの?」
『リトル・サンタ』
著者:暇子
「どうして裸なの?」
「うるさい!罰ゲームなんだよ!・・・・っくしょい!」
師走のこの寒空の下、トランクス一丁で居る方がおかしい。
少女が不思議がるのも無理は無いな。
「っていうか、おまえはドコん家の子だ?
いいのか?こんな時間にこんなトコうろついてて。」
もうすぐ日付も変わろうとしている。
こんな時間にこんなトコをうろついている少女も少女だが、
こんな時間にこんな格好をしている俺も俺だ。
去年の今頃。
いつも同じメンバーで集まっていた友人同士男5人。
誰がというワケでもなく言い出した。
「来年、1人でクリスマスを過ごすヤツ、罰ゲームな!」
で、俺がそうなった。
正直、3人ぐらいは居ると思っていたのにな。
俺だけかよ。
俺は・・・・
アイツの事が忘れられないから彼女なんて作る気にもなれなかった。
アイツ、元気でやってるのかな・・・。
出来る事なら・・・・・・なんてな。
「お兄ちゃん、昔の彼女の事が気になってるのね。」
「ん?ああ、そうだよ・・・」
って、俺、口に出して言ってたんだ!?恥ずかしい!!
その時、居酒屋の戸が半分開いて、俺の連れが顔を出した。
「お〜い、もう30分たったから中入れよ!風邪ひくぞ。」※死にます
「おお!じゃ、そういうワケだから。」
俺は、とりあえず差し出された自分の上着をはおりながら、そう少女に言い残して店内に入っていった。
「あはは、何ひとりごと言ってんだよ、寒さで頭やられたか?」
ん?俺の陰になって少女が見えて無かったかな?
イヴの夜。
やっぱり俺は1人で部屋に居た。
出掛けても寂しい思いをするだけだ。
よりによって今年のクリスマスは土日じゃねぇか。
あ〜あ、去年はムサイ男5人でワイワイ騒いでたよなぁ。
ピンポーン!
玄関のドアを開けると、そこにはどこかで見た事のある少女。
ああ、そうだ。あの時、裸で居酒屋の前で話した子だ。
「なんで家を知ってるんだ?何しに来たんだ?」
「お兄さんを幸せにしに来たんだ。」
意味分かんねぇ!
「アタシ、サンタの修行中なんだ。」
少女の話によると、何人かの少年少女がサンタの修行に励んでるらしい。
そして、自分が「この人!」と決めた誰か1人の願いを叶えてあげるらしい。
サンタパワーを使ってどんな願いでも叶えてあげられるらしい。
全くもって意味分かんねぇ!
ていうか、アニメの見すぎだよ、このガキ。
「お兄さん、彼女とまた会いたいんだよね?」
「うん・・・だけど・・・」
俺は彼女の幸せを一番に願っている事。
昔の恋人なんかが登場して今の彼女を困らせたくない事。
・・・を、少女に告げた。
何故だか少女を疑う気持ちは和らいでいた。
「3年前、パリに絵の勉強に出た彼女も、実はお兄さんの事忘れられなかったみたい。
勉強に身が入らなくて、結局去年帰って来ちゃったんだ。
でも彼女もお兄さんに会いたいんだけど、今のお兄さんと同じ気持ちでクヨクヨしてるよ!」
・・・どこまで知ってるんだ!?
「言ったでしょ?サンタパワーだってば!」
こっ、心を読まれてるのか!?
「でもね、人を見誤るとサンタの修行は1から出直しなんだ。
同期だったアヤちゃんは、『宝くじ3億を当てて欲しい』ってお願いしたおじさんのトコに付いちゃって去年は失格。
あと少しで卒業だったユウタ君は『嫌いな人を抹消して欲しい』なんて人に付いちゃったから勘当されたんだよ!
お兄さんみたいに純粋なお願いを持った人を見抜く事が、サンタ修行の試験で一番重要なトコ!」
って、ファンタジーだ!!!
でも何故か少しだけ信じている俺がいる。
こんなガキの戯言を信じてまでアイツに会いたいのか?俺。
情けないったら無いよな。
「さぁ、行くわよ!」やたら元気な少女は俺の腕を引っ張る。
「行くって、ドコに!?」
「彼女のトコに決まってるじゃないの!」
少女は俺に目くばせして見せた。
私はあなたを信用している、あなたも私を信用してよろしい、と言っているように。
●《自己批評》
『またラヴストーリーかよ!!
愛に飢えてんのか!?アタシ!!!
一応相方は居ますが、非常に現実的だからでしょうね。
なんだか有り得ない話ですいません。
お題が難し過ぎました。
裸で始まって、どう健全に仕上げようか悩みました。
え?健全に仕上げる必要は無かったんですか?
な〜んだ、そうと分かってたら・・・いえ、すいません。
クリスマスネタは12月分にしようかと思ってたんですが、よく考えたら来月無いんですよね?
というワケで、少し早めですが、メリークリスマスです!!』
> > > > > > > > > > > > > > >
◎私はあなたを信用している、あなたも私を信用してよろしい、と言っているように。
『お芝居をしよう!』
著者:おりえ
私はあなたを信用している、あなたも私を信用してよろしい、と言っているように。
私は心底、疲れていた。
「そんな顔で見たってだめ」
「何故? 君にならわかるはずだ!」
「わからなくて結構。さあ、お帰りはあちらよ。さようなら!」
ドアを指差した私を、目の前の男は潤んだ目で見つめた。
「ジョセフィーヌ。君は前世での誓いを忘れたの?」
「そんな人知らないから」
「じゃあカルメン」
「逝ってよし」
指差したままでぴしゃりと言ってやれば、男はふふっと遠い目をした。
「コゼット、君はいつか思い出すよ、僕と過ごしたあの日々のことを」
「すいませんけど、私そんなに名前持ってないから」
「ああ、アンジェリーク、君は罪深い人」
「出てけっつーの!」
「ロザリア、君ならできる」
「行け!」
てこでも動かない彼を見て、私は途方に暮れていた。
…やっぱり、まずいよなあ…
彼がああなったのは、つい最近のことだ。学生時代からの友人で、つきあっているわけではないが、仲良く互いの家を行き来している。
あの日、いつものようにふらりと家に来た彼は、私を見て飛び掛ってきた。
幸い、私が護身術と空手と合気道とボクシングの覚えがあったために、ノされたのは彼のほうだったのだが、彼はその怪我が元で入院して(一応治療費は出してやった。 不本意だが)、お見舞いに来た私に、何も覚えていないことを話した。その時は、怪我のショックが原因なんだろうと思って、私も犬に噛まれたと思って今回のことは水に流してやったんだが(友人曰く、犬はむしろ私だと)、退院してきた彼は、私の部屋に来て、また同じことをした。
幸い、私が柔道とレスリングと中国拳法と気功法の覚えもあったために、今度は加減して彼を昏倒させ、入院するまでボコるようなことはさすがにしなかったが、彼はここまで学習能力のないやつだったのか、そもそも何故今更私に飛び掛るのか、というか私の経歴を知っていながら何故そんな命を捨てるような真似をするのか、私は大いに悩んだ。
また妙なことをされては困るので、警察学校に通った経験を生かし、彼の手足を縄で拘束し(山岳部にいた頃のものを使った)、彼が目覚めるのを待つ。一時期看護婦を目指していたこともある私は、手首の脈を正確に測りながら、じっと見守った。
やがて彼は目を覚まし、私を見てこう言った。
「やあお早うジョアンナ。目覚めのコーヒーを淹れておくれ」
やっちまったと後悔した。そんなに打ち所が悪かったんだろうか。いや待て。彼は私の部屋へ最初に訪れたときから変だったのだ。私はあんまり悪くないぞ。
とりあえず私は、彼の頬をぺしぺし叩き、死にたくなかったら妙な演技はやめろと脅しをかけてみたが、全く効果はなかった。やっぱりおかしい。私のことを知っている彼なら、この言葉を聞いたら震え上がったろうに。
混乱する私は、とりあえず彼の戒めを解き、帰ってくれと言った。懇願だ。これ以上彼のおかしい言動を見てたら、私がおかしくなる。彼の命の保証はできない。
彼は私に笑いかける。信用していいよべいべーときらきらした目が言っている。ヤメロ。
私は、不意に思い立ち、もしやと、お札の貼られた机の引き出しからメガネを取り出し、装着した。それから改めて彼を見てみる。
「…うわ。こりゃまずいわ」
なんでもっと早く気づけなかったのだろう。こいつ、変な霊に憑りつかれていましたよ。
私には微力ながら、人より霊感がある。その道のプロから、半ば強引に買わされた胡散臭い「霊が視えちゃう優れモノめがね」という、何のひねりもないネーミングの眼鏡が、こんなところで役に立つとは。備えあれば憂いなしだ。
眼鏡をかけて彼を見たら、とんでもないことになっていた。金髪やら銀髪やら、黒い肌やら白い肌やら、とにかく海外からなんで? というような人種の方々が、彼を取り囲んで、じゃんけんしているのだ。
『次は我が輩が』
『待て、おまえ後出ししただろ。バレてんだよ見えてんだよお見通しなんだよ!』
『こないだ久しぶりに見たよ。お前のやってることは、全てお見通しだーっ!』
『ヤマモトちゃん、可愛いよね』
『来年映画やるってよ、絶対見よう』
『またウエモトくん、カンフーやってくんないかな』
…んー、ん、んー。
私は咳払いして、もう一度彼らを見た。
『やっりぃ、俺勝った、なあなあなあ見てたべ、俺の勝ちだったべ』
『うし、おまえ行ってこい。持ち時間は5秒』
『うわ少ねー』
『後が詰まってんだよ、早くしろアホ』
金髪の外人さんが、彼の中に今までいた外人さんを蹴り飛ばした。その勢いでばたっと赤毛の外人さんが倒れ、その隙に金髪くんが彼に入る。
まさか私が一部始終を見ているとは知らない彼は、きりっとした顔で、私を見た。
「トゥルー! もう死人の声は聞かなくていいんだよ」
「…」
私がジト目で彼の中の金髪くんを睨んでいると、彼の目がきょろきょろ泳いだ。
後ろにずらりと控えている霊たちが、あれっと顔を見合わせている。
私は眼鏡を中指でくいっと押し上げて、彼ではなく、後ろの客人らに向かって言った。
「お前らのやってることは、全てまるっと、お見通しだっ!」
『あ、映画版』
『くわっぱ!』
「じゃかぁしぃ!」
ひいいと後退する霊たちに向かってずんずん歩み寄る私。あー、親には見せられない。
『マックス! 何よ何よ、組織から抜け出して、僕らの姿が見えるようになったの?』
黒髪の外人さんが、まあいやだわ、どうしましょうと周囲を見る。
『アリー、死人にはもう会えない。だけど君が外にいる間だけ、雨を止ませることはできる』
「うるさいよ」
『ローラ…どうした? 何故家の窓を』
銀髪の外人さんがそう言った瞬間、私は切れた。
「アルマンゾ、だってここは私たちの家よ? あんな人たちに使われるくらいなら、いっそ壊してしまえばいいんだわ!」
とある劇団に入団している私が声量ある声で言い放つと、彼らの動きがぴたりと止んだ。
『ありがとう、マドモアゼル』
銀髪くんが、目じりに涙を光らせながら、胸に手を当て一礼する。
『これでようやく、僕は逝ける…』
「は、はい?」
呆気に取られていると、銀髪くんは満ち足りた笑顔で、なんかキラキラした光に包まれて消えて行った…んですけど、ん? なんですか、これは。
『私たちの願いを叶えてくれる女優が、こんな所で見つかるとは…! おお神よ!』
牧師の格好をした人が、そう言って手を組み合わせる。納得がいかないので、突っ込んだ。
「神よ言ってんならさっさと逝けば? ついでに周りのも全部連れてけば? 何のための牧師なのよ? 迷惑なんですけど」
『何この人。冷たいよ』
『おいおい、そいつぁ言っちゃいけないだろ。ウルトラマンは昔背中にファスナーついてたんだぞ?』
『どんな例えだよ』
「シャラップ! 黙れ」
私が一喝すると、皆がぴしりと直立不動になった。ふふん、バレーボール部の部長で鍛えたこの覇気に、当てられないやつはいない。
『お嬢さん、我々を救えるのはあなただけだ。どうか哀れな子羊を救うと思って、力を――』
牧師さんが芝居がかった台詞で言ってきた。全くこいつらは。
「楽しそうにじゃんけんしてた癖に、何よ今更」
『まあ聞いてくれよ、俺たちの悲しい過去を』
筋肉質な外人さんが、涙ながらに話し始めた。いや、あの…大体想像つくからいいんですけど。
彼らの話によれば、生前の彼らは国を旅する劇団で、色々な国で役者をスカウトし、世界を転々としながら人々に自分たちの芝居を見せていた。
が、その移動中、不幸な事故に見舞われて、全員お星様になった。そのまま空で輝いていればいいものを、彼らは未練たっぷりで、まだ地上に留まっている。
その理由と言うのが…
『我ら劇団には、女性がひとりもいなかったのだ』
金髪くんが、くっと片手で目を覆う。
『恋愛モノとかやりたくても、誰も女装したがらないし』
赤毛くんが嘆く。
『あの世へ逝く前に、一度でいいから女性と共演したかったんだぁ!』
筋肉マンが絶叫した。
私は、気を失っている彼を見下ろして、牧師さんに言う。
「事情はよくわかったけど、なんでこいつに憑りついたの? おかげで彼、散々な目に遭ったんだけど」
『肉体的苦痛を散々浴びせた君には言われたくないが』
「正当防衛です」
『限度があるだろ』
くっ、と私は折れて、すいませんと謝った。なんで私が。
『よろしい。悔い改める者を、彼は寛大に許してくださる。
まーそれは置いといて。彼に我々が憑りついたのは、彼が我々の劇団員だからだ。
ひとりだけ事故に遭わなかったから、嫌がらせで』
「ほー」
私が半目になると、牧師はあさっての方向を向いた。
『彼は我々が日本に立ち寄った時にのみ手を貸してくれるという、派遣のような立場の者だが、それでも仲間は仲間だ。彼が我々と共に行かなかったのは、どうやら君が原因らしくてね』
「おいオッサン、ここにきて急に下手なラブコメ持ってきて雰囲気盛り上げようとしたってムダだからね?」
私が両手の骨をボキボキ鳴らすと、牧師は完全に後ろを向いてしまった。
『い、いやいやいや事実。事実だ。それにだ、彼の中に入って、君の事は全て知っている。君なら、我々を必ず成仏させてくれると信じて、ここまで来たのだ』
「…」
ほんとか? 自分で言うのも悲しいけど、こんな女に興味持っていらぬ感情抱いても、絶対後悔すると思うんだけど。
「私に気づいて欲しくて、皆で懸命に芝居してたわけね」
私は彼のことはさておいて、皆に向かって言った。劇団員たちの顔がぱっと輝く。
『その通りだ! 君が先ほどの彼を成仏させたように、たった一言でいいから、我々と芝居をしてほしい』
牧師と共に、皆に頭を下げられた。うおお、圧巻…
私はふうと息をつき、うなずいた。
「わかった。相手になってやろうじゃない。皆まとめて、お逝きなさい!」
それからはもう、他人に見られたら死ぬしかないほど奇妙なことをした。誰かが見たら、一人芝居をしているように見えるだろう。霊感のある人なら昏倒ものだ。
だが芝居に集中するのは悪くなかった。
何しろ皆アドリブで何か言ってくるので、こちらも適当に合わせてしゃべるしかない。彼らは納得の演技ができるまでは成仏せず、何度も何度も同じ台詞を言ったり、時に変えたり、次第に私も真剣になってきた。
彼らの熱意ある芝居を共に演じていると、彼らが本当に劇と言うものを愛していたのだということが伝わってくる。場所が私の部屋と言うのが悲しいが、舞台役者は何でも小道具にして芝居をする。彼らにかかれば、散らばった紙は木の葉となり、ボールペンは小枝となる。
いい感じだと思ったらすぐ、その人はありがとうと消えてしまうのも、ちょっぴり寂しかったりした。
『ありがとう。夢が叶ってよかった』
ようやくあとひとりとなったのは、あれから三日後だった。信じられない。休憩もあまりとらず、食事もしないで三日間。人間てすごいなあ。それとも私がすごいのか。
体力あるしね。
『さて、ようやく私で最後だね』
そう言ったのは、牧師だった。
「喉がらがらだけど、勘弁してね」
私はタオルで顔を拭きながら言う。11月で寒いはずなのに、私の部屋は異様に暑い。彼は未だに眠っている。多分牧師を成仏させないと、起きないのだろう。彼には聞きたいことがたくさんある。私とは長いつきあいなのに、彼が劇団に入っていることを言ってくれなかった。私をどう思っているのかも、聞いてみたい。
『最後だから、気合入れてみた』
私が耽っていると、牧師はそう言って、
「ちょっと!?」
『ぐわはははは、世界は我のもの! 皆跪け!』
私の部屋いっぱいに広がる、牛のような悪魔の姿になった!
「牧師じゃないの!? なにその姿は!」
私が叫ぶと、それは高らかに笑った。
『牧師とは仮の姿! 我を消したくば、我に勝負を挑むがいい! ぐわははははは!』
三日間、飲まず食わずで徹夜です。
体力あるって言ったって、限界というものがね、あるんですよ。
私は一気に脱力した。
「やめてよ…ここまで来て最後にファンタジー出すのやめてよ! 最後は綺麗に終わろうよ!」
涙の訴えにも耳を向けず、それは私に手を差し伸べた。
『さあ、我を成仏させてくれ。まずは生き血を差し出すのだ!』
私は眠っている彼を見た。ごめん。あんたが起きるには、まだまだ時間がかかるっぽい。
『生き血がだめなら、魂だ―――!!』
「いやだ、消えろ」と私は呟いたけれども、それは不気味な笑い声を洩らしただけだった。
●《自己批評》
『お題がシリアス風味なものが多かったので、敢えてギャグにした。
ネタを仕込んでやった。むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。』
> > > > > > > > > > > > > > >
◎「いやだ、消えろ」と私は呟いたけれども、それは不気味な笑い声を洩らしただけだった。
『樹の上でお月見 バルコニーで平均台』
著者:なずな
「いやだ、消えろ」と呟いたけれども、「それ」は不気味な笑い声を洩らしただけだった。
*
「それ」が トモミの前に初めて姿を見せたのは 電話で友達の悩みを聞いているときだった。
─ 大丈夫よ、心配ないって。ほら 泣かないの。
彼、きっとそんなつもりで言ったんじゃないってば。
私?私も 最近なかなか会えないの。
メールも途絶えがち・・
ふふ、そうそう うちは信頼関係バッチリですからね〜。
延々と続く堂々巡りの心配事に、根気よく答える。
学生時代から よく友達の相談に乗ってきた。
相談されるのは トモミも 嫌いではなかった。
なのに その電話の間 「それ」は さも退屈そうに大きなあくびをし、
イライラした様子で指を動かし、
いいかげんにしてよ、くだらない・・とでも言いたげにチッと舌打ちをした。
「それ」 は まぎれもなく鏡に映った・・・「自分」。
受話器を持ったまま呆然と鏡を見つめるトモミに向かって
「それ」は 一瞬 ニヤリと笑った。
*
通勤電車の窓ガラスにも 「それ」は、よく現れるようになった。
何もかも敵に回して毒を吐くような ゾクリとする 顔・・・
あるいは 疲れきった顔で、だらしなく無防備に眠る姿・・
電車の窓ガラスに「ありえない私」が映し出されている。
自分が今 しているはずの表情とは 全く 違う。
人前で やらないようにと トモミが厳しくしつけられてきた仕草、態度。
─ 「それ」は 自分の姿ではあるけれど けして「自分」ではない。
「自分」であるはずがない・・。
トモミは 電車の窓から 目を逸らす。
*
「あなたは 誰・・?」
朝、鏡に映った「それ」に、トモミは 聞いてみる。
「アンタに決まってるじゃない。鏡に映ってるんだもん。」
「それ」は 軽いけれど少しトゲのある声で 返事した。
「私は そんな 表情しないわ。」
「アハハ、まぁ 表面的には ね」
洗面所のシンクにひょいっと腰かけ、足を組み けだるそうに髪をかき上げて「それ」は言う。
「それ」は 徐々に トモミ自身とは 別の動きを見せ始めた。
「アンタが ずっと閉じ込めちゃった部分っていうか・・
そうだなぁ・・そうそう、カタブツの両親のご自慢の”いい子ちゃん”でいるために
蓋をしめて 隠しちゃった そこんとこ。
アンタが作り上げた自分に そぐわないからって切り取っちゃった そんなとこ。
グズグズ悩む友達なんて 思いっきりバカにしてるくせに、
自分は、っていうと 最近冷たいアイツのこと物凄く疑ってるんだ。」
「どうして、そんなこと・・?」
「うすうす気づいてるくせに。 もう終わりなんだ ってさ。」
「そんなこと、ない!!」
水道の蛇口からいつもよりきつめに水を出し ザブザブと荒っぽく顔を洗うと
トモミは鏡を見ずに 洗面所を後にした。
*
会社帰り、コンビニに 買い忘れの調味料を買いに立ち寄る。
一人暮らしをしていても 生活は全て きっちりしていたい。
どんなに残業で遅くなっても トモミは帰って食事を作るようにしていた。
店の 道路に面した壁一面の 大きなガラスに映った「それ」は
こちらを見ると 浮ついた調子で ピースサインした。
買い物カゴに インスタント食品や 惣菜、カップ麺
お酒にビールに おつまみ 色の派手な化粧品
漫画雑誌 週刊誌 ・・ カゴから あふれるほど 入れている。
─ ねぇ タバコも買おうよぉ
・・「それ」は手振りで そう言った。
「冗談じゃないわ。」
トモミは 声に出して言い
必要最低限のものだけ レジに持っていって精算を済ませた。
部屋に帰って 料理をし 一人の遅い夕食を食べる。
食器棚のガラスに映りこんだ「それ」は
テーブルに肘をついて、つまらなそうに皿をつつきながら こちらを見ていた。
「カップラーメンが良かったなぁ」
「作った方が栄養があるし、美味しいの。」
「そうかなぁ」
「そうよ。決まってる。」
「電話、来ないね。」
「忙しいのよ。」
「メールも来ないじゃん。」
「メールが苦手な人なのよ。」
「オンナと歩いてたの見た。」
「彼の会社の人よ。プライベートじゃないわ。」
「思ったより ブスだったねぇ。」
トモミは 黙って食器を洗い きちんと拭いて片付けた。
*
夜中、トモミは息苦しさに 目が覚めた。
毎日 嫌な夢ばかり 見る。
汗で まくらがじっとり濡れていた。
「夢・・?」
今までのは全部 夢だったんだ・・そんな風に思えてホっとしたのも 束の間、
目覚まし時計のガラスに「それ」が いた。
「どうしたいのよ?いったい 何が 言いたいの?」
この嫌な感じはどこからくるのだろう・・トモミはイライラを 「それ」にぶつける。
「それは アンタが一番良く知ってるはずじゃない?」
「あなたは 私なんかじゃないわ。私じゃないわ!」
トモミが 震えながら訴えても
「それ」はわざとらしく耳をふさぎ、聞こえないふりをして ニヤニヤ笑っている。
親に見せてもらえなかったTVのお笑い番組で 流行っていた動作に それはよく似ていた。
「そうだ、テレビつけようよ。」
考えたことを見透かしたように 「それ」が言う。
「こんな時間 何もやってないわ。」
「深夜番組 見たかったくせに。 あーんな映画? こーんなバラエティ?」
クネクネと品のない手の動かし方をしながら 「それ」は言った。
「見たくなんかない!!」
「ふふん・・ママが選んだ番組しか見られないんだ」
流行のギャグを言いながら 笑いさざめくクラスメイト・・
知ってる振りして 一緒に笑ってる自分の姿が ちらりとトモミの頭を過ぎった。
─ どんなに周りが低俗でも お前さえきちんとしていればいいのだ。
普通の公立の学校にトモミをやりながら 両親はいつも そんな風に言った。
けして口に出して歌ったことのない 汚い言葉ばかり出てくる替え歌を
「それ」は ひどく気持ちよさそうに トモミの傍で歌い出だす。
小学生の男の子たちは この手の歌を よく歌ってた。
「やめてよ そんな歌!! 近所に聞こえるわ。」
「お願い もう 消えて!」
うなるようにトモミは言うと、目覚まし時計を 布団に押し付けて ガラス面を隠す。
─ お願い、お願いだから もう どこかへ行って。
消えろ、消えろ 消えろ!消えろ!!
*
「それ」は昼間も現れる。
気配を感じて トモミがベランダ側の窓ガラスに目をやると 今度はそこに「それ」は いた。
トモミが無視し続けると、「それ」はひょいっと バルコニーの手すりに立ち、
平均台を歩くように その上を スタスタと器用に歩き出した。
「こんなことだって ほんとは ずうっと したかったくせに。」
「危ないわ。落ちたら怪我するし 大騒ぎになって近所迷惑よ。」
「ふふ〜ん、怖いんだ。失敗して 無様に落っこちていくのが恥ずかしい・・?」
「怖くなんかない!恥ずかしくもない!」
「あ、そうかぁ、パパとママに怒られるのが嫌だっただけなんだ。」
「最初っから そんな つまらないこと したいとも 思ってない!!」
トモミが 強く叫ぶ。
ベランダの手すりの上、「それ」の目が キラリ 光った。
*
疲れているんだ・・。
メールしてみよう、「いつ 会える?」
でも 今 いつがいい?って逆に聞かれても 私だって忙しいし・・・
メールを打ちかけた手を止めて トモミは携帯をサイドテーブルに置いた。
留守電のメッセージは 相変わらず 母だった。
毎日 帰宅時間を確かめるかのように かかってきて
「きちんと」暮らしているか、こまめに連絡するように言ってくる。
ふぅ・・とため息ついて クッションに半分顔をうずめた時
携帯の画面に 「それ」は また 現れた。
「今 アイツはきっと あのオンナといるね。
いきなり 押しかけて 現場押さえちゃおうか?」
ニヤニヤ笑いながら 「それ」は続ける。
「あれは、本気っぽかったなぁ。
思ってたような”フェロモン女”じゃなかったね。
アイツがあのオンナに誘惑された って感じでもなかったよなぁ。
普通っぽい 平凡な女・・・何でまた あんなのにホレたんだか。」
「やめてよ、彼を信じてるわ。」
トモミは 俯いたまま答える。声に力が入らない。
「だって アンタ、ちゃぁんと見に行ったじゃん。あんなの偶然じゃないでしょ。
あんなつまんなそうなオンナに負けるの 悔しいね?」
「勝手に決めないで!勝つとか 負けるとかなんて これっぽちも思ってないわ。」
自分に言い聞かせるかのように言葉を返すと
「それ」は ニヤニヤ笑うのをやめ、じっと 刺すような目で トモミを見つめた。
*
「ばかやろー クソヤロー xxxxxxx。」
気の早いクリスマスの飾りつけをした街で 華やかなショーウィンドゥに映った「それ」は ぼそりと言った。
忙しくて会えないはずの彼が 道路の向こう側の喫茶店であの女と会っていた。
「何よ、それ?」
立ち尽くしたままの トモミが聞く。
「一度 叫んでみたかったくせに。」
「そんな 汚い言葉言いたくないわ。」
「愛してるのよ〜?捨てないで〜?」
「やだ! そんなの絶対言わない!! 言わないからっ!!!」
「お前なんか だいっきらいだ。くたばっちまえー」
「・・・・・・。」
「裏切り者!ウソツキ!!浮気者!!一発殴らせろ〜!!」
おかしくなって トモミは ふき出した。
少しだけ 笑えた。
その後 急に涙がこぼれた。
トモミ自身にだって 悔しいのか 哀しいのか もう解からない。
小さい子どものときでさえもしなかったのに ぼろぼろ泣けてきた。
人ごみの中 わあわあ言いながら トモミは泣いた。
地団太踏んで 路上で泣いた。
きらきら光る電飾が涙でぼやけて 十字形の光の集まりに見えた。
*
ベランダの窓を全開にすると 外の空気が部屋に流れ込んで来る。
昼間 あれだけ泣いたせいか トモミの心は穏やかだった。
バルコニーの手すりが 月明かりで つややかに光っている。
窓ガラスに映っていた「それ」と トモミは 一緒に 黙って月を眺めていた。
「木登りだって してみたかったんだ。」
「それ」は バルコニーの手すりに上ると、傍の木の枝に手を伸ばし
軽々と木に移り、するすると登っていった。
木の葉に隠れて見えなくなったかと思った瞬間、
高い枝から 「それ」はふわり 飛び降りた。
突然のことに トモミはあわてて ベランダに出て 乗り出して下を探したが
「それ」はもう どこにも 見えなかった。
飛び降りる瞬間 振り向いてトモミを見た その顔は いつになく優しかった。
*
バルコニーの手すりにもたれて ずっと置きっぱなしだった貰い物のお酒を トモミは空けた。
どれくらいの間 そこにいたのだろう。
「それ」の最後の顔ばかり 思い出していた。
─ ここから 今 何か叫んでみようか、夜の闇に向かって。静寂を破って。
「バカヤロウ」
トモミは 小さく声に出してみる。
バルコニーの手すりに手をやると キンと冷たい。
下を見下ろすと 底の無い暗い穴のようだった。
─ 落ちたら 死ねる?
暗い穴に落ち込みそうな気がして 急に 頭がくらくらした。 トモミは目をぎゅっと つぶる。
─ ばっかじゃない?死ぬぅ?死ぬ気なんか全然無いくせに。
「それ」が 芝居がかったおどけた仕草をつけて 返事する気がした。
「それ」と 話がしたかった。
「それ」に答えてみたかった。
バルコニーの手すりに両手をかけ、トモミは ぐんと 伸び上がる。
─ 「平均台」、できたら 木を伝って降りて 私は「それ」を捕まえに行こう。
コンビニで何か買って来て 次は木登りして 木のてっぺんで お月見しよう。
お月様に映った「それ」と 乾杯しよう。
木の葉をカサコソさ揺らし 下ろした長いトモミの髪の間を 静かに風が吹き抜ける。
下の闇は底がないかように深い。
バルコニーの手すりに手をかける。かけた手に 身体の重みを乗せてみる。
トモミの目はぎゅっと閉じたままで、背伸びした爪先は ぶるぶるっと震えた。
●《自己批評》
『ちょっとクロくなりそうなお題で 新境地!!を狙ったのですが結局いつもは書かない言葉を少し、書いた程度でしょうか(^_^;)
「私」で語るとどうも書き上がりがもうひとつだったので お題のところ両方 少し変えています。
「ぶるぶると」と「ぶるぶるっと」の違いは そのへんも また コダワリです。
どーでもいいですよー♪・・かなぁ?(ちなみに お笑い番組はよく見てます)』
> > > > > > > > > > > > > > >
◎私の目はぎゅっと閉じたままで、背伸びした爪先はぶるぶる震えた。
著者:真紅
結局パソコンの復帰ならず・・・。
命名、「紅みそ(美味そう!)」
> > > > > > > > > > > > > > >
☆それは侮辱として受けとっておく。
『流』
著者:李 九龍
「それは侮辱として受けとっておく!」
テレビのモニターの中では、最近ではあまり見掛けなくなった落ち目の俳優が、そんな陳腐な台詞を叫んでいた。 恐らくは、今夜辺りに放映されるであろう、三文ドラマな二時間番組のミステリーかなんかのダイジェスト。 だがどう見ても、盛り上がるべきシーンを切り貼りしているにも関わらず、興味を持てそうな内容には感じれらなかった。
僕はつい、番組を切り替えるか、こんなテレビなんかやめて、録画の溜まっているビデオ鑑賞にしようかとも思った。 だがそれもやめた。 根気良く待った甲斐があったらしく、その後何本かのコマーシャルを経て、目当てのその番組は始まった。
その番組は、リアルタイムで観るからこその醍醐味があるのだ・・・と言う、謎の前振りがあるのだ。 しかもその番組の中継場所は、すぐこの近所。 こんな過疎の山奥の田舎を生中継する事に、どんな意味や意義があるのかは知らないが、姉が数日前から大騒ぎしているぐらいだ。 観慣れた近所とは言え、モニター越しの風景が映るのだ。 確かに、観る価値はあるかも知れない。
番組は、ここから数キロ程離れた小高い丘から始まった。 まずはこの過疎の町の全貌を、高台から紹介しようと思ったのだろう。 カメラは軽くターンして、山の中の平野部に孤立しているこの町を撮り終えると、そのままカメラは、同じ様に高台から町を見下ろす一人の男を映して、そこで止まった。
男はカメラの方に向き直り、観慣れた作り笑顔で、気さくに語り出す。 男は左手で町の方を指すと、「これが私の、生まれ育った町です」と、紹介した。
やはり僕にとっては、彼の笑顔には好印象を持てなかった。 多分それは全て僕自身だけの問題であって、決して彼に非があっての事では無いだろう。 それはきっと、僕が持つ劣等感から来る、単純なる嫉妬。 判ってはいるのだが、なかなかそれを、素直に受け止める事は出来ないであろうと思った。
望月一茶。 ペンネームではあるが、それが僕の幼馴染であり、嫉妬の対象であり、今現在、そのモニターの向こうで、生中継の司会進行をしている男である。
こんな過疎の田舎の中継。 しかもゴールデンでは無い、午後をちょっと回った頃の時刻。 しかも、平日。 こんなに半端で、有意義には程遠い番組なのだが、恐らくは結構な視聴率を取っているのであろう。 なにしろ、今現在の時の人と言われるべき程の彼なのだ。 しかも、謎の前振りまで相俟って、こんな時間の番組にしては、驚くべき数字が出ていてもおかしくは無いと思った。
彼は、数年前に書いた一本の推理小説にて、一躍有名になった。 本はマスコミの効果も手伝って瞬く間にベストセラーとなり、以降の本も全て話題となり、それがきっかけで出たテレビ番組でも、そのルックスやら、静かな物腰、カリスマ性、そして、高い教養やら知性やらが裏付けされているであろう、その澱み無く、かつ豊富なる話題に包まれた会話術が受けに受け、大衆は、彼をスターとする事に対しては、何も異存は無いぞ・・・と言う具合な感じで、彼は今の地位を確保していた。
彼は僕とは同い年。 小、中学校まで一緒のクラス。 過疎であるからこその一学年一クラス制の為、ずっと一緒に育って来た。
小さい頃には、いつも一緒に遊ぶぐらいの仲だったものが、いつのまにか僕達の間には、大きな隔たりが出来ていた。 成績の差や、同級生から貰う信頼やら支持。 彼は小さな頃から、何にでも非凡な才能を発揮していたのだ。 いつのまにか、そして当たり前に、僕達は掛け離れた。
彼はモニターの中で、今僕が住んでいる辺りの近所を、懐かしそうに紹介する。 緑豊かと言えば聞こえはいいが、緑しかない田舎でしか無いのだ。
彼は屈託無く笑う。 又、僕の心のどこかで、嫉妬の炎が揺れ始める。
僕はあまりにも、彼とは対照的だった。 僕は、人と話すのが苦手だ。 親父は僕に、「お前はジヘイショウなんだ」と、教えてくれた。 更に付け加えると、ソウウツが激しいのだそうだ。 僕は未だそれは良く判らないのだが。
だが、彼と僕があまりにも対照的である事だけは判る。 彼が高校進学の直前、サッカーの試合で個人的な好成績を収め大人気だった頃に、僕は独り隠れ家で、いつものラッカー系のうすめ液を吸い、トリップすると言う遊びで、孤独を紛らわせていた。
そう言えば、僕が初めて自殺を試みたのも、その頃だったと思う。 今ではもう何度も未遂の前科があるのだが、初めて自分の存在を否定しに掛かったのも、その頃だったのだろう。
その理由は判っている。 僕は、人を殺してしまったのだから。
皮肉にも、モニターの中のテレビカメラは、偶然にもその殺人現場の舞台であった場所を映していた。
カメラの前には、彼、望月一茶が立ち、その横には、見た目は取り立てて美人でも無いが、良く笑う若い女性アナウンサーがアシストしていた。
カメラは、丸太を組み合わせた、丈夫そうな木造の橋を映した。 一茶とアシストの女性は、その上に立っている。 映像は、川の流れも捉えていた。 昨日まで、連日の雨模様だった為に、川の水量は高い。 茶色い濁った水が、ごうごうと流れている。
アシストの女性は、しきりにその丸太の橋を褒め称えていた。 一茶もそれを受け、にこやかに頷いていたのだが、彼は突然に表情を変え、彼は神妙な面持ちで話し始めた。
「実は昔、この川の下流で、幼い女の子が溺れ死ぬと言う、痛ましい事件があったのです」
ドキリとした。 まさかとは思った。 だが彼が、その亡くなった女の子の名前を挙げた瞬間に、それがすぐに、僕の殺した女の子である事を確信した。
彼は続ける。 「女の子には、御両親がいませんでした。 お爺ちゃんと、その子。 二人暮しだったのです」
確かにそうだった。 だからこそ、彼女は幼い内からこの辺を散策し、糧の食材にするであろう山菜などを摘んでいた。 その丸太造りの橋も、その散策コースの一つだった。 僕は隠れ家から、良くその子が、ここを通るのを見ていたからだ。
「女の子は、この橋からずっと下流にある岩場で、見付けられました。 恐らく、山菜等を探している最中に、この川へと転落。 不幸にも、連日降り続いた雨の為、今のこの川の水量のように、相当な水の流れの中に落ちたのでしょう。 この流れでは、きっと大人であっても、岸に辿り付く事は不可能のように思われます」
・・・記憶が戻る。 そうだった。 僕は彼女に悪戯をしていた。 幼い彼女の身体に抱き付き、彼女はそれを振り払おうとして、その橋の上から転落したのだ。
荒い映像のような、不鮮明な記憶の中で、僕の笑顔が凍り付くのが見えた。 僕は困った顔をしながら、彼女が落ちた川を覗き込み、自分の坊主頭を、しきりと撫でていた。
「・・・ですが、私はそれが、単純なる転落事故だったとは思っていません」 彼の声が、僕を現実に引き戻す。
「私はこの事故は、実は事件だったと考えます。 何かしらの事件に彼女は巻き込まれ、故意では無いにせよ、この川に落とされた。 私はそう考えているのです」
隣にいたアシストの女性は頷いて、その言葉を受け止めながら、話を引き継ぐ。
「実は今日この番組の企画として、彼、望月一茶先生をお招きしたのは、本人たっての希望なのです。
先生は今日この番組を通じて、先生のこの生まれ故郷で起こった痛ましい事件を、推理作家の見地から、プロファイリングしてみよう・・・と言う事で、この中継を立ち上げました。 そうですよね、望月先生」
「はい。 そうです。 こんな私の我侭に付き合って下さった方々には、本当に感謝しております。
実はこの事件・・・いえ、まだ事件自体が憶測の域なのですが、もしこれが事件だとすると、もうすぐ時効が発生してしまうのですよ。
私は、そんな不公平な事は許せません。 私自身、その子の事は良く知っていました。 御両親がいなくとも、立派に健気に頑張って生きていました・・・」
彼は淡々と、その事件に対して、その犯人の非道さを語り始める。
僕はもう、気が気では無かった。 何故に、今なのだろう。 もう誰も見向きもしないそんな昔の事を、どうして今頃になって、掘り返さなければならないのだろう。
僕の鼓動は、疾風のように早く鳴り始める。 再び記憶の世界へと飛ぶ。 彼女を追う僕の姿は、坊主頭の学生服だ。
僕はすぐに彼女へと追い付く。 僕は一匹の野生の獣のようだ。 僕は彼女に後ろから抱き付くと、僕の手は、まだ幼い彼女の胸元へと伸びる。 彼女の持っていた山菜を摘んだザルが、橋のたもとへと転がる。
「私はこの犯人の人間像を、幼女愛好癖のある人間と見ました」
再び僕は現実へ。 モニター画面では、彼がその犯人像を語り始めた所だった。
「犯人は、当時は思春期ではなかったかと思っています。 そう、学生。 彼はその生まれて初めて持ってしまったその性欲と言う欲求に逆らえず、思わずこの人気の無い道を毎日のように通る女の子を、ターゲットとして捉えてしまった。
もしかすると、そんな欲求を現実の物としてしまう所で、この犯人像は、精神的にどこか病的な部分がある人間なのかも知れません。 まぁ、幼女趣味と言う時点で、その性癖の歪みは判るわけなのですが・・・」
彼は続ける。 「そう言えば十数年前に埼玉県の某所で、幼女ばかりを狙った連続殺人と言う事件がありましたよね。 もしかしたら犯人は、その事件の犯人に、実に良く似ている性質を持っているかも知れませんね」
顔が熱くなる。 僕は興奮していた。 怒りの感情なのだろうか。
それはまるで犯人がこの僕である事を知っていて、その僕自身を見たまんまに台本を読み上げているかのような錯覚さえ持ってしまった。
だが間違ってはいない。 まさにその犯人像の部屋に、僕はいる。
ロリータ系の雑誌や漫画。 そしてビデオ等が、山程ある。 今ここに普通の性癖の人間が踏み込んだら、それだけでその異常さが露呈するだろう。
「私はその犯人は、ここの地元民の誰かだと考えています。 他所から来た人間ではありません。
何故ならば、この丸太造りの橋のあるこんな山へと続く道など、地元民でなければ知らない事だからです。
そして犯人は、まだこの地元へと住んでいると思っています。 犯人は、自分の欲望の為に少女を殺し、そしてたった一人の彼女の家族まで、哀しみのあまり死なせてしまったのです。
そう。 犯人は、そんな自分の我侭の為に、二人も人を殺してしまったのですよ!」
隣にいるアシストの女の子は、芝居掛かったように、目尻を押さえる。
「許せませんね。 先生の怒りは、ご尤もだと思います」
僕はいつもの癖で、胸元から下がるペンダントを、右手で触り始めた。 これは僕が、精神的に不安定な時に、必ずする癖だった。 元はと言えば、それは昔お母さんが亡くなった時に、親父から貰ったペンダントが僕のお守りとなった事に由来する。
・・・僕の大事なお守り。 今は違う、似たようなペンダントをぶら下げてはいるが、僕はあのお守りのペンダントを、一体どこで無くしてしまったのかを考えると、今だに悔しく思う。
「私は今日、この番組を生中継でお送りしたいと思ったのは、私がその犯人に徹底して迫る事を、皆さんに見て欲しかったからなのです。
例え犯人が見付からなくても、私はそれだけ真剣だった事を、見ていて欲しいのです。 それだけ犯人を憎んでいる事を、理解して欲しいのです」
彼は、いつものクールな彼の口調では無かった。 語気を荒げ、本気でその事件に絡みに行っている事が、見て取れた。
「今、この放送を観てくれている地元民の皆さん。 私が言う犯人像に近い隣人はいませんか?
今、もしかしたらこの放送を見ているかも知れない、私の知らない犯人へ。
時効はもうすぐです。 ですが、罪を償わずに、自分だけなんのリスクも背負わない事に、なんの抵抗も感じませんか?
出て来て下さい。 過去の罪を、今終わらせましょう」
・・・そうだ。 僕は彼女を、橋の下で見ていた。 橋の下に、僕の隠れ家があった。
雨が降り川の水かさが増せば、そこまで川の水が進入しそうな所に、隠れ家があった。
それは、土手の下に掘られた、小さな洞穴。 入り口は、上手い具合に茂った木がそれを隠してくれている。 僕はいつもそこで、安いシンナーを吸っていた。 そう言えば、その時も吸っていた。 ほとんどの記憶が飛んでしまっているぐらいに、酔っていた。
僕は、酔ったまま彼女へ駆け寄る。 幼い彼女は、すぐに追い付かれる。
彼女は抵抗した。 小さいのに、凄い力で抵抗した。
彼女が、僕の手を払うのが見える。 ・・・あぁ、もしかしたら、僕のペンダントはその時に無くしたのかも知れない。 そんな気がした。
「・・・当時も、今のように地面はぬかるんでいたと思います」
彼は、今度は、彼の推理を語り始めた。
「もしかしたら、当時のその犯人の持ち物等が、このぬかるみの中に落ちているかも知れません」
地面見ながら話す彼に、アシストの女性が言葉を継ぐ。
「じゃあ望月先生は、今、私達が立っているこの場所こそが、その犯行現場だと考えているのですか?」
「はい。 正にその通りです。 私はこの橋こそが、彼女が犯人に、川へと落とされた場所だと思っています」
僕は、弾かれたように行動をおこした。
ポケットサイズのラジオを引き出しから取り出すと、電源を入れる。 大丈夫だ。 電池はまだ死んでいない。
チャンネルを、このテレビに合わせる。 これも大丈夫。 画面の彼と、同じ言葉が聞こえて来る。
僕はイヤホンを片方の耳に刺すと、凄い勢いで家を飛び出した。
「行ってどうする!?」 そんな疑問も無かった訳でも無い。 だが、恐らく間違い無い。 彼は僕を指して、犯人像を語っているのだ。
ずっと聞いていたが、彼のプロファイリングは滅茶苦茶だ。 理屈でも何でも無い。 要するに、僕を指して、それに肉付けの推理をしているだけなのだ。
家を飛び出してすぐに、イヤホン越しに、彼の言葉が聞こえて来る。
「そう言えば、この橋のたもとに、当時の子供が隠れ家を造っていた事があるんですよ。 ホラ、見えますか? 今はもうこの水量でほとんど埋まっていますが、あの茂みの奥がその隠れ家です。 もしかしたら当時もそこに、その少年がいたかも知れません。 その事件の一部始終を見ていたかも知れません。 ハハ・・・尤も、確か私と同じ学年の子供でしたから、もう子供とは言えませんがね」
僕は、熱くなりながらも血の気が退くのを感じた。 もう、彼が僕の所業を知っているのは、間違い無かった。
再び記憶が飛んだ。 彼女が落ちて、僕は困った顔で、坊主頭を撫でていた。
声を掛けられた。 僕はこっちを向く。
声を掛けたのは、誰だっけ・・・。 まぁ、考え無くても、それが誰なのかは判るのだが。
何でこうも僕は、記憶力が欠如しているのだろうか。 尤もそれは、親父が、「センテンセイの病気のせいだ」と教えてくれてたのだが。
「カズちゃん・・・」 僕は何時の間にか、昔の友人の名前を呼んでいた。
カズちゃんこそは、僕のたった一人の友人。 僕がこんなにも記憶力の障害があるのに、良く僕に付き合ってくれていた。 僕がいくら大事な事を忘れてしまっても、彼はいつも僕をフォローしてくれた。 僕は本気でカズちゃんが好きだったし、僕の信頼の全ては、カズちゃんにあったと言っても、過言では無かった。
「そうですねぇ・・・。 今の年齢で言えば、三十代前半・・・ぐらいですか。 もし本格的な幼女趣味だったとしたら、今以て独身なのかも知れません」
ラジオからは、彼が語る、相変わらず僕をなぞるようなプロファイリングが続いている。
僕は走る。 わき目も振らずに走る。 どうする。 どうやって僕は、彼の語る無理だらけの中継を止める事が出来るか。
彼は今度は、どう言う状況で橋から転落したのかを、自分自身で再現しているらしかった。 途中でアシストの女性の、「危ないですよ」と言う声が入る。
そうだ。 揺れたんだ。 二人で橋の上で暴れたから、橋は大きく揺れて、彼女だけが落ちたんだ。
そう言えば、橋は凄く老朽化していた。 僕自身、その橋を渡るのは結構勇気が要ったではないか。
・・・・・揺れた? 大きな丸太が組み合わさった橋が、どうして揺れた?
しかもあの丸太造りの橋は、そんなに古くない。 老朽化などしていない。
僕は突然、大きな疑問に気が付いた。 木造の橋が、子供二人で暴れただけで、落ちる程に揺れるものなのだろうか。
しかも、更に大きな矛盾に気が付いた。 さっき彼はテレビの中から何と言った? 橋の上から見える例の隠れ家は、この川の水量でほとんど埋まっていると言わなかっただろうか。
そんな訳は無い。 僕がそんな危険場所に、隠れ家は造って無い。 相当な水量でも、その隠れ家の手前までしか、水は入って来なかったではないか。
彼は、思い違いをしている。 それはそうだろう。 僕にとってはリアルタイムの地元だが、彼にとっては、記憶の中の生まれ故郷でしかない筈だ。
「橋が違う!」
僕はすぐに、進む道を変えた。 彼、望月一茶がいるであろう橋には向かわず、一本下流に位置する橋に続く、今では誰も通らない道に分け入る。
記憶が戻る。 しばらくも忘れていた、僕の秘密の場所。
両側に、樹々が鬱蒼と茂る森林の道に入り込む。 陽が当たらないせいもあり、舗装のされてない道は、未だに水溜りまでが残っている。
程なくその橋が見えて来た。 その手前に、立ち入り禁止と書かれた大きな立て札と柵が拵えてあったが、僕は無理してその柵を乗り越える。 降り立った地面は、ぬかるんで歩き難い。 雑草も、嫌と言う程生い茂っている。
僕は、靴やズボンが汚れるのも構わず、橋に向かう。 かろうじて向こう岸に繋がっているような有り様の、太いロープで渡されている吊り橋だった。
全てが懐かしかった。 僕が親父に自分の部屋を与えてもらえるまでは、ここが僕の逃避の場だった。
相変わらずここは暗い。 所々に、樹々の間から漏れる光が、点となって湿った地面を照らす。
僕は何気なく足元に目をやる。 ・・・血の気が退いた。 橋のたもとに、腐って黒ずんだ竹のザルが落ちていたからだ。 間違いが無ければ、それはあの少女の持っていた、山菜用のザルだろう。
どうしてこんな場所に? もしかして、あの時間から今までずっとここにあったのだろうか?
そんな馬鹿な。 それじゃあまるで・・・。
「あの時間からずっと、僕を待っていたみたいじゃないか」
「・・・人が見えますね」
「そうですね。 何かを探しているみたいですね」
ラジオからイヤホンを通じて、二人の声が流れて来る。
僕は何気無く、上流を見た。 そこで僕と彼は対峙した。 それは、十数年振りの再会だった。
僕がこの場所を隠れ家としていた頃には無かった風景が、そこにはあった。 上流に新しく出来た木造の橋。 そこに彼等はいた。
何度もあの橋は通ったのだが、こちらから向こうの橋を見るのは初めてだ。
カメラは間違い無く僕を捉えていた。 イヤホンから流れて来る言葉は、もはや無かった。
僕は、胸元のペンダントをまさぐる。 だが、少しも落ち付かない。 所詮、僕が大事にしていたお守りの、代用品でしか無いのだから。
僕は全てを悟った。 これは、彼が仕組んだ罠だった。 僕がここに来る事は全て計算ずくでの、彼の罠だった。
確かに彼の言う通りだろう。 罪は償わなければならないものなのだ。 自分だけ逃げる訳には行かない事実なのだ。
彼が言うように、もしかしたらもうすぐ時効だったのかも知れない。 だがそれはきっと、僕が自首する為に与えてくれていた、彼なりの執行猶予なのかも知れなかった。
心は決まった。 もう僕は逃げられない。
再び、記憶が過去へ飛ぶ。
声を掛けられて、僕はこちらに振り向く。 僕は振り向く。 僕は振り向く。 僕は振り向く・・・。
どうして僕は、僕に振り向くのだ?
記憶が違っている。 彼女に抱き付き、それを振り払ったのを見たのは、僕自身だ。 振り払われたのは、僕じゃ無い。
そうさ。 僕は安いシンナーで酔っていた。 どうして走って逃げる少女に、追い付けたのだ?
そうだ。 僕は常に、第三者からその場面を見ていたじゃないか。
記憶が鮮明になる。 当時は学生全員が学生服で坊主頭だった。 それは、僕一人では無い。
声を掛けて、僕が振り向く。 ・・・違う。 声を掛けたのは僕であって、振り向いたのは、坊主頭の誰かなんだ。
僕は記憶に障害があった。 どんな記憶にも穴が開いた。
振り向いた彼は、酔った僕にこう言った。 「黙っててやるから、早く逃げろ」
そうだよ。 僕が、「カズちゃん!」と声を掛け、彼、望月和夫は振り向いたんだ。
彼は僕が声を掛けるまで、いつもの癖で、困りながら自分の頭を撫でていたじゃないか。
・・・そして僕は頷いた。 カズちゃんの言う通り、ここから逃げなくちゃいけないんだ。
そうさ。 カズちゃんの言う通りにしていれば、何も心配無いんだ。
凄いカズちゃん。 頭のいいカズちゃん。 カズちゃんが女の子に悪戯して、誤って川に落としてしまうなんて、有り得る筈が無い。 そうだ、これは僕がやったんだ。 僕が酔ってしまっての出来心で、こんな事になってしまったんだ。 それが証拠に、カズちゃんは僕に逃げろと言っているではないか。
そして今、ズちゃんは、望月一茶と名前を変え、上流の橋の上で、僕を見ている。 どうして今の彼は、黙っててくれないんだろう。
もう僕の事は、庇うにも値しないのかな・・・。
足元のぬかるみに、何か鈍く光るものがあった。
ドキリとした。 まさかと思った。
僕はそれを拾い上げた。 それは長いチェーンの付いたペンダント。 蓋の開く、ロケットのペンダントだった。
僕はそれを開いた。 止まっていた時間が流れる気がした。
それは僕が無くしたお守り。 亡くなったお母さんの写真が入った、僕のお守り。
最後に母の顔が見れた。 ずっと探してた宝物が戻って来た。
・・・満足だと思った。
「あっ! 先生! 飛び込みましたよ! 今、向こうの橋の人が飛び込みましたよ!」
「そうですねぇ。 ・・・あ、カメラさん、撮るのやめて」
望月一茶は、カメラに左手を差し出しながら、しばらくその川の流れを眺めていた。 そう、まるで、その沈んだ物体が流れに逆らうように、再び姿を現し始めるのを恐れるかのように。
一つ、溜息を付く。 遮るように伸ばされた腕を、橋の手摺りに置くと、隣のアシストの女性が、流れる川を覗き込んでいるのをいい事に、一人カメラに背を向け、震える指で煙草を取り出しながら、ゆっくりと微笑んだ。
「・・・・・勝った」
現場は、駆け付けた警察官やら、他局のテレビレポーターやらで、ごった返していた。
一人の野次馬が、望月一茶に向かって声を掛ける。 やはりアンタは素晴らしい・・・と。
再びカメラは回る。 興奮したままのアシスタントレポーターの女性は、顔を上気させながら、望月に話し掛ける。 彼女の声は興奮のせいなのか、相当に高いボリュームで、生の事件解決場面の様子を繰り返す。
「先生・・・。 やはりこれは、犯行現場に犯人が戻って来ると言う理屈なのでしょうか?」
「いやいや・・・」 望月は、困ったように、オールバックの頭を撫でる。
悲しそうに。 ・・・そしてその瞳の奥には、喜びを潜めて、望月一茶はマイクを手に取り語った。
「いや、それこそが心理でしょう」
●《自己批評》
『長くて申し訳無い。
本当は、「例のリレー小説」の続編で行きたかったのだが、ちょっとした事で脱線した。
当初は、例の主人公、「竹永冬馬」が、昔に幼馴染だった某推理小説家と、テレビを通じての推理合戦をすると言う話を書きたかった。
だが途中、どうしてももっと暗い話を書きたいと思ってしまった。
そしてこの話になった。
締め切り三日前まで、何も思い浮かばなかった。 今回はみそかと思った。
アイディアが無い時の長風呂っては、案外効き目あるみたいだぞ。』
> > > > > > > > > > > > > > >
☆いやそれこそが真理なのだ。
『ハジマリ』
著者:一茶
いやそれこそが真理なのだ。
月の光に輝くナイフ。銀色に笑う、冷たい刃。反射する刃に男の顔。
彼はナイフを見ていた。そこには好奇心だけがある。
「これで、今夜…」
彼は言葉を吐き出す。
「今夜、あいつを…」
「ご飯できたよ」明るい声が響いた。
部屋の扉をノックする音。
「ああ、わかった」
彼はナイフを机にしまうと、部屋から出ていった。
パタン…
善があり悪があるのではない。善があるから悪を見抜けるのだ。
パタン
彼が部屋に戻ってきた。すぐさま椅子に座り、引き出しを開ける。
無表情なナイフが現れた。手に取り、再び月明かりにかざした。
静かな、静かな、空気が漂う。
ふいに、月明かりが消えた。同時に開かれる扉。
キィ…。
彼は驚き、咄嗟に隠す。
そこには何もいなかった。
胸を撫で下ろして、扉を閉め直した。
また、月明かりが出ている。同じようにナイフをかざす。
少しして、彼は時計を確認した。
「そろそろ、だな…」
誰に聞かせるでもなく彼は呟いた。
ナイフを皮製の入れ物にしまうと、彼はそれを手に取り出ていった。
パタン…
それであるが故に悪は避けられるのであろう。しかし
バタン
いきおいよく、扉を閉める音。
肩で息をする彼。暗闇の中、彼は興奮していた。
ゆっくりと、月明かりの差し込んでいる椅子に座る。
彼は紅かった。
「とうとう、やった」
暗闇に向けて呟く。
「やったんだ、この手で」
そう言って彼は眼前に手を持ってきた。
紅い液体が床に落ちた。
これが、始まりだった。
悪と呼ばれるその奔流は安穏では得られない漆黒の快楽にすりかわる…
━・━・━・━・━・━・━・
おまけで短いのも送っておきます。
まぁ、上下の繋がりだけで書いたものなんで内容は零ですが…。
てか、何も入れなくてもこの二つの文って繋がらないかな?(汗
━・━・━・━・━・━・━・
「いやそれこそが真理なのだ」
卓上の電球が男の輪郭を映し出す。
「そして、悪と呼ばれるその奔流は安穏では得られない漆黒の快楽にすりかわる…」
●《自己批評》
『妙に体言止めが多いのは自分でもよく分からないです。
極力、会話を減らしました。
そしたら、こんなに短くなりました。
もっと長いのを書けるようにしなくては…。
作風を壊そうとしたらこうなりました。
たぶん、失敗例でしょう』
> > > > > > > > > > > > > > >
☆悪と呼ばれるその奔流は安穏では得られない漆黒の快楽にすりかわる…
『それは…好き?』
著者:甘蔗
悪と呼ばれるその奔流は安穏では得られない漆黒の快楽にすりかわる…。気づいたときには戻れなくなっていた。やめられい、やめることなんて出来ようか、自分はそれを知ってしまったのだから。
ヒイラギはおもむろに少し汚れた教室の窓を見遣り、今の自分の顔を確かめる。歪んだ笑顔を浮かべた男がこちらを見つめていた。男はバツの悪いようにして視線を逸らす。男の後ろには、目に沁みるような真っ青な空が窓一杯に広がっていた。
「ヒイラギっ!!」
聞きなれた声がヒイラギの名を呼び、耳を突く。窓に映ったのは、気まずそうな様子の先程の男と、その後ろに満面の笑みを湛えた少女、そいつは小学校からずっと腐れ縁と呼ばれるほどにヒイラギと一緒のクスノキ、空の青。
この夏濃い目の茶に染めた髪が、これまた色素の薄く茶掛かった大きな瞳に似合っていた。長く揺れる髪が、机に頬杖をついたヒイラギの腕に触れそうになり、しかし触れずに遠のきまた揺れて、少しだけ残念な気分になる。大変柔らかそうな髪だった。シャンプーの良いに匂いも漂って来ているのかもしれないが、生憎花粉症のヒイラギには、鼻があまり利かず確かめることは出来ない。
嬉々とした空気を放つクスノキは、窓から差し込む陽光のそれと酷似していた。
「ヒイラギ、明日誕生日でしょう?何か欲しいものとか、して欲しいこととか希望はある?」
再び自身へとアルトトーンがヒイラギの耳に届いてきた。声に聞き惚れていて会話の重要な論点を聞き逃すところだった。
明日は誕生日だとクスノキは今言ったのだ。しかもヒイラギの、自身の誕生日であると言う。ヒイラギは自身の誕生日などにすっかり忘れていた。その考えはそのまま口を突く。
「えっ、明日、僕の誕生日だっけか?」
期待される答えの斜め上を行ったヒイラギの返答に、クスノキの表情が見る間に曇っていく。誕生日を忘れていたことがそんなにも悪いことなのだろうか。
「はぁ…ヒイラギは…もういいよ。」
はぁとは何だとヒイラギは思ったが、此処でさらに重要な論点を、もっと価値のある言葉を見逃したことに気づいた。クスノキは『何か欲しいものとか、して欲しいこととか無いか』と聞いてきたのだ。
これこそ何だ、何て無防備な言葉をクスノキは晒したのだろう。限定をしない何でも有りだ。何を思ってそれを口にしたのか押し図れないが、ヒイラギはある意味チャンスというべき問いになんて平坦な受け答えをしてしまったのだろうか。おしいことをした。弄り甲斐のあるクスノキとの言葉遊びを見逃してしまったのだ。
「ヒイラギっ、さっきイケガワさんが探してたぞ。」
突如ヒイラギとクスノキの空間に割り言った声が響く。クラスメイトだ。ヒイラギは見逃さなかった、その名が出た途端、クスノキの表情がさらに変化を見せたのを。それは一瞬だけであったが、きっと本人は気付いていない、嫌悪だ。取り逃した獲物を惜しんでいたヒイラギはまた新たな獲物の出現を前に目を輝かせた。
「やっ、クスノキ、またヒイラギといるのかよ。ってかヒイラギ今日の昼図書委員だろうが、あんまイケガワさんを困らせるんじゃねーよ、あんな可愛い子が可哀想だぜ?」
「いちゃ悪いのっ!?」
また、刹那に嫌悪が映る。クラスメイトの言葉に対してではなく、『イケガワさん』の名がでたそのタイミングで見事に、だ。
『イケガワさん』はクスノキにとって良い人ではないのだ。クスノキの天敵だ。クスノキの大好きなヒイラギの傍にいる、もしかしたらクスノキからヒイラギを取り上げてしまうかも知れない、天敵。
そんな心配なんてすることは無いのにと、ヒイラギは思う。ヒイラギもクスノキのことが好きで、大好きで、クスノキ以外の女性を選ぶことなんて考えようも無いからだ。
長い間一緒にいたら、兄弟みたいで恋愛感情なんて浮かばないなんていうこともあるが、ヒイラギとクスノキの間に生まれたのはもどかしい限りの恋愛感情であった。クスノキは、まだそれに気づいていない。しかし感情は確かに存在していて、ほんの刹那刹那表層に、無防備な自分を晒すことや、嫉妬として浮かんでくるのだ。ヒイラギは。
ヒイラギは気づいている。この感情を自分のものとして受け入れ認めている。
しかしヒイラギは、そんな心配なんてすることは無いと思う一方、それはクスノキに気づかせなかった。
「うわぁ…イケガワさんに悪いことしちゃったなぁ…。オオシマ、さんきゅな。じゃ、クスノキ、僕、行ってくるわ。」
「早く行けよ〜。寧ろ昼休み終わっちまうぜ〜。」
「ちょ…ヒイラギの誕生日…どうすんのよ…っ!!」
帰りでも別に話せるし、もういいよとか言わなかったかと思いつつ、ヒイラギはその場から物惜しげにも立ち去る。それは決してクスノキには見せないけれど。
顔がニヤついた。ヒイラギは確信してしまう、抑えきれない感情は確かに存在するのだと。うわっ、凄いね、その感情、嫉妬、嫌悪。ヒイラギからイケガワの名が発せられた時のクスノキといったら。クスノキが気づいていなくても、クスノキの心は叫んでいるのだ、苦痛を訴えている。
ぶつけてしまえば伝わり合い実を結ぶであろうこの感情を、気づいていながらぶつけない。
たかが『イケガワ』という名が出るだけで、ヒイラギから他の女性の名が出るだけで、ヒイラギが他の女性といるだけで、また男友達と楽しそうに過ごすだけでも、クスノキの顔は苦痛に歪んだ。気づかぬ感情なのに、心は痛んでいく。
知ってて、ヒイラギは、進んでそれをした。
ヒイラギが傷つける程に、クスノキはその明るさに比例した影を落としてくれる。その陰影を酷く美しく感じたのだ。その陰影を少女につけることが出来るのは、ヒイラギ自身であり、ヒイラギ自身だけ。
ずっと気楽な幼馴染でいることも、感情を伝え合って恋人同士になり愛を囁きあうことも、望んでいたのに、望めなかった。本当にささやかな駆け引きに痛む、そんなクスノキを手放すことは最も惜しく感じられたからだ。
もっとクスノキが、ヒイラギのことだけで一杯になってしまえばいいのだ。気づかなくても積もって、そしてその気持ちについに気づいてしまった時、クスノキは?
...もっと苦しくなるんだろう。
―――知ってるよ、クスノキ。僕は知ってるんだ。
ああ、いやになるほどあんたのことがわかる。
●《自己批評》
『もう無茶苦茶...orz
ヒイラギさんがおかしな感情の持ち主なら持ち主でいいのですが、全部思い込みであったのなら...。
クスノキさんはとんだ災難ですねぇ...。(遠い目)
真相は...知りません。
....だったらいいな。』
> > > > > > > > > > > > > > >
☆ああ、いやになるほどあんたのことがわかる。
『元祖・うる星やつら』
著者:松永夏馬
『ああ、いやになるほどあんたのことがわかる』
そんなセリフを吐く男を工藤亜季は冷ややかな眼で見つめていた。パソコンのチャット画面にリアルタイムで表示され続ける男の言葉に、亜季は小さく舌打ちをしてから『ありがとう』とだけキーボードに叩きこんだ。
『病気のせいで周りから特別視されるのってイヤだよね。オレもそういう経験あるよ』
『うん……。自分はとてもつらいのに、みんな変な目で見てくるし』
『大変だよね。わかるよその気持ち』
『そう言ってもらえると、ちょっと気持ちもラクになるかな』
『そりゃ良かった。うん、応援してるよ。頑張って!』
(うるさいヤツだ)
亜季は小さくため息をついてキーボードから指を離した。
「この人も……同じ“だっちゃ”」
なにもわかっちゃいないのはあんたのほうだ。所詮自分の思惑など他人にはほんの毛程も理解されるわけがないんだ。ネットの世界だけでしか出会うことのない貴方に何がわかるというの?
そんな想いを抱えつつも、言い返さない自分が亜季は嫌いだった。ネットの中でもそうなのだ、自分の意思をはっきりと言えず、その場の雰囲気にムリヤリ馴染むことで友達を作る。
「こんなにつらいのに……きっと誰にもわかってもらえない“だっちゃ”」
社会人として就職まではしたものの、持病のせいで社会人生活はほぼ断念。一応休職扱いではあるが亜季はもはやりっぱなヒキコモリである。ネットの世界へとリアルの世界からの逃避を試みたものの、結局同じじゃないか。言いたいことは何も言えず、ただ頷くだけの仮面人形。形ばかりの友達、いや、むしろネットの中こそ形ばかりじゃないか。褒めあい、慰めあい、傷を舐め逢うだけの、いや、そんなふりをするだけの友達。
誰も他人の本当のつらさなんてわからない。ある種の精神障害に苛まれているとだけネット世界で公開している亜季の下へと届けられる応援の言葉。「大変だね」「頑張れ」という言葉は通り過ぎ様に吐かれる唾のようにしか亜季には感じられない。今までもそうだった。これからもそうだろう。自分より堕ちた人間に共通意識を持ったふうを装い近づいてくる「友達」など、所詮、自分より下を探しているだけなのだ。
誰も私のつらさなど理解できない。そして、そう毒づきながらもそんな相手にすら礼を述べる自分が嫌いだ。
「……なんでこんな病気になった“だっちゃ”……」
彼女の病名は、特殊心因性キャラクター言語障害。
診断された際初めて聞く病名に彼女は呆然とした。担当医師でさえ初めてのことだと驚いていたからだ。
詳しいことはまだわかっていない現代病のひとつで、刷り込みのように特定の、主にアニメ等のキャラクターのセリフを聞き入れた結果として現れる、言語障害だと言われている。
治療法は……未だ不明。
********************
尾出武史は再び『ありがとう』と打ち込まれたレスに、安堵の笑みを浮かべて何度も頷いた。
「……もしかしたら」
武士はつぶやく。
「もしかしたら、僕のつらさをわかってもらえるかもしれな“いーのだー”」
……偶然より運命ははるかに強い。
●《自己批評》
『えーと。誰かサンと誰かサン。勝手に名前借りました。
くだらなくてスンマセン。でも死体とか殺人犯とかテロ実行犯とかそんなんじゃないだけマシです(笑)
ネット世界で運命の出会いをしたこの二人、今後はどうなるんでしょうかね。ええ、そんなこと考えてませんよ。』
> > > > > > > > > > > > > > >
☆偶然より運命ははるかに強い。
『虫』
著者:ろくでなしブルース
『偶然より運命ははるかに強い。』その言葉の意味がよく分からなかった。
僕達の家は隣同士だった。
そんな事もあり。
小さい頃からよく遊んだ。
いわゆる幼馴染。
彼女を異性として意識したのはいつだっただろうか?
それはよく分からない。
それに気づかされた時、もうこの国は配色が濃厚だった。
周りの人達・・・いや、この国全体がやけになっていた。
中学の連中の心も荒んでいた。
彼女の父親は軍の高官という事もあり、度々軽いいじめにあった。
無力な僕は何もする事ができなかった。
できる事といえば、愚痴を聞く程度だった。
幸いな事に、いじめをするのは女子だけだったので服を汚されたり、ノートに落書を書かれる程度だった。
彼女が美人という事もあり、男子はいじめる気にはならなかったみたいだ。
珍しく朝早く学校に行く、教室のドアを開けると泣声が聞こえた。
あわてて泣声の聞こえる方に目をやる。
なんと女子が女子の上に馬乗りになっていた。
殴られているのはなんと彼女だった。
僕の中には殺意にも似た怒りがこみ上げた。
僕は上に乗っている女を蹴り飛ばした。
『大丈夫か?』
『・・・。』
彼女は傷を負ってはいなかったが、複雑な表情をしていた。
泣いていたのはむしろ、馬乗りになっていた娘の方だった。
その娘の父親が、遠く離れた戦地で死んだらしい。
その事について問い詰めたようである。
凄くばつが悪い。
そして嫌な予感がした。
悪い予感は的中した。
机は落書で埋め尽くされた。
トイレに行く度に、誰かしらに声をかけられ殴られた。
家には帰る頃には顔中、あざだらけになっていった。
帰り道を歩いていると、『ごめん。』と彼女の声が後ろから聞こえたと思うと、僕を追い越して走って去っていった。
僕はその日以来度々いじめを受けるようになった。
しばらくして、耐え切れなくなったので学校に行かない事を決めた。
母も特にはとがめない。
今まで冷静を保ってきたが、やけくその仲間入り。
外にはほとんど出ない、部屋に引きこもって本を読んでいた。
時々、外に出ると歌を歌いながらバッタを火であぶって遊んでいた。
もちろん、バッタは敵国の兵士でもなく、ましてや彼女ではなく、僕を苛めた連中。
そんな毎日を過ごす。
しばらくすると家にニワトリの首を置いていく暇なヤツが現れるようになった。
どうやら、夏休み始まったようだ。
愚行に苛立ちを感じた。
このままでは理性が崩壊するという、危機感がつのった。
僕は山の上の納屋にこもる事にした。
小さな納屋だけど、僕の自由な世界だ。
夏なので風通しも良いしちょうど良い。
3食の食事を運んできてくれる母には本当に感謝の気持ちで一杯だ。
何よりもココからは眺めは最高だ。
人がゴミ用に見える。
敵国の兵士もこんな気持ちで爆弾を落としてるんじゃないかと妄想する。
ある日、納屋に彼女が来た。
彼女は僕を見るなり、僕に抱きつく。
柔らかい感触と、彼女の匂いが僕を襲う。
『もう苛めに耐え切れない。一緒に逃げよう。』
『え?』
『9月15日(10日後)に遠くまで行く列車が通るの、午前十時に駅でまってるわ。』
そう言うなり彼女は走り去っていった。
なんだか気持ちがすっきりした。
僕は今更ながら彼女を恋をしていた事に気づいた。
しばらく、彼女の感触は残っていた。
返事を言わずに当時来てびっくりさせてやろうと考えた。
僕は家に帰って支度をした。
僕はわくわくしながら毎日を過ごした。
時々、返事を待ちくたびれて彼女が来るんじゃないかと思いながら。
そしてその当日彼女は結局来なかった。
僕は3時間ほど待ったが、来なかった。
待ちくたびれたので、彼女の家に行ってみた。
家には家政婦のおばあさんが一人居るだけだった。
どうやら彼女の父親は戦犯として裁かれたらしい。
彼女は遠くに行ってしまっていた。
そして終戦してまもなく、この国は2つに分かれてしまった。
彼女は向こう側に行ってしまった、もう会う事はないだろう。
彼女に関する記憶だけは薄れる事は無かった、思い出は日に日に綺麗になっていく。
ある日夢に彼女が出てきた、夏祭りの浴衣姿、夜の暗さとオレンジ色の光、祭りの音頭。
その日以来度々彼女の幻影が夢に出てくる。
忘れたはずの記憶までもが蘇る。
あれから二度ほど女性と付き合う事になったが、うまくは行かなかった。
別れる度に、なぜか虫の焦げた匂いを思い出す。
あれから十年が経った。
今ならあの言葉の意味が分かる。
昔小説で読んだあの言葉・・・。
あの時会えなかったが偶然、今こうして生きて会えたのはきっと運命なだろう。
僕は今運命的に彼女と再会した。
色々な感情を抑えながら、僕は何気ない会話を交わした。
そして最後に僕は言った。
『俺はずっと前から愛していた女が居る。今もずっと。』
彼女はちょっと意地悪な笑みを浮かべた。
『あんたに愛された女は幸せだわ。』
●《自己批評》
『ドロドロにしようかと思ったけど、やめました。』
> > > > > > > > > > > > > > >
☆あんたに愛された女は幸せだわ。
『宣伝?』
著者:ホクト
あんたに愛された女は幸せだわ。
合コンでよくこんな話を聞く!!
それでも、なかなか彼女が出来ない_│ ̄│○
そんなおいらに、もったいないくらいの合コンが舞い込んできた
相手はモデルさん!!
すっげ〜〜! おいらの容姿はともかく、相手の容姿は問題なし(笑)
いまから会うのを楽しみにしている・・・
どんな話をすればいいのかな?
と、あれこれ考えていた。
いざ、待ち合わせ場所の「ドミノ」へ
やはり、容姿はトップクラス(o^―^o)ニコッ
こんなところにいただけでも幸せかもしれない!
お店の雰囲気は、ちょっと変わった感じ!
個性的といえば個性的かな?
話をしていくうちに、なんだか妙な感覚が出てきた。
おいらだけ浮いている・・・_│ ̄│○
ちょいワル風の友達だと、それなりに盛り上がるのに、おいらが話すと会話が止まってしまう。
なぜだろうか???
今回はおまけだし仕方ないか・・・
と諦めかけていたところで、一次会終了。
二次会の場所を、どこにしようかで話していたら不思議な現象が起きた。
今度はおいらの話に食いついてきている!!
無事に二次会の場所へ向かうことになった。
不思議だなぁ・・・と思いながら、ふとお店に向けて振り返ってみた。
モデルとの合コンで一次会の場所は
「ドミノ」
ここでは殺気だけが人を引きつける…
●《自己批評》
『もしかしたら分かりづらいオチかもしれませんが、じっくり読んでください。
最初の文章・最後の文章をつなげようとしたら5秒でアイディアが出たので、ちょっと不思議なショートショートに出来上がりました。』
> > > > > > > > > > > > > > >
☆ここでは殺気だけが人を引きつける…
『永遠のメロディー・叢冥(そうめい)』
著者:Clown
「ここでは殺気だけが人を引きつける……」
ソレは、俺に向けてこう手向けた。
「そして、殺意だけが……お前をお前たらしめる」
ソレは、俺の手の届かないところでそう嗤った。
「なら、俺はお前に向けて殺意を送ろう」
俺の言葉に、ソレはくつくつと笑みをこぼした。
何よりも浅いはずなのに、何よりも深い意味を含んだその笑みを、俺ははじき返した。
それは、ただの強がりかも知れない。
しかしながら、それは確かに、俺を俺たらしめる所行であったのかも知れない。
この……煉獄よりも深い戦場では。
ソレが俺の前に現れたのは、丁度3日前だったと記憶している。
黒装束に巨大な鎌なんて言うベタな格好をしているから、俺は一瞬部隊の誰かが悪ふざけでもしているのかと疑った。
だが、そうではなかった。
いや、いっそその方が幸せだったのかも知れない。
「お前の命は後……130時間と13分だ」
「……なに?」
唐突に死の宣告を突きつけたソレは、ぴくりとも動かずに俺の前に立ちふさがった。
俺は思わず聞き返したものの、そのあまりの荒唐無稽さに自分の頭を真っ先に疑った。
どうやら、俺は夢でも見ているらしい。
そう思い、俺は手近にあったバールで自分の頭を軽く叩いた。硬い金属の感触が頭蓋骨を振動させたが、それは同時に俺に痛みをもたらして過ぎた。
痛みを感じる。
どうやら、夢ではないらしい。
目の前のソレは黒装束を翻すと、背に負う鎌を俺の方に向け、切っ先を俺の襟元にあてがった。最早驚くことも億劫になった俺は、なされるままに鎌に身を預ける。
ソレは、こう言った。
「お前には、契約する権利がある」
「……契約?」
鸚鵡返しに、そう呟く。
「死に至るまでに、幾ばくかの望みを叶える契約を締結することが可能だ。勿論、死を先延ばしにすることは出来ない」
「……なるほどな」
どうやらソレは、死神と言うよりも悪魔の類らしい。
この戦場で命を落とす俺の魂を、その場で奪い取るつもりのようだ。
俺は、思わず笑ってしまった。
幾多の戦場を乗り越え、その度に五体満足で生きて帰ってきた俺。次々と戦友が亡くなっていく間に、俺はいつしか自分が死神にでもなったような気分でいた。
他人の命を奪い続け、盾にし続けてきたこの俺は、正しくそうであったに違いない。
だが、ここに本物の死神がいて、ソレが俺に問いかけている。
望みを言えと。
最早死んでも地獄にしか行き場所がないと思っていた俺に、そいつは「望め」と。
「さぁ、お前は何を望む?」
俺は、ソレの問いに、はっきりとこう答えた。
「俺は、全てを終わらせたい」
これまでの俺を。
これからの俺を。
全て終わらせて、処分して、真っ平らにしてしまいたい。
それが、俺の望み。
いつ殺されても良いと思っているのに、自分自身で死ぬことを恐れている、臆病な俺の最初で最後の望み。
130時間後などと気長なことを言わず、今すぐ俺を殺してくれ。
「……ここでは、殺気だけが人を引きつける」
「?」
ソレの発した言葉に、俺は疑問符を浮かべた。
ここは、戦場だ。
ならば確かに、『殺気が人を引きつける』という表現は間違ってはいないだろう。
しかし、何を唐突に?
「そして、殺意だけがお前をお前たらしめている」
「……何が言いたい」
黒装束のすきまから伸び出た黒鎌が、俺の首から離れていく。
そして、ソレは俺の心臓を指さし、言い放った。
俺の出来ない、唯一のことを。
「お前がお前を殺めてしまえば、それで全部終わる」
●《自己批評》
『時間が無くて、中途半端な作品になってしまった○∠\_ 』
> > > > > > > > > > > > > > >
☆おまえがおまえを殺めてしまえば、それで全部終わる。
『再会(再開)』
著者:知
「おまえがおまえを殺めてしまえば、それで全部終わる……それはわかってるだろ?」
「俺にそれができないことは、おまえも知っているだろ?」
「相変わらずだなぁ……おまえは。もう何年経つんだ"俺が生まれてから"」
「さぁ……すごく昔のような気もするし、つい最近のような気もする」
「本当に変わらないな、おまえは……」
「放っとけ」
「あれからお前は色々忙しく俺が出る幕はなかったのに、少し考えるゆとりが出たら これだもんな」
「……出番がなかった方がよかったか?」
「ああ、俺はおまえにとって癌でしかない存在だからな」
「……」
「時間もないことだし、始めるか……問おう、何故おまえはおまえがおまえを殺めることができないのか」
「……いきなりそれか? 簡単だ、俺が自分が嫌いだという事よりも、『人は死ぬまで生きなければならない』という考えの方が強いからだ」
「問おう、『人は死ぬまで生きなければならない』という考えをもつようになった理由はなんだ」
「若くして……まだ生きたくて死んだ人に対する冒涜になるからだ」
「問おう………………か」
「………………からだ」
「問おう……………………」
「……………………らだ」
「問………………………」
「……………………らだ」
「……………………………………」
「……………………………………」
「時間だな、これで最後だ。問おう、おまえが最後に人前で泣いたのは何時か」
「忘れた。少なくとも中学生以降は泣いたことがない。人前か否かに関わらずな」
「そうか、なら俺が消える前に一言残しておこう……次に会えるのは何時になるかわからないしな」
「「おまえは生涯誰の前でも泣かないだろう」」
●《自己批評》
『今までの中で一番納得できていない物に仕上がってしまった。
とは言っても、正直忙しいので書き直している暇がないのでこのまま送る。
全て会話文にしたのには一応理由があるんだけど……地の文を入れたほうがよかったかもね。』
> > > > > > > > > > > > > > >
☆おまえは生涯誰の前でも泣かないだろう。
『デジタルに捧げる親愛の証明(メッセージ)』
著者:AR1
おまえは生涯誰の前でも泣かないだろう。
冷血人間のような言いよう。いや、扱いとしてはそれ以下か。なにせ〈泣かない〉のだから。精神的な苦痛も、肉体的な激痛にも嘆くことはない、そんな言われよう。
夜空に潜む奈落の穴。見上げると吸い込まれる、魅了される違和感。
都会を彩るネオンの光。見据えると誘い込まれる、誘蛾灯のような罠。
繁華街の耳を突く喧騒。聞き耳を立てる、噂話と客引きが飛び交う雑音(ノイズ)。
違う、違う、違う――なにもかもが理想(イメージ)と違う。
日常の脱却を図り田舎を飛び出して、高校に進学して、小遣い稼ぎにバイトに精を出して、結局、本当に欲しかったものが得られないまま、掌の隙間から落ちる希望の砂。
同じ高校の同級生からは後ろ指を差して、いつも陰を落としている俺を罵る。いじめというやつだ。だが、それくらいなら気にしない。心の支えがあったから。
携帯電話に着信。折り畳まれたそれを開き、届いたメールを確認する。そこには、今付き合っている、俗に〈彼女〉と呼ばれる人が打った文章の羅列が画面に映っている。
実のところ、彼女と直接的な面識はない。写メールで画像を送ってもらったことはあるが、世も末のデジタル社会。捏造なんていくらでも出来るだろう。
当てにしない、顔なんて。俺はそこに惹かれたんじゃないんだ。俺が惹かれたのは、〈彼女〉の打つその文章。
艶やかで、どこか素っ気ない挨拶で始まって、けれど俺の冷めた隙間に深々と突き刺さり、一心不乱な気持ちにさせてくれるその羅列。
ネット上の盲目的な幻想だと分かっている。そんなこと、誰にだって理解できるさ。
だけど、現実にはない救いを幻想に求めたって悪くはない。その言葉が体験に基づいて織り成される真言だとしても、それが虚構に成り立つ作り話(サクセスストーリー)だとしても、俺には知ったことではない。
俺の恋の対象は、画像に写っている、整った顔立ちの色白美人ではない。俺が焦がれて情熱を傾けるのは、その艶やかな言の葉の連続的な記述によって形作られるストーリーなのだ。
おまえは生涯誰の前でも泣かないだろう。
それは事実だ。俺は誰の前でも泣きはしないし、嗚咽も漏らさなければさえずりもしない。
けれど、俺は〈彼女〉の手によって想像されるものによって感動を覚えた。とりこにならない方がおかしい、と思うくらい。
付き合っていた女の子に別れ話を切り出された。中学校まで田舎で一緒の学校に通っていたのだが、進学を機に新たな生活を始めるに際し遠距離恋愛として関係を保つことを約束した。
しかし、結局はメールだけのやり取り。時々電話もかけていたものの、相手の顔がだんだんと記憶から薄れてゆく毎日。日に日に、カウントダウンが進行して行く………
喪失に侵食される記憶。そうして、付き合っていた彼女も、ただの仮想現実にある人物と同列の存在に成り果てた。
別れ話を切り出されて悲しくはなかったし、悔しくもなかったし、理不尽だとも思わなかった。必然だろう、こんな冷血人間には当然の末路であったとも思える。
だが、どうだ。今、虚構の現実でありながら、そこに肉を持ったかのような存在感は。
画面越しの間柄でしかないのに、今そこに〈彼女〉がいて、それを抱きしめたくなる強烈な衝動は、もう理屈では説明できない。
〈彼女〉の紡ぐ愛の言葉。俺もそれに応えるように、相手が望んでいると想像して、心からの気持ちをメールに吐き出す。
もともと壊れかかっていた日常。破綻していなかっただけの毎日。それもいまや気にも留めていない、未来も何もない、即物的で構わないと信じる今。
目指す道も抱く想いも変わってしまった…
●《自己批評》
『なにも考えずに書き、少し理性的に軌道修正していたら、やたらとサイコな物語になってしまったような(汗)
惰性でものを書いて行くとこんなものが出来上がるのか・・・実感 & 再認識。
でも、やはり惰性で書いている時も音楽は欠かせないです。いつもヘッドフォンのリズムに乗せています。
音楽の力って偉大です。』
> > > > > > > > > > > > > > >
☆目指す道も抱く想いも変わってしまった・・・
『抱きしめたくて』
著者:フトン
目指す道も抱く想いも変わってしまった・・・
人は年齢を重ねるたびに協調性を身に付けていく、私もその一人だしそうしなければ浮いてしまうのだから仕方ないと思う。
だから失ってしまった、個性という名の自由を・・・・・
☆
「沙菜って好きな人とかいるの?」
親友の遥香が私の前の席に座るとそう言った。
「居ないけど・・・」
私の答えに不満そうに遥香は口を尖らせる。
「高3にもなって好きな人も居ないわけ?」
女の子という物はどうしてこうも恋愛が好きなんだろう・・・
いつも私の中のもう一人がそう言う。
『何が楽しい』のって…
でもそれを口に出すことはない。
「淋しいよね・・」
「うん。そうだ!今度合コンでもする?」
楽しそうに話す遥香に少々うんざりしてるのに、私は笑顔で頷いた。いかにも嬉しそうに・・・
「行く!やっぱ彼氏は欲しいもんね!」
言った後でまた自己嫌悪・・・
何でいつもこうなんだろう。人に合わせて生きてしまう、本当の気持ちなんて誰にも話す事もなく。
事なかれ主義は何時から私に身についたのだろう・・気がつけばいつも人に合わせていた。親友の遥香にさえ本音なんて言えない・・・
小さい頃に「アイドル」になりたいと願っていたことがあるけど・・いつの間にか現実を知った。そういう仕事はごく一握りの選ばれた人が成るのだと、その中に私は含まれてはいないのだと・・・・これが現実。私の現実・・・
突然、教室の扉が乱暴に開かれた。クラスの視線は皆そこに集中して、そしてすぐに皆が皆視線を逸らした。
青木 良人だった。
彼はいつでも一人だった。入学してすぐに上級生と喧嘩して自宅謹慎になってから、誰もが彼を腫れ物の様に扱っていた。
彼は私の幼馴染でもあったけど、そのことは誰も知らない・・・知られることは多分ない。
私の中にある、この複雑な想いも・・・誰も知らない・・・
良人は周りを憎らしげに一瞥すると、自分の席にドカリと座った。
そんな彼を密かに見ている私に、遥香が声をかけた。思いもよらない言葉で・・・
「私さ、実は良人の事好きなんだよね。」
何かが私の中で音を立てて砕け散った。
「え・・・・?」
遥香を凝視すると、遥香は照れたように頬を赤らめてこう言った。
「前からかっこいいとは思ってたんだけど、ちょっと恐いでしょ?でもこの間、町で変なのにナンパされてたら助けてくれたんだよね。」
「そ・・そう。以外ね・・」
「でしょ!で!告白したいんだけど・・沙菜付き合ってくれない?やっぱ一人じゃ恐くて言えないし。」
遥香の誘いに私は断れなかった。胸がチクチクと痛むのに・・・
☆
放課後、校門を出ると近くの公園に私と遥香は向かった。
そこには良人が一人で私達の来るのを待っていた。良人が一瞬私の方を見たけどその視線に私は答えなかった。
遥香は良人の前に駆け寄ると、はにかんだ様に顔を赤らめて「来てくれたんだ」と言った。
「呼んだのはお前らだろ。」
ぶっきらぼうにそう言った良人に遥香は一瞬怯んだけど、すぐにめいいっぱいの笑顔を浮かべると愛の告白を始めた。
「私、青木君の事好きなの。付き合ってくれる?」
私は直視できずに視線をはずした。良人がどう答えるのか聞きたくなかった。胸がズキズキとナイフで切り裂かれたように痛い・・・殺してしまったはずの気持ちが傷口から溢れ出しそうで私は胸を押さえた。
「悪いけど。俺、女は信用してないんだ。そいつが良く知ってるはずだぜ?」
良人の返事に遥香が私の方を向いた。その顔は驚きと不信感に満ちていた。
「どう言う事?沙菜?」
私は何も言えずに俯いた。
「そいつ、俺の幼馴染なんだよ。学校じゃ知らない振りしてるけどな。」
「ごめん・・遥香」
逃げ出したかった。この場に居たくなかった。でも足がすくんで動けなかった。
「ひどい。あんたなんかもう親友じゃない!!」
そう言って遥香が駆け出した。
私に平手打ちをして・・・・
「最低だな。お前。」
冷たい視線で良人が私を見下ろすと、何もなかったようにその場を立ち去って行った。
取り残された私は、その場に崩れ落ちて行った。
☆
いきなり親友と好きな人を失った私は、暗くなった道を力なく歩いていた。家に帰るでもなく、ただ歩き続けた。
しばらくすると見慣れた空き地に着いた。
昔、まだ純粋だった頃良人と遊んでいた、あの空き地に・・・
引き寄せられるように空き地に入ると見覚えのある女性がそこに居た。
私は思わず声をかけた・・・
「おばさん?」
良人の母親だった。
6年前、彼女は幼い良人を残して家を出て行った。その彼女がここに居る。
「沙菜ちゃん。」
大きくなったわね。と彼女が言った。
「元気だった?良人とはまだ仲良くしてくれてるのかしら?」
少しやつれた顔をしている。この6年きっと、いろんな事があったのだろう・・・彼女を見るとそれが良くわかった。
「いえ。今はあまり・・・」
そう私が言うと彼女は残念そうに目を伏せた。
「そうよね。もう6年も経つんですものね。良人は元気かしら?」
そう言って遠い目をした彼女に、私は問いかけた。
「会ってないんですか?」
「離婚する時の約束でね。会えないの・・・。でもあの時はこうするしかなかったのよ。良人の為に諦めようとも思ったんだけど・・気持ちは変えられなかったの・・最後にどうしても会いたかったんだけどね・・」
そう言った彼女の瞳が悲しげに揺れた。
「最後って・・・」
そう聞こうとした時、誰かがこっちに走ってきた。私は口にしようとした言葉を飲み込んだ。
「何しに来たんだ!!」
良人だった。息を切らし鬼のような形相で彼女を睨んでいる。
「ごめんなさい。どうしても、貴方に会いたくて・・・」
「今更、何言ってんだ!俺のこと捨てたくせに・・・!!」
彼女は俯いて肩を振るわせた。
「もう、二度と会いに来るな!」
良人はそう言い残すとその場を立ち去った。最後に私を一瞥して・・
「良人!!」
私が追いかけようとした時、彼女が私を呼び止めた。
「沙菜ちゃん。待って!お願いがあるの・・」
☆
家の前まで来ると良人が玄関先に立っていた。
「何で、あいつと居たんだ?」
私を見つけると良人は真っ先にそう言った。
「何でって・・偶然会っただけだよ・・」
私の答えに良人は地面を蹴りつけた。その姿は小さな子供のようだった。
「おばさん。今でも良人の事心配してるよ?元気かって聞いてた。」
良人が私の肩を掴んだ!痛みに顔を歪める。
「お前も、あいつも勝手だよな!!人のこと捨てときながら!!」
視線がぶつかる。私も良人を捨てた・・・自分を守るためだけに・・・
殺してしまったはずの想いが、弾けるように溢れ出した。気づかないうちに涙が溢れていた。
「良人・・ごめんね。ごめんなさい。わたし・・・わたし・・」
関をきらした様に涙が溢れて止まらず、言葉が上手く出てこない・・・
良人の掴んでいた腕の力が抜けていった。
「もういい。」
そう言い残すと、くるりと踵を返して、良人は歩き出した。
「待って!良人!」
今、引き止めなかったら、二度と会えない気がした。
私は走り出すと良人の背中に抱きついた。
「ずっと、好きだった!今でも好きなの!もう、失いたくない!」
止められなかった。どうしようもなかった。何年も抑えられてきた想いは火山のように噴出してどうすることも出来なくなっていた。
「沙菜・・」
私の手を振り解き、良人が私の方に向き直った。
「俺と居ると、色々言われるぞ。良いのか?」
私は大きく頷いた。頷いて、もう一度良人を抱きしめた。さっきよりも強く、しっかりと・・・
良人も私を受け止めた・・・
やっと、本当の心が放たれた気がした・・・
頭の中でおばさんの言った言葉が浮かんでいた。おばさんの最後の願い・・・
『あの子を・・・抱きしめてください・・・・あの子にはそれが必要なの・・私にはもう、出来ないから・・』
●《自己批評》
『難しかった(т。т;)何だか終わり方が納得がいってませんが・・・こんなんで良いのかしら?切ないくらい人を好きになる感情を描きたかったのですが・・・
まだまだ、勉強不足です。皆様のお目汚しになってしまいますね。初めてということで・・許して!!!(≧д≦*)フトン焼却決定!!!(・・)ノ〜〜〜〜●~*』
∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞
☆あの人を…抱きしめてあげて下さい…あの人にはそれが必要なんです。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
出題者:なずなさん (◎マーク)
作品名:『ポプラの秋』 著:湯本香樹美
正解者:無し
出題者:おりえさん (☆マーク)
作品名:『イティハーサ』 著:水樹和佳子
正解者:知さん
どうもはじめまして。ネットサーフィンをしていたらこちらのブログにたどり着きました。素的なブログですね。これからもよろしくお願いします。
2005.11.24 00:42 URL | ゴッドウーチン #- [ 編集 ]
編集お疲れ様です、内藤さんっ
楽しみにしてましたww
で、一気に読みました
楽しい・・・!!!(もっとまともなことは言えんのか)
個人的に
おりえさんの作品が大好きです^^
考えてみたら、うちのって
第7回に提出したやつと設定かぶってる・・・;
ヒロインがわびる⇒ヒーローが止める
・・次回はがんばります・・orz
2005.11.24 00:46 URL | 柚月 #- [ 編集 ]
待ちに待った発表会。
浮いてないか、心配で心配で。
上下に、きれいに挟まれて、何とも満足げ。
無事に嫁に出せました、どうもです。
2005.11.24 02:12 URL | Router #E6wUXrP2 [ 編集 ]
うわぁ、自分がでてた。
『望月一茶』を見た時には吹きましたよ。
……しかも、出演が長い!
謝謝です。
それにしても、一気読みも辛くなってきました。
皆いい味だしてます。てか、個性ですね。
自分のやつの短さが目立ちます。(涙
まぁ、なにはともあれ。
皆さん、お疲れ様でした。
みその人、がんばれ。
はぁ、ぴよは無しか……。(ボソッ
2005.11.24 03:20 URL | 一茶 #Mz4qhfyA [ 編集 ]
やぁっ! なんとかのったね!
これからしごとで、しかもこんやはてつやでらいぶ。
あしたのよるには、しにながらもすんぴょうかくからね。
ちょっとだけまっててね・・・。(没)
2005.11.24 07:06 URL | ないとぉしょごうき #NN0jmGmk [ 編集 ]
編集お疲れ様でした。皆様締め切りお疲れ様でした。そして、一気に読んでみました。
皆様凄過ぎ!!こうやって読んでいくと自分の作品の長い事長い事・・・
すみません・・・
やっぱり短編は難しいです・・
本当にお疲れ様でした。
2005.11.24 09:52 URL | フトン #- [ 編集 ]
楽しみにしてました〜。
期待以上に しんみりあり、ほのぼのあり ドキドキあり 笑わせてくれるのありで 良かったです!!
皆様 お疲れ様でした。
2005.11.24 10:09 URL | なずな #- [ 編集 ]
すいません、来月ありますよ!
混乱してしまった皆さん、名古屋の方角に暇子を呪う念を送ってください。
そして来月お題を承った暇子です。
絶対に期待しないで待っててください。
2005.11.24 15:42 URL | 暇子 #aiP0wTO2 [ 編集 ]
だめなワタクシ
滝にあたってきまふ(あったかい滝ですが
2005.11.24 22:40 URL | 晴みそ #VWFaYlLU [ 編集 ]
ぴよ回避出来てほっとしました(^^;
というか、最近小説書くのサボってばっかりなので、こちらの企画のおかげでようやく自サイトの更新が出来たというありさまです。感謝。
今回も皆さん凄いですね。シリアスありギャグあり、意外性あり、本当に個性豊かで面白いです。きっといろんな世代の方が参加しているんだろうなと思うと刺激になります。
12月と1月はすみませんが棄権させてください。
年末年始はいつも実家がらみでバタバタしてしまって・・・(^^;
また2月からよろしくお願いします。
2005.11.24 23:35 URL | 絵空ひろ #mQop/nM. [ 編集 ]
夏馬さんに勝手に名前借りられたのは私“だっちゃ”?
みんなの小説、面白かった“だっちゃ”
ドキドキした“だっちゃ”
泣きそうになったのもいくつかあったけど言うと恥ずかしいから秘密“だっちゃ”
2005.11.25 15:54 URL | 亜季 #XZ039GEA [ 編集 ]
ただいま風邪をお召しになっているのでちびちびと読んでおります。
編集も含め、みなさんオツカレサマです。お題のせいかコメディ色が薄いですかね。
ええ、亜季さん、勝手に借りました。ちなみにおでぶちゃん(尾出武)も。次は誰にしようか・・・。
ああ、武士と武史がミスですね。
2005.11.25 21:59 URL | 松永 夏馬 #- [ 編集 ]
トラックバックURL↓
http://nightstalker.blog17.fc2.com/tb.php/109-687b225c
『Mystery Circle Vol.8』
毎月恒例、内藤さん主催の『Mystery Circle』に参加させていただきました。メンバも増えますます自分の居場所に不安を感じつつも、居座りつづけております。個人的なオススメはですね
