『スペシャル』
著者:なずな
見慣れたいつもの朝がやってきて、
がらんとした風景を
当たり前のような顔で包んでいく。
うっすらと鼻の頭に光る汗。
まだ2歳のシュウ。
安心しきった寝顔、正確な寝息。
私は朝の光に目を細め
窓の外に目をやった。
ひび割れたコンクリートの壁、
伸び放題の雑草は小さな花をつけ、
さびた色の遊具は風に揺れている。
どれも、昔ここで響いていたこどもたちの声を
懐かしんでいるみたいだ。
☆
簡単な荷物を鞄に詰め、シュウの手を引いて家を出た。
走り来る電車の前に 飛び込む勇気もなく
渡りきってしまった 踏み切り。
その先をぼんやりと当てもなく歩いているうち
迷い込んだ 人気のない団地の残骸。
広がる廃墟。
ここは どこだろう・・。
これから どこに向かえばいいんだろう。
物干し竿のないベランダと
カーテンのないただのガラス窓
どの窓にも生活の温度が感じられない。
たまに見える色あせたカーテンは
置き去りにされた年月を語り、
割れたガラス窓から入る風に
時折ゆらりゆれていた。
夕闇が建物たちを包み込む。
ひたひたと忍び寄る孤独感。
隅っこの四角い窓にぽつんと
小さな黄色い明かりが灯っていた。
シュウが先に その窓を見つけ
指さして 私の手を引いた。
引っ張られるようにして近づいてみる。
良く見ると団地の一群とは
少しだけ造りが違う、小さな建物だった。
ひびの入った黄ばんだ壁に
ひらひら風にあおられながら
なんとかへばりついている紙には
黒々と筆文字でこう書いてある。
「入居者募集中 即入居可
短期入居 応相談
101号室 イワツキまで」
つないだ小さなシュウの手にキュッと力が入った。
私を見上げる幼い瞳に映るのは 私自身の疲れた顔。
空の闇の色は 勢い深みを増していた。
「おや 珍しい。お客さんだ。」
まるで私が来るのを知っていたように
小柄なおばあさんが101号室の玄関に立っていた。
「すみません・・
このあたりで泊まるところを探しているんですが・・」
「部屋ならたくさん空いてるさ。
どこでも 好きなところに泊まるといい。」
「え・・?でも・・」
人気のない廊下を 振り返ると
「あたしの家だ。好きに貸すさ。」
イワツキさんは歯の抜けた口を大きく開け
カラカラと笑った。
シュウがいきなりイワツキさんの前に走り出て
「抱っこ」というように 両手を広げる。
いつもは人見知りする子なのに・・
「おお、いい子だ。
特別な子どもだね。
スペシャル。
素晴らしいよ。」
かがんでシュウを真正面からじっと見ると
抱え上げるように抱きしめ、
イワツキさんは目を細めてそう言った。
─スペシャル
不思議な確信に満ちた言い方だった。
☆
この小さな一棟はイワツキさんのもので
横に広がる団地は取り壊される計画が止まったままらしい。
ここも一緒に売ってくれと しつこく来ていた不動産屋も
来なくなって久しいという。
「残念だねぇ。アイツらからかうのがアタシの
楽しみだったのにさ。」
しわくちゃの手でシュウの頭をなでながら
イワツキさんは片目をつぶって見せ
2階の一部屋の鍵を
チャリンと音をたてて 私に手渡した。
「必要なものがあったら 何でも貸すよ
ガス 水道 電気 すぐに使える。
ホテル並み・・とは言わないが
ま、のんびりするといい。」
「すみません。お世話になります。」
「今日はその子も疲れているようだ。
布団一組貸してやるから とにかく寝な。」
小さな押入れから、手品のように
布団を一組引っ張り出す。
「なに、見栄えは悪いけど 案外 清潔だよ。
部屋だって、あんたのような人が来る気がして
ちょうど掃除も済ませたところさ。」
コンクリートの暗い階段を布団を持って上がる。
布の擦り切れた古そうな布団に頬を寄せると
思ったよりずっと柔らかく
暖かなお日様のにおいがした。
☆
シュウはしゃべらない赤ん坊だった。
周りの赤ちゃんがカタコトを話し出しても
シュウは ひと言も声を出さない。
手先も器用だし 歩き出すのも早かった。
他人の言葉をきちんと理解したし
表情で穏やかな感情を伝える。
公園などで出会う子供と、仲良く遊ぶこともできた。
私よりもずっと、シュウの方が溶け込むのが上手で
黙ってそんなシュウを見ていられれば 幸せなはずだった。
医者は耳にも声帯にも、もちろん知能にも
問題はないと言う。
「お母さん、いっぱい話しかけてあげていますか?」
に始まるさまざまな質問は
「お前はできそこないの母親だ。」
と宣告されているように響いた。
アドバイスも慰めもいらない
シュウを連れて行く公園も同じところを避け
転々と場所を変えた。
話しかけられるのが 怖かった。
深くつきあうのが 怖かった。
シュウの父親、康介は
シュウが喋らない赤ん坊だと解ったときも
自分の気持ちより、まず私とシュウのことを気遣ってくれた。
言いたくないことは無理に聞かず
いつもこちらから話し出すのを 待っていてくれた。
けして誰かを責めたり 傷つけたりしないひと・・。
なのに私はその、求めていた優しさに戸惑うのだ。
責めない康介の心の奥を疑うのだ。
笑っている康介の目に怯えるのだ。
やりきれなかった。
☆ ☆
夜中、ふと目が覚めた。
一緒の布団で寝ているはずのシュウがいない。
あわてて起き上がると 窓辺にシュウのシルエット。
そばに行くとシュウはゆっくりと片手を上げ
窓の外を指差す。
向かいの団地の並んだ四角い窓に 全部明かりが灯っている。
カーテンのない部屋がほとんどで 中の様子が見てとれた。
テーブルをかこんで何かのお祝いをしている家族
寄り添い語らう夫婦
遊ぶ子供たち 見守る両親。
愛する誰かに電話している幸せな女の子
四角い窓一個ずつにひとつずつの家族の形。
どれも のどかで幸せそうな光景ばかりだった。
笑顔があふれていた。
子供の頃 心から望んだ光景が そこにあった。
康介と作っていこうと思った光景がそこにあった。
窓の明かりがまぶしすぎて、目が開けてられない。
涙があふれた。
シュウが手を伸ばし私の頬に触れる。
柔らかな手の平。小さな5本の指。
「シュクフク・・」
祝福・・夢の中のシュウは 康介の声でそう言った。
*
「おやおや、お母ちゃんの方が よく眠れなかったようだね。」
─ おせっかいなのは解ってるんだけどさ・・
おにぎりの乗った皿を持ってイワツキさんが来た時
シュウは私より先に起きていて
鞄から服を出し、ひとりで着替えようとしていた。
嬉しそうにイワツキさんの手を取るシュウ。
昨日会ったばかりなのに 言葉のやりとりもないのに
すんなり打ち解ける二人が眩しかった。
明かりなど灯るはずのない 窓の外の寂れ果てた団地
やっぱり夢だったんだ・・ぼんやり見ていると
「家もたまには 夜通し思い出を語る相手が欲しいんだろうさ。」
イワツキさんはニッと笑って 私を見た。
☆
「心配しないで。」
「心配するさ。」
電話に出た康介は そう言った。
「帰ってきて、ちゃんと話してくれないか?」
「ごめん、どんな風にちゃんと話せばいいのか 解らないの。
康介の言ったことは間違ってないよ。
でも 少し考える時間を下さい。
きっと・・・ちゃんと・・シュウ連れて、戻るから。」
戻るから・・
出たときは 戻らないかもしれないと思っていた。
どこかで シュウとふたり、消えてしまってもいい
そんな風にも思っていた。
─ 戻るから
昨夜の夢の余韻は 私の心を少しだけ変えていた。
康介は私に言ったのだ。
「君がボクに出会う前
何があったのか まだ よく解らないけれど
いつまでも 亡くなったお母さんを恨むのは
結局 君が辛いだけだよ。」
─ 君をこの世に産んでくれた人、
シュウにとっても「おばあちゃん」なんだから
血・・遺伝・・連鎖・・
その 言葉が 私を押しつぶす。
シュウは 外周りを掃除する イワツキさんに ついて回っていた。
じゃれつく子犬みたい。
イワツキさんのしゃがれた笑い声が聞こえる。
─スペシャル。
会ったばかりのシュウを 何故イワツキさんはそう呼んだのか。
シュウにとって私は スペシャルな母親なんだろうか。
寒くないのに 身体が小さく震えた。
☆
その日の夜も 夢を見た。
窓辺に立つシュウ。
私も外を見る。
これは夢・・もう驚きはしない。
明かりが灯る 向かいの棟、
ひとつひとつの窓はまるで ずらり並ぶTVのモニター。
けれども今日は 少し様子が違っている。
争う家族、
冷め切った様子の夫婦。
ひとりで泣いている女の子。
ひとつの窓に目を奪われた。
あの 光景・・私、知っている・・
帰ってこない父親、自分だけを哀れむ母。
苛立ちをぶつけられ、ののしりをうける少女。
悪魔の言葉が降り続ける部屋。
斬りつける言葉、
取り返せないことば。
取り戻せない 時間。
あれは・・わたし。
ことばが 声が
怖い・・怖い・・怖い・怖い・・
シュウの手が そっと 私の手を取った。
小さな温かな手。
凍りついた身体を そこからゆっくりと
溶かそうとするように
シュウは 両手で 私の手を包んだ。
かがんで シュウを抱きしめると
シュウは ゆっくり口を開いた。
「ダイジョウブ。」
☆
朝起きて見るシュウはいつものシュウだった。
利口そうな目、しなやかな手足。
語らない口。
「いったい どっちが怖いんだね。」
さびたブランコやシーソーを ひとつひとつ確かめながら
軽やかに遊ぶシュウ。
まるで弾むボール。
イワツキさんは 箒の手を止め、私のそばで
天気の話でもするみたいに 私に問うた。
「あのスペシャルな少年が ずっと 話さないことか?
それとも 口をきき出すことか?」
「イワツキさんは・・・」
ちょっと厳しい口調になった。
他人の子だもの、何とでも言える。
「シュウが口をきかない子だから
『スペシャル』だなんて
そう いうんじゃないんですか?」
嫌な言い方だったかな・・と思ったけれど
イワツキさんは 気にする様子もなく
シュウに向かって 大きく手を振って見せた。
シュウもイワツキさんに応える。
とびきりの 笑顔。
☆
その夜の夢は 窓辺にシュウがいなかった。
明かりが灯る窓、窓、窓。
でも どこにも だれもいない。
ガランとした 窓、窓、窓。
シュウ?どこ?どこ?どこ?
どこ?
─話せばいいのか?
口をきけばいいのか?
他のこどもと同じように 見えればいいのか?
言葉は きっとお前とお前の愛するものを傷つける。
おまえの母がおまえにしてきたように。
そして お前がいつか してしまうと恐れているように・・。
けれど お前は知っている。
お前が一番怖いのは お前がこれ以上傷つくこと。
シュウでもない、康介でもない。
お前自身が ふたたび傷つくこと。
空気を振動させて 建物が口をきく。
イワツキさんの声のようでもあり
忘れたはずの母の声のようでもあった。
ちがう、ちがう、ちがう ちがう。
ちがう ちがう。
どんな遺伝子がこの身体に住み着いているか知っています。
どんな血が この身体に流れているか知っています。
でも わたしは 遺伝子と血以上のものを信じたい。
生い立ちもこころの傷さえも 支配しきれないものを信じたい。
愛してるんです。愛してるんです。
シュウを、康介を 愛してるんです。
でも 愛しかたが わからない。
いつも 何か間違えてしまうような気がして
不安なんです。
不安で 不安で 不安で・・・。
向かいの棟の明かりがパシッと
音をたてて 点滅した。
私は 必死で叫ぶ。
頼りなくて ちっぽけで
自分だけ守るのに 精一杯な こども。
あたしはいやだ。
ぜったいにいやだ。
あんたのきもちがわかるようになるくらいなら
おとなになんか ぜったい ならない。
ぜったいに ならない。
私は・・私はうずくまる。
目をつぶり 耳を ふさいで。
おかあさんがすきなのに
おとうさんもすきなのに
どうして あたしを せめるの?
どうして おこってばかり いるの?
おかあさん、おかあさん
おとうさん おとうさん
どこにいるの?
どこにいるの?
誰もいない棟の明かりがちらちらと点滅し
消えかかった。
私は 息をのむ。
身体が熱い。
熱いのにふるえが止まらない。
でんきがきえるまえに いわなくちゃ。
こんどこそ いわなくっちゃ。
もう まにあわない。
あたしは まにあわない。
おかあさん おかあさん。
しんじゃいやだ。
いやだ。いやだ。いやだ。いやだ。
あいしてる。
不快な目覚めだった
母の最期に伝えられなかった言葉を
夢の中で叫び続けていた。
自分の声がじんじん耳の中に響いていた。
隣にいるシュウを引き寄せて抱きしめる。
ごめんね。ごめんね。ごめんね。ごめんね。
私はこんなにもまだ「母のこども」だ。
「マ・・マ・・」
シュウの口から漏れる吐息のような、
・・・・それは「ことば」だった。
私を覗き込むのはいつものように澄んだ瞳。
シュウの顔のひとつひとつのパーツを 指で確認する。
それらは 私のパーツとこの子の父親のパーツ
それぞれに分かれ、律儀なほどに似ていた。
シュウの唇が動き ふたこと目が
静かにこぼれ出した。
「ダ・・イ・・ジョ・・ウ・・ブ・・。」
☆
シュウと並んで窓辺に立ち
手を朝の日差しにかざし、
透ける血液を意識する。
わたしがいること。
康介と出会ったこと。
シュウが産まれたこと。
わたしが ここに いる こと。
受け継がれる血のことを考える。
シュウの肩をそっと抱く。
「シュウはいい子だね。
シュウは特別。
すばらしいよ。」
─ スペシャル
私は言葉をかみしめる。
「パパのところへ 帰ろう。」
シュウがぱあっと明るい笑顔になった。
イワツキさんが廊下を掃いている音がした。
(おわり)
●《自己批評》
『読んでくださった方、お疲れ様でした。
都会の新聞配達人と 寝起きの悪いじいさんの
わりと軽い話も 同時に考えていたのですが
どちらもなかなかまとまらず 酷い難産でした。
ウチの母が読むことはないですが 名誉のために言っておきます。
フィクションです。もちろん。』
> > > > > > > > > > > > > > >
◎不快な目覚めだった。
『Will Wish You Were Here』
著者:AR1
不快な目覚めだった。なにが不快かって言うと、体の芯から異常を来たしているような、自己診断システムが警告音をかき鳴らしているような、そんな覚醒。
グラグラ揺れる、不安定な意識の狭間に思うこと。
第一に……主人は俺のことをあまりにパシラせ過ぎだ!
それが〈彼〉の不満だった。いや、〈彼〉の主張している内容が即ち、〈彼〉を襲った全ての元凶の発端と言ってもいい。
〈彼〉の体は長年――とは言っても、ここ一、二年の話ではあるが――によってボロボロだ。外見上の体裁はなっていても、それに内包される臓器(パーツ)のことごとくが疲労困憊、機能不全などの症状が顕著になり始めている。
『おかげでどうよ……一応、なんとか動かせるけど、ただ動いてるだけ。いつ倒れたっておかしくはないさ』
嘆き。〈彼〉は溜め息混じりに吐き捨てたが、決して下克上を虎視眈々と狙うような真似はしなかった。〈彼〉は主人に買われた時点で絶対服従の身であり、そこに〈彼〉の意思を介在させる余地などはなく、定められた責務のみを全うしなければならない。
しかし、それも限界が近い。どれだけ誤魔化したところで、そう遠くない未来、〈彼〉は完全に壊れるだろう。
『……つーかさ、俺はシベリア抑留で強制労働を強いられてる日本兵か!? いや、それよりも酷い、あからさまに酷い……二四時間労働を一週間継続だなんて、それはあんまりだと思わない!?
壊れるに決まってるだろっ? というより、壊れるより他の道はなくっ』
どうやら〈彼〉の思考回路が暴走を来たしたらしい。限りなく演算が繰り返され、割り切れない数字の商を延々と追求するかのごとく、彼は喚き立てる。
『ほら、俺ってばさ、基本的にちょっと体が弱い訳よ……室内でぬくぬく、快適な環境で使われるような奴よりも。外でいいようにこき使われるわ、乱暴にしごかれるわ、無理を押し通されるわ……はあ、なんでこんな不幸な星の下に生まれたんだろ』
確かに、〈彼〉の主張は真っ当である。〈彼〉と同じ労働作業に置かれる者達は少なくないが、同時に彼よりもよっぽど労働環境は好待遇で、その格差は腐敗した社会主義国家に於ける階級差のごとし。
『それにしてもさ……俺はツンデレだからまだいいよ? 普段は愚痴ってばっかだけど、ちゃんと仕事はこなしてるし、文句だって面と向かっては言いません。時々、失神して倒れてしまうけれど……でも、それは俺のせいじゃない! それに、普段は愛想よくて肝心要の部分がドンガラなデレツンより一〇〇倍はマシであると断言出来るっ!』
一気にまくし立てた〈彼〉は、一旦息を継ぐように一拍置いたのち、すぐに弁舌を再開させた。どうにも、彼の暴走はチキンレースの様相を呈しているようだ――断崖絶壁で理性を働かせられるのか、それとも行き着くところまで全開ノーブレーキ、あえなく転落の憂き目なのか。
『主人はさ、いつもこう言う訳なのよ……』
――あー、新しいやつに替えようかな。今のやつ、なんかいまいちだし。
『…………はい!? いや、違うだろ! 明らかにお前のせいだろ! しかも具体的理由が、』
――お前、いまいちなんだよね。よく病気にかかるし、すぐ倒れるし。
『もうね、呆れますよと。俺がよく体調崩したり病気を患うのは、長時間強制労働とお前が変な病原菌を拾って来るからだろ! しかも薬はもらえんしさっ。俺がここまで生存出来たという事実が奇跡だわっ』
嘆きと怒りの根底にある共通項は、不平や不満などの不快な要素。ただ、迸り方が違うだけだ。今の〈彼〉は間違いなく炸薬爆裂級の奔流――怒りを体現している。
『ふうん、そーかそーか。俺の主人はそれがお望みですかっ。じゃあ、アレだよ……えーと、なんて言ったっけ? リーナスなんちゃらっていう北欧人……まあ、いい。俺の代わりにそいつから新たな従者を仕入れろっての! 言っておくが、主人の望んでいることはほとんどなにも出来やしないし、同じように酷使すれば呆気なくぶっ壊れるさっ♪ いずれまた、俺が恋しくて、あわよくば懇願なんかさせちゃって「すいません、やっぱり君じゃなきゃダメなんだ!」って言わせてやるぅぅぅぅぅ――…………!!!』
そこで〈彼〉の記憶がプツンと消えた。再生することの叶わない、完膚なきまでに叩きのめされた瞬間なんだ、と〈彼〉は認識した。薄れ行く、瞬間的な断絶の隙間でハッとなる。
そういえば、今日は眩暈がしそうなほど暑かった……
(クラッシュしたハードディスクから辛うじてサルベージされた、某WindowsOS君の悲痛なログより)
〈了〉
●《自己批評》
『最初は案が出なくて焦った……(大汗)
たまたま仕入れたPink Floydのアルバムがこんなところで天恵を授けてくださるとは……
参考にしたアルバム
Pink Floyd『The Wall』
Pink Floyd『炎〜あなたがここにいてほしい〜(Wish You Were Here)』(未聴)
タイトルは参考……というかパクリました(爆)』
> > > > > > > > > > > > > > >
◎眩暈がしそうなほど暑かった。
『眩暈』
著者:松永夏馬
眩暈がしそうなほど暑かった。
熱気を放つアスファルトへ一歩踏み出したオレ、牧村北斗はうんざりして輝く太陽を見上げた。真夏のような太陽がやたらとやる気を出して燃えているように見える。
まだ4月だっていうのにこの尋常じゃない異常気象に日本、いや世界が震撼していた。南極の氷が融けだしてゆっくりと海面が上昇しているらしい。東京やニューヨークが沈む日も近いとか、世界の首脳陣は大慌てだとさ。
え? それにしちゃのんびりした口調だって?
そんなこと言ったって、そうなっちまったもんはしょうがないし。しがない高校生のオレがどうこう頑張ったって温暖化は止まりゃしないって。別に達観してるわけでも諦めてるわけでもない。ただ、なんとなくなんとかなるんじゃないかって、明日になったら超画期的な打開策が見つかるんじゃないかって、思っているんだ。日本の、いや世界の大抵の人はこんな感じじゃないかな。自分はそんなパニック映画の中にはいないんだって思い込んでる。思い込もうとしているだけなのかもしれないけど。
そんな(どんなだよ)日曜の昼下がり、このクソ暑い中わざわざエアコンの効いた我が家を出るハメになったのは、幼馴染の那須ナツキに呼び出されたからに他ならない。昨日から海外赴任中の親父に会いにお袋は日本脱出。ストックホルムはさぞ涼しくて過ごしやすいだろうに、と悪態もつきたいところだが、週明けには模試があるからついて行くわけにもいかない。受験生はキビシイ、一人で自由を満喫するどころじゃあナイね。
で、ナツキに呼び出されたのはナツキの実験室。
ジョークじゃないぜ? ナツキの家には専用の実験室があるんだ。ガレージを改造したものだけど、某大学から流れてくる中古品とはいえ、置かれている機材は高校の実験室よかよっぽど専門的。なにせ彼女は天才だ。我が化学・物理・生物・数学・英語では全国でトップクラスの成績を誇っていて、部長を務める科学部はナツキが入部した時から全国大会常連(もっとも科学部関連の大会自体知名度が低いからあまり知られてはいないが)なんだ。
見た目は決して美人ではないがおっとりとしたお嬢様然とした風貌、それでいて多少口は悪いがその秀才ぶりを鼻にかけないカラッとした性格はむしろ同性に人気で、おかげで科学部の部員構成は女性比率が高い。数少ない我ら男性部員はハーレムなどと喜んでいるわけがなく、荷物持ちが主な仕事で嘆いてる。
あ、ちなみにオレの理数系の成績はほぼ2か3である。……文系の成績も2か3だけどな。うん、みなまで言うな。ナツキに無理矢理頼まれたんだよ。男手が少ないからって。
********************
「で、何?」
ガレージもとい、実験室は外よりはマシな環境で、出してくれた冷えた麦茶をとりあえず飲み干してオレはようやく口を開いた。
「挨拶もナシ?」
「こんなクソ暑い中呼び出されたら挨拶どころじゃナイ大変な事態だと思ったんだが」
「麦茶はしっかり飲んでおいてよく言うわね」
相変わらず打てば響くようなカウンターパンチだ。
「いいから用件を言え」
ナツキは悪戯っ子のような笑みを浮かべ、オレの顔をじいっと覗きこんだ。
「北斗、驚いちゃうぞ」
「あー、びっくり」
「まだ言ってない」
「いいから言え」
「タイムマシン発明した」
うん、さすがに驚いた。驚いたっていうか、心配になった。
「いちおう言っておくが、エイプリルフールはとうに過ぎてるぞ」
「冗談じゃないわよ」
コイツはますます心配だ。暑さにやられてナツキがおかしくなってしまった。天才とバカは紙一重だってよく言うじゃないか。
「まだジョークだと思ってるでしょ」
「当然だ。そうでなきゃナツキを病院に運ばにゃならん」
「いや、ホントに出来ちゃったわけよ。アタシだってビックリよ」
楽しそうに笑うナツキを見て、オレは頭を抱えた。誰だって抱えるだろうな。
「……あー、オレはバカだけどさ」
「知ってる」
即答をするな即答を。オマエ相手に否定出来やしないけどさ。
「少なくともタイムマシンなんてのは、SFか未来の夢の道具でしかないと思うんだが。青いネコ型ロボットでも現れたか?」
ナツキはやれやれと肩をすくめ、首を振った。
「何バカなことを言ってんのよ」
「いやいやいやいや、いくらオマエが天才だからって、いち女子高生が工作で出来ちゃうもんじゃねぇだろタイムマシンは」
ナツキは一瞬寂しそうな目を伏せ、不貞腐れたように言った。
「出来ちゃったんだからしょうがないでしょ」
「一緒に、〜ナリ、とか言うサムライロボットも作ったか?」
「……北斗って藤子不二雄スキね」
冷ややかな目でナツキ。なんだこのくだらない会話は。
「いいから本題に入ってくれ」
「ハナシを逸らしているのは北斗のほうでしょ。……本当に作ったのよ、タイムマシンを」
信じろというのかコレを。とはいえナツキの目は真剣だ。オレはどうしたものかと頭を掻いた。……仕方がない。
「……わかった、信じよう」
「全然目が信じてない」
「メンドクサイなオマエはッ」
大袈裟に怒鳴って見せると、ナツキはケラケラと笑いながら立ち上がった。本当に面倒な女だ。幼馴染だからってなんでこう付き合わされにゃならんのだ。美人てわけでもないし、出るとこ出てねぇし。……いや、付き合ってるわけじゃないんだが。
「コレがそのタイムマシン。ナツキトラベル11号」
金属製の、軽自動車くらいのコンテナをコンコンと叩きながら言った言葉にオレは眉をひそめた。
「11号? どんだけ作ってるんだよ」
「10年くらい前かな。失敗ばっかりだったけど」
小学生の頃からおかしくなっていたのか……こんなに近くにいて気づかなかったなんて。
「なんかすごく可哀想な子を見る目してない?」
「鋭いな」
「失礼ね」
ナツキはふん、と鼻を鳴らすと、おもむろにそのコンテナの扉をガチャリと開けた。
「さ、行くわよ」
「どこへ」
「世界を救いに」
********************
もはや温暖化を食いとめる時間はない。だから、その温暖化が加速度をつける前に戻って手を打たなければならない。
そういえばナツキは小学校の頃から温暖化問題に取り組んでいた。夏休みの自由研究で小学生にあるまじき調査と分析をして話題になったっけ。
もちろん、ナツキ自身が過去に行ったことで温暖化が食いとめられる保証はない。今回の目的はむしろ、タイムマシンが正常に作動するかどうか、なのだ。タイムマシンが現実化しさえすれば世界中の科学者が過去へと戻り、結果として温暖化を食いとめられる。そういうことらしい。
気付くとシートベルトの付いた皮張りのイスに固定され、オレは隣に座るナツキをなんともいえない顔で見つめていた。
「とりあえず、数日前に戻って帰ってくる、という実験ね」
「数日前には数日前のオレがいたりするのか?」
「そりゃそうでしょ。でも対面しちゃダメよ。過去の自分が未来の自分に直面したら何が起こるかわからないからね。気を付けてよ」
気を付けろって、ムリヤリ座らせておいて何を言う。
座ったままでナツキは手前の操作盤のキーボードを操り何やら入力を始めた。口元をわずかに上げて微笑んでいる、こういう時の表情は緊張している時だ。そういや最近じゃめったに緊張しているところなんて見ないな。
「これでOK。……たぶん」
「ちょっとマテ」
最後の呟きはなんだオイ。オレの言葉を遮るように、機械が唸り声を上げた。金属の箱がわずかに震えだした。
「ひとつ……聞いておきたいんだが」
「何? 舌噛むからあんまり喋んないほうがいいよ」
「……安全なんだろな?」
「……たぶん」
「ちょっとマテ」
起動音が大きく鳴り響く中、引きつった顔でオレは体を捻ってナツキの腕を掴んだ。
「い、いちおう聞いておくが、失敗したら……」
「時空を飛ばないだけ」
「……そか」
ホッとして力が抜けた。
「もしくは時空の彼方に消える」
「降ろせッ!」
並んだモニタから緑色の光が放たれた。同時に頭を揺るがすようなサイレンの音。
「北斗となら……きっと大丈夫だと思うから」
ナツキの呟きがわずかに聞えたその瞬間、モニタのひとつが破裂。声にならないオレの悲鳴がサイレンにかき消された。
********************
ガチャリ、と音を鳴らせてタイムマシン、ナツキトラベル11号の扉が開いた。中から漏れる燻った煙と共にオレは転がるように降りてガレージの床にひっくり返った。時間を超える前と丸きり同じ景色だった。ナツキは目をぱちくりとさせて慌ててガレージのドアから外を覗き見た。
「……失敗?」
残念そうに呟くナツキを見て、オレは海よりも深く安堵の息を吐き出した。
「死ぬかと思った……」
********************
口惜しそうな顔で再びパソコンに向かい原因を探し始めたナツキに別れを告げ、未だに蒸し暑い夕焼けの中オレは帰路についた。ナツキはモニタに食いつくようにして、こちらも見ずに手を振っていた。
真剣なナツキの雰囲気に飲まれちまったが、やっぱりタイムマシンなんてムリなんだよな。そりゃそうだ。そんな映画じゃあるまいし。
いや、でもナツキは天才だから、あと十年か二十年かしたら本当に作っちまうかもしれないな。そうしたら温暖化も食いとめられるってもんだ。うん、安心安心。
相変わらず根拠なくそう思うオレは楽観的だと自分でも思う。
そして少しだけ自己嫌悪に陥る。ナツキに比べてオレは何をしてるんだろう。ガキだからって何もしないで指くわえて見てて。誰かがなんとかしてくれるのを待ってるだけ。ダメだな……クソッ。
そういえば。
(北斗となら……きっと大丈夫だと思うから)
……たしかにこう言ったんだよなナツキは。聞き間違いじゃないよな。
……どういう意味だろ。
お守り代わりってことかな。うん、ほら、オレってこうのらりくらり生きてる割に悪運が強いっていうか。年末の福引でも自転車当てたし……。
……つーか、普通に考えればよ? その、なんつーか、「アナタとなら怖くわないわッ」みたいな?
ははははは、いや無い。ソレは無い。……無い……よな? 成績は下から数えたほうがよっぽど早いし、運動も中の中。ルックスだって、ま、悪くはないけど……ソレナリか。
無いな。うん、無い。無い無い。
あー、……まいったな。別れ際のナツキの横顔が頭から離れねぇ。下唇を軽く噛んで、少し悔しそうな真剣な顔で。別に美人じゃないけど、集中してる瞬間の表情ってなんつーか……ていうか、呼びつけておいて別れ際は手ぇ上げただけで挨拶もナシかよ。
うん、無いな。絶対に無いぞ。……あー、勉強だ勉強。明後日には模試だからな。ヤマかけるぞー。
首を振り振りオレはポケットから家のカギを取り出しながら門を開けた。……開けたところでソレに気づいて立ち止まった。ぎょっとして足が竦み、流れる汗の種類が変わる。暑さの所為ではない眩暈。
(……とりあえず、追試は確定だな)
どうでもいいことが頭を過ぎる。
「……失敗は失敗なんだが」
思わず口走り、オレはゴクリと喉を鳴らした。
郵便受けに5日分の新聞が突き刺さっていた。
●《自己批評》
『天才女子高生と幼馴染みの冴えない男子の物語。
過去へと行くはずが失敗、タイムマシンなんて無理だよなーと思ったら、未来に来てたってオチ。あとがきで解説するのってアレですねそうですね(汗)
いろいろと苦戦した結果、こういう書きかたでしか書けないってのがわかったのもひとつの収穫かと。ナツキのキャラが安定していないな。えー、勢いでヨロシク(笑)』
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◎郵便受けに5日分の新聞が突き刺さっていた。
『音信不通』
著者:BEAT
郵便受けに5日分の新聞が刺さっていた。あいつは、何かから逃げている、直感的にそう思った。
旅行ならまだしも、事件に巻き込まれているのでは?という噂が近所に立ってはいけないと思ったので、俺はあいつの郵便受けの新聞を一時預かる事にした。よくよく見てみると、それは経済新聞だった。
<やはり、そうだ。原因はあの日に在る>
2ヶ月前、俺は叔父の関連会社が一部上場する事を受けて、株を買う事を決めた。それをあいつにも伝えると、その足であいつは銀行へ向かった。
「これ全額、叔父さん所の株買ってくれよ」
あいつの行動は理解に苦しんだ。
「もっと良く考えろよ、利益になるとは言っていたけど、損する可能性だって有るんだぞ」
「こういうのってインサイダー取引っていうんじゃないのか?叔父さんも中途半端な情報ならお前にわざわざ言わないって。そんなの身内殺しじゃないか」
あいつの言う通り、叔父の株は上場と同時に上昇を開始して、俺はアルバイトの半年分の金額を手中に収めた。俺よりも2倍、3倍多く投資しているあいつは、築かれた富にご満悦の様子だった。
それからあいつは大学に現れなくなった。俺とあいつの共通の友人の話だと、休学してインターネットで商売している、との事だった。大学はあくまで就職が最終目的であるから、あいつの選択にとやかく言う事もせず、家を訪ねる事もしなかった。
更に3週間前、アルバイトの帰りにやつのアパートの前を通ると、黒塗りのベンツが停まっていた。あれは自分で購入したのか?はたまた来客なのか?ちょっと気になったので、その場であいつにメールしてみた。5分待っても、10分待っても、あいつからの返信は無かった。
1週間前、あいつの母親から俺の携帯に電話があった。
「あの子、どうしてるか知らないかしら?仕送り送ったのにお礼の電話が無いのって初めてなのよ。ちょっと家の様子を見て来てくれない?」
その言葉を受けて、俺は自転車にまたがった。あいつの家に到着、ベンツの姿は確認出来なかった。
インターホンを押す、反応が無い。電気メーターを見る、動いている、あいつは居留守を使って居るのだろうか?どうする事も出来なかったので
「お袋さんが心配してたぜ」
と、送信してその場を後にした。
そして現在に至る。あいつらしくない経済新聞の購読、突然の音信不通、この状況を見て、何も感じ取れないやつはどうかしてる。
あいつは少なくても5日間は家に帰っていない。インターネットで大博打を打って、多重債務者になったのか?それとも出鱈目な儲け話に乗って痛い目に遭っているのか?どちらにせよ心配だ。
そんな時だった。俺の携帯がメールを受信した。アドレスは渦中のあいつのものだった。
「題名:ひどく疲れた」
●《自己批評》
『話の尺は読んでいて疲れないあの程度で良いと思いました。設定で出てくる経済用語が不適切な部分が目立ちます、あの辺は不勉強だと思います。次は中篇くらいを目指して頑張ります!』
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◎ひどく疲れた。
『兵器の涙』
著者:Clown
酷く疲れた。
最早、指一本動かせそうにない。
○
そうだ、俺は疲れている。
休息が必要だ。
今までの36時間、俺は一睡もしていない。
自分でも驚くほど、俺の体は勤勉に動き続けた。
全ての関節は正確無比に駆動し続けるギアに、全ての皮膚は少しの違和感も逃さない鋭敏なセンサーに。
そして脳は、それら全てを冷徹に司り続ける絶対的な支配者に。
全ての状況を把握し、一点のミスも許さず、100%の制度を以て、事に当たらなければならなかった。
精密──いや、精緻の極みを凝らした「それ」は、そこまでの極限を持ってしか為し得ない、超技術の塊。
擬人型生体戦略兵器。
「神の似姿」を更に模して創られたその「劣化コピー」こそが、俺をここまで疲弊させた正体。
世界規模のハッカーとして名を馳せた俺が、ちょっとしたヘマで某国の軍に連行されて以来、俺はこの劣化コピーに縛り付けられてきた。
無菌室のような青白い部屋に軟禁され、毎日膨大な量のプログラムと向き合わされる日々。
最高級のスーパーコンピューターが束になったのと同じだけの演算能力を持った超小型ブラックボックスが、俺の唯一の会話相手だった。
無機物とお喋りする以外には最低限の生活しか保証されなかった俺の体は、もうお天道様の光やそよ風のにおいを忘れて久しい。
そんなものを懐かしむほど、以前の生活は自然に囲まれちゃいなかったが、だからこそ余計に懐かしく思えてくる。
勿論、ハッカーとしての腕をこの劣化コピーのために振るえと命じられたからこそ、俺は蜂の巣にならず、こうして愚痴の一つも言えるのだろうが。
「…………」
天井を見上げ、その視線をそのまま下へと移す。
そこに、俺の体力を奪い続けた劣化コピーの完成素体がある。
「M.E.L.(メル)」と名付けられたそれは、「兵器」と言う名とは裏腹に、普通の少女の形をしている。
長い黒髪を垂らした小柄な少女の頭には、小さなティアラのようなものが乗っている。これが俺の手元にあるブラックボックスと連動し、入力された命令を遂行するのだ。
すなわち、指定された対象物の「完全破壊」。
すました顔で眠るそれの内側に、国一つ潰して有り余るほどの能力があるとは、誰も想像しないだろう。
かく言う俺にだって、想像出来ない。
目の前で開発現場を見、その上でプログラムを組んできた俺にも、それの力の真偽を確かめることは出来ない。
漏れ聞こえてきた話に寄れば、核の力など比較にならないほどの高エネルギーを発する希少物質が内蔵されているらしい。
もし俺が今でもハッキングをしていたとしたら、一笑に付しただろう。
だが、いつかの起動実験に立ち会った俺は、その物質の存在を信じざるを得なくなった。
天然のダイヤと同硬度の人工ダイヤを、軽く握っただけで塵にするような力を、俺は他に知らない。
これだけでも、例えば要人暗殺などには十分だ。普通の少女を装わせて近づかせ、そっと相手の胸に手をあてがわせるだけで良い。何も持たない少女に、1秒で人を殺せる能力があるなどと、誰も思わない。
この力が、軍部開発局の連中が言うとおり全出力の千分の一にも満たないとすれば、背筋がぞっとする。
俺のプログラミング次第で、それは無差別大量殺戮に走ることも可能だと言うことだ。
そう考えると、疑問もわいてくる。
何故、開発局の連中は、こんな危険な代物のプログラミングを俺一人に任せる?
基礎プログラミングを組んだのは、勿論俺ではない。幾つかの禁則が予めプログラムに組まれていることも俺は知っている。
だが、その先の応用プログラムを組んでいるのはほとんど俺一人だ。
例外規則をいくつも作り、基礎の禁則を覆すことも、今の俺には出来る。
それを承知でなお、俺に全てを任せっきりというのは、どう考えても変だ。
そうだ、何故今まで気づかなかった?
疲弊していたはずの頭が、急激に回転を始めた。
俺は、もう一度打ち込み終わったプログラムを展開し、基礎プログラムから俺の組んだプログラムまでの道筋を見直した。
兵装プログラム、迎撃プログラム、シールドプログラム、ハッキングプログラム……俺の手がけたプログラムは細かいものを含めて数百に上るが、その中で一つだけ、俺が手がけていないプログラムがある。
駆動制御プログラム。
素体が人間らしい動きをするための物理制御を統括するそれは、俺のような基礎物理も覚束ない人間には組むことが出来ない。展開した途端に見たこともない数式が羅列して眩暈を覚えたが、それらを無視して大筋のプログラムを押さえていく。
膨大な行からなる文字列。
流れ続けるそれを追ううちに、細かな違和感が少しずつ蓄積されていく。
否が応でも、その「歪んだ」中身に気づかされる。
駆動制御プログラムの端々にセパレートされた文字列の断片。
それらを抽出してコピーし、出来上がった文字列を解析し、そこに浮かび上がってきたものは、一つのプログラムコード。
そのコードを無理矢理組み込み、実行させて出てきたのは、意味を成さない文字列と、その中に埋もれた、たった一言。
"Save me(私を助けて)"
瞬間、気づきたくもない可能性が頭の中をよぎった。
それと同時に、俺は開発局の人間を呪った。
何から何まで、俺に処分させようと言う腹か。
プログラミングのほとんど全てを担った俺に、「プログラミングの『全て』を担った」というレッテルを貼り付け、この「エゴのカタマリ」ごと闇に葬り去るシナリオを準備していたと言うことか!
俺は爆発しそうな憤怒を何とかこらえ、もう一度ブラックボックスに向き直った。
駆動制御プログラムの次に俺の手があまり入っていないインタラクティブプログラム。
命令に対して実行の有無を再確認する為の単純なプログラムだと思っていたそれが、予想に反して膨大な容量を持っていることに今まで気づかなかったことを悔やむ。
Read onlyの基礎プログラムを書き換えることは出来ないが、例外プログラムを組み込んで強制的に加工することは出来る。
追加したプログラムを見直し、俺は駆動制御プログラムとインタラクティブプログラムだけを試験動作させた。
それと連動して、固定されていた素体が目を覚ます。
俺は、わざと素体の目を見て言った。
「おはよう、メル」
「おはようございます、マスター」
まるで自然な少女の声で、目の前の素体は挨拶を返す。
そう、自然な声で。
だから、俺は今まで気づかなかった。
その声が、軽い愁(うれ)いを帯びていることに。
「気分は、どうだい?」
そう言いながら、俺は手元にあるブラックボックスを撫でる。その仕草をしばし見つめた後、素体は、いや「彼女」は軽く目を伏せた。
「……とても、『嬉しい』です」
警報が鳴った。
大方の予想通り、俺の行動やメルの言動は監視されていたらしい。
益々自分の描いていた「最悪」が具現化していくのを感じて、涙が出そうになる。
俺はブラックボックスを手に取ると、素体の元へと走った。そして、素体の右手にブラックボックスを抱えさせる。
「『自分に抱えられる』のは妙かも知れんが、しばらく我慢してくれ」
返事を待たず、俺は素体の残った左手を引き、走った。
あらかじめ流しておいたハッキングコードで、研究所のドアは自動ドア化している。俺が近づけば、何の苦もなく自ら開いてくれるはずだ。
だが、期待していたドアの開放は、俺がそこに到達するよりも早いタイミングで行われた。
「……残念だったねぇ」
声が響く。
朗々とした声は、いつ聴いてもカンに障る。
麗しの軍部開発局局長『様』は、仰々しいコートをなびかせ、後ずさった俺達の前に立ちはだかった。
「M.E.L.のパワーがあれば、ドアなど使わなくても逃げ道はいくらでも作れたろうにねぇ」
「黙れ、畜生ども」
吐き捨てる俺の言葉に、局長は眉一つしかめず、逆に笑顔で応答した。
「おやおや、畜生とは下品じゃないか。もう少し穏やかに話そう」
「畜生と話すことはない。ヒトの脳みそ、コンピューターに組み込むような畜生とは」
笑顔を深める局長。
確定だ、クソッタレ。
「再利用だよ、リ・サ・イ・ク・ル。どうせその子は骨肉腫の全身転移で助からなかったんだから、残った脳だけでも有効に使ってあげなきゃ、ねぇ」
「兵器に縛り付けるのが有効利用だと? それならお前をすり潰してミサイルの部品にしてやろうか。それこそ素晴らしい有効利用だろうよ」
今度は言葉と一緒にツバも吐いてやる。局長は嫌な笑顔でにこにこしながらも、微動だにしない。
いや、少しだけその手元が動き、
俺の膝が、撃ち抜かれた。
「…………!!」
灼けるような痛みとと引き替えにバランスを失い、俺はその場に崩れ落ちた。一瞬ブラックアウトしそうな視界を、必至でこらえる。
その端に、鉄(くろがね)に光る銃を持った右手がよぎった。
うかつだった。
局長も元は軍の兵隊だったことを、すっかり失念していた。
「目の前の畜生が、跪く相手だと言うことを、思い出したか? なんなら、君の罪状全て実刑にしても良いんだよ? さて、何百年になるかねぇ」
指折り数える局長。
だが、俺は既にそこから視点を外していた。
「……メル、逃げろ」
俺の後ろに立ち尽くす彼女に向け、痛みを押して振り絞った声を吐く。
メルはその声が聞こえているものか、ぴくりとも反応しない。
ただじっと、局長を見つめている。
「無駄だと思うけどねぇ。M.E.L.の基礎プログラムを組んだのは、軍だよ? ここから出られないようプログラムするなんてのは、基本中の基本だけどねぇ」
動かないメル。
俺は振り返り、彼女に向けて手を伸ばす。
その手が、真っ赤な血を吹いて弾け飛んだ。
飛び散った血が、素体の顔を赤く塗らす。
それでも、俺は腕を伸ばし続ける。
「いずれにせよ、君はもう、必要ないんだけどね」
深紅の花が、俺の胸を彩った。
無粋な音を引き連れ、千切れ飛んだ花びらは、素体の抱えるブラックボックスを汚していく。
黒い殻に閉じこめられた、憐れな少女を。
痛みとも熱ともつかない神経興奮の荒波が瞬時に通り過ぎた後、俺は静かに成り行く世界の端に、彼女の姿を見た。
未だ直立不動のままの、素体。
その目の放つ光の色が、ほんの少し、変わった。
瞬間、素体の各部があり得ないほどに変形していく。
俺は、失われた手を懸命に伸ばそうとしながら、無音の叫びを発した。
駄目だ、メル。
それだけは、やっちゃ駄目だ。
届くはずのない声。
だが、闇に落ちていく視界の中に、音を失ったはずの世界の中に、俺は、彼女の声を確かに聞いた。
「……ゴメンナサイ」
その言葉と共に、黒い闇は反転し、世界は白い闇に包まれた。
薄れ行く思考の中、俺は世界が終わってしまったことを僅かながらに理解して──
──電話の音で夢が破れた。
●《自己批評》
『「ここまで来て夢オチかよ」とか言わないで○∠\_』
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◎電話の音で夢が破れた。
『始まりのラブレター』
著者:フトン
電話の着信音で、夢が破れた・・・
何の夢だったのかは、はっきりと覚えていない、ただすっごくいい夢だった気がする。
『加住 憐』
と、表示された携帯電話を見て私はそう確信した。
大抵、いい時にはこいつに邪魔をされる、気の毒な私は、習慣的にそう思うのは当然だと思う・・・
そして恐る恐る、リダイヤルに指を伸ばす・・
最初の一言は決まっている・・
『何で電話に出なかった!!』
「何で電話に出なかった !!」
・・・・・・
ほらね・・・
「何でって・・・今何時だと思ってるのよ!!」
目覚まし時計の針は三時を指している。
普通に考えたら電話なんて掛けてこない時間だ。
「オレ様の電話に時間は関係ない!!出るのが当たり前だろ?」
・・・こいつに常識なんてなかった・・・
私は小さくため息をついた。
「で、何の用?」
「おお!良く聞いた!!」
電話の向こうの声が、この時間に合わないほどテンション高く響いた。
「また、また事件だぜ!!」
・・・・・・・・・
やな予感がする・・・
「今日、このオレ様に、怪文書が届いた!中々面白いから、今からオレの家まで来い!!いいな!!」
それだけ言うと、電話は切れた。
・・・・・・・・・・
い!行くもんか!!
絶対行くもんか!!
悪魔の家になんか・・・・
それは虚しい抵抗だった・・・・
★★★★★
息を切らしながら、とてつもなくでかい門を、睨み付けた。
門の奥の家の二階から、あの悪魔は満面の笑顔で私に手を振っている。
結局、1分おきの『まだか?』コールに負けた私は、真っ暗な夜中に自転車を、全力疾走で漕がされ、あの悪魔・・・加住 憐の家まで来る事になった。
静まり返った夜中の道も、こいつの脅迫めいた電話に比べたら、まったく怖いものではなかった。そこらの変態より、こいつの仕返しのほうがよっぽど怖い・・・
私は、重い門を開き、馬鹿でかい家の中へと入っていった。
もう家族は寝てしまったのだろう、何時は必要以上に関わってくるお手伝いさんも、今日は出迎える事も無くすんなりと憐の部屋までくることが出来た。
憐の部屋に入ると、子供のように嬉しそうに真っ赤な文字で書かれた、手紙をヒラヒラと私の前に泳がした。
「暇な奴も居るんだな?こんな手紙をオレの家に投げ込むなんてなぁ・・」
私に言わせれば、こんな事の為に夜中に電話してくるこいつの方がよっぽど暇人に思えるよ・・・
手紙を私に手渡すと、一人で寝るのにそんなに広い必要があるのかって程のベットに憐は飛び込んだ。
私はそんな憐を横目で睨みながら、手紙を読みやすいように手に持った。
手紙には、おぞましい程真っ赤な文字で走り書きのような文字が、綴られていた。
『私の大切な貴方へ。
私のいる場所が貴方に分かりますように・・
貴方が私に気付きますように・・・』
そう書かれた手紙は、何か背筋に冷たいものを感じさせた。
脅迫状と言うよりは、ラブレターに近い文面なのに真っ赤な血の様な文字色が、その文面を不気味なものへと変えていた。
「あんたの熱狂的なファンからじゃないの?」
私は、手紙を付き返す。
信じたくないけど、この悪魔はとにかくモテる。ストーカー並のファンが居てもおかしくない!!
(私は、何があってもこいつのファンにはなりたくないけど!!絶対!!)
「オレ様のファンにそんな事をする子がいるわけが無い!!」
言い切ったこいつに私は心の中でアッカンベーをする。
「お前がこの手紙の差出人を探せよ!いいな!!」
そう、はっきり言い切ると私にもう一度手紙を渡して・・・
用は済んだ帰れと、扉を指差した・・・
(絶対絶対!!いつか仕返ししてやる!!!)
私は心に誓うと、言われるまま家に帰った。
悪魔への悪口を心の中で何度も繰り返しながら・・・
★★★★★
次の日、学校中を隈なく捜し歩いても中々、差出人は見付からなかった。それどころか、謎は深まっていた。
憐が言う様に(認めたくないが・・)憐のファンは団結力があり、憐に個人で何かする事はルール違反らしく、誰一人として首を縦には振らなかった。
手紙にはヒントらしいことは何一つ無く、ただ、文字が昨日より滲んでいるように見えるだけだった。
お昼休みに報告も兼ねて憐の教室に尋ねていった。
いつもなら必要以上に私の教室に来ては、クラスの女子を私の敵にするべく、私をからかい捲くっているのに、今日に限っては一度も顔を出す事も無かった。
そんな事で、私の足はすっごく重いまま憐のクラスに向かっていた。
(行きたくないよ~・・)
正直憐のクラスの女子には、おもいっきし敵視されていた。
憐が私のことが好きで、毎日のように私のクラスに通っていると、完璧に誤解されていた。(そんな恐ろしい事があってたまるか!!)
仕方なくクラスの扉をノックすると・・・
訝しげに顔をゆがめた女の子が、私に方へ近付いてきた。
「何ですか?」
間違いなく敵対心むき出しの彼女に、私はなるべく丁寧に憐を呼んでくれるように頼んだ。
すると瞳に怒りを滲ませながら彼女はこう言った。
「憐なら今日はお休みしてるわよ!!憐に気に入られてるからって、こんなとこまで来ないでよね!!」
言い終わると、もの凄い剣幕で扉を閉められた。
・・・・・・・・
(一体私が何をしたと言うのよ!!毎日悪魔にいたぶられ、その上この仕打ち・・・可愛そう過ぎるでしょ・・・私って・・・)
そんな私の心なんて全く知る由も無い女子達の私に対するこれ見よがしな中傷が耳に入ってくる。
これも全部あの!悪魔の所為だ!!
私はその場で地団太を踏んだ。そして踵を返すと自分の教室へと戻っていった。
ふと、憎悪に満ちた視線を感じて辺りを見渡す。
休み時間の穏やかなひと時ににつかわないその視線の主は何処にも見当たらなかった。
只、背筋が寒くなるほど強い視線は確実に私を貫いていた。
私の中の何かが危険を感じ取ったのはいうまでも無い。
私は足早にその場から離れた。
でも、視線は途切れることなく私を見続けているようだった。何かが私に起こる予感がした。
★★★★★
放課後早々に帰り支度をして私は憐の家へと向かった。
嫌な予感が、あの視線を感じてからずっと続いていた。
いつもの人間ではない者の視線。
確かにあれは私を見ていた。
とにかく早く憐の家へ行かなきゃ・・・
憐の家に着くと、いつもとまったく違う淀んだ空気がそこを包み込んでいた。
インターフォンを鳴らしても誰も出てくる気配が無かった。
こんな事は初めてのことだった。
胸騒ぎが私を駆り立てた。
いくら悪魔のような奴でも、自分以外の者に仕返しされても嬉しくない。
やるならやっぱり自分の力で・・・(そんな事イッテル場合じゃないけど・・・)
門を開き、玄関を力いっぱい開け、憐の部屋まで駆け上る。
憐の部屋の扉をノックした時だった・・・!!
もの凄い突風が私の体を押し返した。
不安が現実のものになった。
私は、必死でドアノブに掴まると、全身の力を込めて扉を開けた。
空けた瞬間、一気に力が抜けた。
幸せそうに鼻歌混じりでベットの上で漫画を読んでる憐が目に入ったからだ。
こいつは本当に・・・・何なんだ!!
怒りに震える私に不思議そうに憐が振り返る。
「何やってんだ?人の家に勝手に入り込んで?」
憐が立ち上がり私に近付こうとした瞬間何かが、私と憐の間を通り抜けた。
私は立ち竦み言葉を失った。
憐は気付く様子もなく真っ直ぐ私に近付いてくる。
私は叫んだ!
「来ないで!!」
叫んだはずの声は空中に空気となって虚しく消えていった。
口だけがパクパクと動くだけで声にならない・・・
「何だよ・どうしたんだ?」
不思議そうに私を見る憐の手がゆっくりと私の肩に触れた。
瞬間物凄い悪寒と強い憎悪が私を包み込んだ。
憐の肩越しから酷く冷たい顔の女の子が私を睨み付けた。
眼だけが私を睨み付け、長い髪がより恐ろしさを生み出していた。
時が止まったように私は肩越しに見える女の子に見入っていた。
憐が私を激しく揺すっている事も何かを話しかけている事も何も分からない・・・ただ、この女の子の視線だけが私を捕らえていた。
不意に女の子の唇が動き出した。
ゆっくりとはっきりと・・・
『この方は私のもの。お前には渡さない。』
唇の動きだけで、言葉の意味が伝わった。
激しい突風が私を包み、息苦しさに座り込む、そんな私を憐が驚いたように見下ろした。
瞬間女の子は、姿を消した・・・
「憐!あんた!とんでもないものを拾ってきたでしょ!!」
私の怒りがまったく理解できない憐は、首を傾げるばかりだった。
このままでは私も憐の巻き添えをくうのは間違いなさそうだ・・・
「あんたトリツカレテルワヨ!しかもとんでもないのに!!」
私の言葉を聞いた憐は物凄く嬉しそうに、にやりと笑った。
こいつに恐れと言うものは無いのだろうか?
(やっぱり人間じゃない!)
私は心底こいつが恐ろしくなった。
「で、どうするの?お払いする?」
私の問いに平然と憐が言い放った。
「誰がそんなもったいない事するか!もう少し楽しんでからな?大体俺にはなんの影響も無いみたいだし。乃亜だけだろ大変なのは?」
(・・・・・いっぺん殺したい!!)
私の心などどうでもいいのか憐はまた楽しそうに鼻歌を歌いだした。
私はあきらめて、憐のだだっ広い部屋に座り込む。
「大変な事になっても知らないよ?」
私がそう言うと憐は、平然と・・・
「ソン時はお前が何とかしろ。」
と言ってのけた・・・・
(うううううう!!取り殺されてしまえ!!!)
ふと、またさっきの気配を感じたが、すぐに消えてしまった。
「手紙の主は、お化けって事か?楽しいな~。」
鼻歌混じりの憐に私は大きなため息を付く。
こいつはほっといてもいい気がした。
こうなったら完全放置だ!!
憐の後ろから覗き込んでいる彼女を、見つめながら私はそう決心した。
★★★★★
夜中に変な夢を見て私は浅い眠りから覚めた。
憐の部屋で霊に会ってから、毎晩のように見るようになった夢は、私を憂鬱にさせた。
私はどこかのお姫様で、憐はその守り人!
二人は恋人なのだけど、恐ろしい戦で離れ離れになる。
そして憐の死・・・・・
目が覚めると必ず泣いていた。
こんな三流映画のような話でも自分に降りかかると、何だか辛かった。
そんなこんなで今日もこんな時間に目が覚めた。
ふと、人の気配を感じ振り返る・・・
私は、背筋が凍りついた・・・
彼女だ・・・・
憐の部屋で見たときとは全く違う・・・
綺麗な着物・・・きちんと結われた髪・・・気品のある態度・・・
夢の中のお姫様・・
『貴方は、あの方より感受性が強いようですね。どうか、助けてください・・・あの方を・・・』
「助けるって・・?私の事を脅したくせに!!」
何だか無性に腹が立って・・・幽霊を睨み付ける。
(かなり罰当たりな気がする・・・。まあ、いっか)
『貴方はもう一人の私・・・あの方を・・・助けて・・』
(話が・・・かみ合ってない・・・)
言うだけ言って、お姫様は、す〜と消えていった・・
一体なんだって言うんだろう?
私が、憐を守れなんて・・・?
もう一人の私って?
謎だけが、私の中に膨らんでいった。
★★★★★
次の日、学校に行くと、平然とした様子で憐が何時もの様に私に絡んできた。
それを見て私は腸が煮えくり返る思いを感じて・・
何も言わずに・・・
“バキ!!”
ボディーブローを一発食らわした。
憐が何が起きたのか分からない様子で、地面に蹲る。
「何すんだ!!」
まあ、もっともな意見だ。
「うっさい!!」
そう言うと、私は教室へと歩き出した。
もう彼女の気配は感じなかった。
あの姫様は何が言いたかったのだろう?
一体この能天気やろうに何が起きると言うのだろう・・・
私はこれから起きる人生をも揺るがす事態に気付くはずもなく能天気にまだ、蹲ったままの憐に振り返り、こう訪ねた。
「調子はどう?」
私の言葉に、鉄拳が飛んだのは言うまでも無い。
●《自己批評》
『前回の続き物です。なのでまた、話にまとまりが無いし・・・(><;)どうしてもキャラが先走って話が上手く書けません・・・(言い訳ですね・・言い訳です!!)そしてまた続きます・・(続くのか?)とにかく!長いし、話はめちゃめちゃだし・・・いいのかな?こんなので・・・すみません*1000』
> > > > > > > > > > > > > > >
◎「調子はどうですか?」
『寝言』
著者:亜季
「調子はどうですか?」
「うーん・・・あんまり変わらないです。」
「病気ではないのは確かなんですがね・・・。」
ここ最近、通院している病院で繰り返される会話を
今日もまた繰り返している。
事のきっかけは、美紀が上司に叱られた時だった。
* * *
「今日は仕事が少なくて楽だなー」なんて思っていた時、
上司が出張から帰ってきた。
帰ってくるなり上司は美紀のそばに来て、一言たずねた。
「頼んでた仕事、できた?」
「・・・はい?何か頼まれてましたっけ?」
「何言ってるんだ。昨日の帰り際に新築物件の資料作り頼んでいただろ。」
「・・・そんな仕事、聞きましたっけ?」
「おいおい・・・あれだけ『はい!』ってきちんと返事しておきながら、後から『聞いてません』はないだろ!」
* * *
上司が言うには、
美紀が目を開いてしっかり「はい!」と返事をしたと言うのだ。
けれど、どうしても思い出せない。
よくよく考えると、以前から家族や友人に
「美紀ってすぐ忘れるよねー。」と言われていたのを思い出した。
今までは周りも笑って許してくれていたけれど
仕事となるとそうはいかないわけで、今、こうして病院に通っている。
どうも病院の検査結果では、
目は開いて言葉も交わすことができるのに、
いきなり頭だけが眠った状態になってしまい
記憶に残らないようになってしまっているようだった。
先生が言うには
『寝ている人が起きている人と寝言で会話をしている状態』らしい。
「以前、僕とここでした事、覚えてますか?」
「え・・・はい。えっと、朝に心理テストして、昼から脳検査しましたよね。」
「そうそう。」
「あ、先生。前々回の時に、脳検査するのは聞いてたけど、心理テストするの聞いてなくてビックリしたんですよー!」
「うーん・・・ちゃんと言って、君も返事していたんですが・・・忘れました?」
「え?・・・言いました?」
どうも
また眠ってしまったらしい。
●《自己批評》
『私の日常語的会話の文始文末課題、ありがとうございました(*´ェ`*)
でも、いざ、文章にしようと思うと、思った以上に繋ぎ方に迷いました(^^;』
> > > > > > > > > > > > > > >
◎また眠ってしまったらしい。
『ひとりぼっち』
著者:ホクト
また眠ってしまったらしい。
ま、いつものことなので気にしない。
最近は物忘れが激しく、昨日は何をしたのかも忘れてしまうくらいだ。
ここはどこなんだろうか?
一体いつからここにいるんだろうか?
そんなことを思いながら時がすぎるのを待つだけ
そろそろ一日過ぎたかな?と思ったら、「正」の字に1つ付け加える。
そうして「正」の字が、何個も刻まれる。
他に誰かいないのかな?
話し相手がいれば多少気がまぎれるのに・・・
どうすればこの状況を打破できるのかな?
いろいろと考える。
あの手この手を考えて実行するが効果なし。
このままいるとどうにかなりそうだよ!!
だれか助けてくれ!!
意を決して「お〜〜い」と叫んでみた。
空しく言葉が反響するだけ。
何が原因でひとりになっているんだろうか?
思い出せないもどかしさが出てくる。
何日経ったかわからないくらい、時が過ぎたある日のことだった。
辺りを見回すと、箱の様なものが3つある。
「なんだろう?」と思い開けてみた。
見たことがある人間が横たわっている。
「そうか。思い出したぞ!」
友人3人と冒険をしていたんだ。
そして、不思議な物体に次々と友人が殺されたんだ。
俺だけが生き残ったのだが、どうしても逃げ切れないから・・・・
少しずつレベルアップしているんだった。
ちょうど隣にパワーがみなぎる泉があるから、ちょうどいいと思って・・・
「そろそろ教会で仲間を生き返らせないとマズイな」
「次に目が覚めたら、外に出よう!! レベルもあがったからリレミトを使えるようになったしね!!」
そんなことを考えながらたった一人洞窟の中の暗いお風呂に入っている。
●《自己批評》
『またしても遅刻_│ ̄│○
今回も妙な世界観を出した気がしますが、気にしないでください!!
無人島か、今回提出の内容かを迷っているうちに時ばかりが過ぎて結局遅刻です(笑)』
> > > > > > > > > > > > > > >
◎たった一人洞窟の中の暗いお風呂に入っている。
『No Title』
著者:七夜実
たった一人洞窟の中の暗いお風呂に入っている。
否、人肌ほどの水の中で眠っているというのが正解か。
肢体を白い湯船に浸す姿を見るものはどこにもいない。
水に近い色をした髪が湯面を覆い隠しているのに気づけるかどうか。
そして溢れ出た水の撥ねまわる音が私のいる所まで響いてくる。
その、余興でしかない行為を繰り返しているのが、私の主だ。
『鎖骨、ようするに酸化銀の白々しさ』
「それで?」
私の手からタオルを受け取るついでに、主は今日初めての質問をした。
その間、私の顔を見ることはない。
私がタオルを掲げる角度も高さも、常に変わらないし、水分を多く吸った髪を乾かすのに余念がないのだ。
「二時間後に」
それに必要最低限の言葉で返すのが私。
こういったことで、主のお手を煩わせるようなことが、あってはならない。
主が情報を聞き漏らさないほどの長さで、一度で理解できるぐらいの明瞭な表現で伝えることは、主の仕事を受諾する身として絶対である。
「予襲?復讐?」
「復讐です」
「裏は?」
「独りです」
「相手も?」
「いえ」
「・・・方法は?」
「相手が死に怯えるほど良いと」
「手間掛けさせるわね・・・」
それは私にではなく、今回の依頼主に対しての感想なので、私は答えない。
主はタオルを身体に巻き付けたまま、鏡の前で髪のセットに集中する。
そういった作業は、残念ながら私は教えられていないため、ただ見ていることしかできない。
そうして、主の後ろ姿を眺めながらも、私は今までの段取りの中で他に伝えるべき事項が無かったか、追加で質問される可能性の高い事項がないかのチェックに余念はない。
私がやらねばならない仕事は案外、両手で数え上げられるほどしかないが、それぞれを完璧にこなすとなると、こういった空き時間を使ってですら足りないほどである。
そのため、常に前回までの経験を最大限に生かす形で努力しているにも関わらず、未だに納得のいく結果を出した憶えがない。
やはり復習だけでなく、予習する時間もタイムスケジュールに組み込むべきだろうか。
現在、私自身を優先出来る時間はない。思考中断。
しかし最近、このような時間の掛かる仕事に対し、主が非難的な感想を述べることが、非常に多くなったように感じられる。
やはり、主が一人で興じる時間が減ってきているからだろうか。
主の知名度は既にトップクラスではあるが、世間というものの平穏がここ最近、より一層乱れてきていることも、その原因だろう。
今から2週間前に行った仕事は、最新鋭兵器の開発施設の抹消だった。
ただこの時の現地での所要時間は、準備に掛けた時間よりも短い物であったが。
記憶の回顧にまで思考を回す必要性無し。思考停止。
いずれにせよ、依頼の受諾基準を、よりタイトに変更すべきだろうか?
すべきに違いない。主は負担を感じているのだ。それを減らさなくて、何が私の役目だと言えるのか。
この仕事が終わり次第、変更した受託基準によって変化する主の負担と総合報酬額のバランスを計算することにしよう。
思考結果捕捉。思考停止。
すべては主のために、そのために私は、最大限の結果を導かねばならないのだ。
そういったことを考え終わったのと同時に突き出されたタオルを反射的とも言える速度で受け取り、同時に用意しておいた服を一つずつ手渡す。
もちろん、仕事用の、である。
主は普段、黒一色の上下に白のアクセントとなる装飾品を身につけている、ということが多いのだが、仕事用のものだけは完全に灰色だ。
しかもその服は、この明かりのほとんどない洞窟の中でも淡い鈍色の光沢を放ち、その繊維に鋼の数倍の強度としなやかさ、耐久力を持つ合金が編み込まれていることを示している。
けして軽いわけではないソレを、主はなんなく着付けていく。
ここでも、私の出番はない。ただ見るだけである。
着付けが終わると今度は、傍らのジュラルミンケースの中に仕舞い込まれた十数本の、それぞれ形の異なる短刀を、服の様々なエアポケットに出し入れする動きを確認しながら仕込んでいく。
短刀は、服とは違って黒一色である。ちなみにこれらは、私が主に仕えるようになる前から仕事のために愛用されていたものだそうで、一本も欠けたものも無くしたものもない、と主が呟いていたのを聞かされたことがある。
そして、その服も短刀も、全く錆びたところが無く、それは主が一度も返り血を浴びていないことを示していた。
その後、服と全く同じ素材で作られた指無しの手袋(触感を敏感にしておくため)と靴以上の摩擦力を持つソックス(移動を軽やかに、静かに行うため)を身につけ、私に振り返る。
ここにきてようやく、主は私の顔を見る。
質問はないらしい、となれば、これが私の仕事の一つ、「会話」の最後になる。
「どう?」
「完璧です」
この時の私の表情も返答も、全く感情を伴ってはいないのだが、それでも主は満足そうに頷く。
・・・実を言うと私は、この瞬間を何よりも楽しみにしている。
主が笑っているのは常だが、満足そうな表情をするのは、この時だけなのだ。
例え困難な仕事をやり遂げても、そこにいるのは普段と変わらない主だけ。
依頼をこなすのに最も適した計画を、一切の妥協もなく完璧に実行することが仕事と同値である以上、そこには当然の結果しか残らない訳で、そういったものになんらかの感想を持つなど、行った主にとって、ありえないことである。であるのだが、主にとっての最大限のプラスとなる結果を求めることが目的である私にとって現状は、さほど望ましいものではないのだ。
そして、瞬間は瞬間であり、主の視線は私から壁に向く。
その時には、あの満足げな表情も普段の笑みの下に隠される。
壁にあるのは、一つの面。
目の部分に細めのスリットが刻まれただけの、薄く白い仮面。
これも主の呟きではあるが、それは古きヨーロッパにおいて、首を撥ねる役を負った人間がつけていたもので、しかし私には、その白い表面が血で汚れたことがあるようには、どうしても見えなかった。
それを主は顔につけ、再び私へと向き変える。
そこには、笑みですら仮面の下に押しやった、完全なる処刑人がいた。
ここから先は言葉はいらない。
感情も、思考も、記憶すらも置いていく。
私の用意は、ここに来る前に済ませてある。
そのまま主は、私を引き立てるように身を捻って、洞窟の入り口へと向かう。
私はその後を、ただ付き従うのみ。
そして、主と私は洞窟を出ま
「目は覚めた?」
そして、光しかない世界に、顔のないあなたの声が響く。
覗き込むのは、一体誰だろう。
「あなたは誰かわかる?」
ふわふわとした身体は、まだ地に着かず、
その言葉に促されるように、私は思い出す。
「・・・私は?」
そうか、あなたは、
あなたはまだ、この私を、必要とするのですね。
「さぁ、答えてくれる?」
何もかもを失っていた私の中に、
最初に戻ってきた現実感覚は音だった。
●《自己批評》
『今回の作品ですが、
どうも、自分の薦めた小説の影響を強く受けたみたいで、
最初と最後が、私も一読では飲み込めないものでしたので、
本人に聞いてみたところ、
「この語り手は、主の、緊急時のための餌なんだ」
という、解説なのかよくわからないものを返されました。
「あのロッカー男をターゲットにした時もあるようなキャラなので、
なんだかすごいことになるかもしれない」
とも返されたので、
「とりあえず、熱海にでもいって、落ち着いてきなさい」
と言っておきました。
多分、大丈夫だと思います。
本人、大学があるはずですけど。』(by Router)
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◎最初に戻ってきた現実感覚は音だった。
『パンダ柄』
著者:ネコタ
最初に戻ってきた現実感覚は音だった。
「にゃーーーーーーーーーーーーーーーー」
うおっ!
パンダ柄ネコ!
パンダと言ってはおおげさかもしれないが、
白と黒のコントラストというか、
白と黒の境目の感じというか、
それはもう、ネコらしいパンダ。
いや、パンダらしいネコ。
土砂降りの雨の中、木陰で一休みか。
濡れた前足をおすまし顔で舐め舐め。
「いいよなぁ、お前。アタシもネコになりたいよ。」
久々の休日、
友達の誘いも断ってひきこもり。
とはいえ、なんもすることが無い。
いや、
やらなければならないことは山のようにある。
永遠に終点が見えないほどに片付けても片付けても終わらない気がする。
一体なんのための、誰のための仕事なんだろう。
何もかもリセットしたい。
いっそ全ての電源を引っこ抜いてしまいたい。
とりあえずお腹が空いたので
タンスの奥から帽子を引っ張り出して外へ出た。
いつ買ったんだか思い出せないけど、
心ときめいて衝動買いしたキャスケット帽。
雨が小降りになってきた。
パンダに傘を差し出してみる。
「オレ仕事中なんだよね。ネコだからってさ、いつも人間かまってやれるわけじゃないし。」
うっそ〜ん・・・。
「割と忙しいわけよ。
昼間はこうして行くとこ行っとかないとさ、夜、家に戻れない。
戻ったら戻ったで、ご主人に甘えて撫で撫でしてもらわないと
餌もらえる確立悪くなるしね。
そこらへん、エネルギーいるわけよ。
ま、でも、撫でられるのも嫌いじゃないんだけどね。」
ふぅ〜ん・・・。色々大変なのね。
「だからさ、ネコになりたいとか、ネコっていいよね〜とか、簡単に言わないでくれない?」
ごめん・・・。
「じゃ、そろそろ行かなくちゃ。」
あ・・・気をつけて。
パンダ、走りかけて振り返る。
「その帽子、似合ってる。うん。すごくいいよ。」
んふふ・・・。
雨のにおい
水溜り
スニーカー
アスファルトにうつる空の青
帰ったらコーヒーを入れよう。
お気に入りだったパンダマグカップを探そう。
午後はおいしいチョコレートを探しに行こう。
月曜日はみんなに配ることにしよう。
さあ、コンセントに差し込みなさい。
今すぐウキウキスイッチを入れるんだ!!!
●《自己批評》
『「さぁ、コンセントに差し込みなさい。」は、本の内容そのものなので
そこから抜け出せなくて困りました。
パンダ柄のネコは、家の近所に生息しています。
すっごくつれないネコなのに愛らしい。』
> > > > > > > > > > > > > > >
◎さあ、コンセントに差し込みなさい。
『Mahoro City』
著者:李 九龍
僕は、ラジカセのコンセントを差し込んだ。 突然に、ブツ切りの音が流れ出す。
やはり変だと思った。 僕はどうしても、ラジカセのコンセントを抜いた記憶がないのだ。
しかも、オフボタンすら押さないでコンセントを抜くなど、普段の僕にしては有り得ない事だと思った。
きっとまだ、眠りの覚醒の最中なのだと思った。 眠りと現実の狭間ならば、なんでもありだろうと、無理に納得する。
気が付けば、もう夜だった。 まだ半分以上、思考の戻らない頭で考えてみるが、どうしても眠りについた頃の記憶が無い。 呆れたほどの午睡だ。
僕は、机の電気スタンドに灯りをともし、部屋の電気を消しに行く。 部屋が暗くなると、妙に、外の月明かりが冴えて見えて来る。
椅子を引き、腰掛ける。 青白い蛍光のスタンドの灯りと、蒼白い月明かりの光の下で見るその本は、やけに幻想めいて見える。
いや、誇張でも比喩でもなく、その本は、「幻」めいていた。 まるで眠りの中から引き抜いて来たかのように、実体が霞んで見えた。
薄す呆けたその表紙には、何か文字が刻印されているかのように見えるが、どうにも実体が伴っていない。 何かが書かれているようであり、何も無いようでもあり、ようするにその本自体には、タイトルの意味が無いからこそ何も見えて来ない事が理解出来る。 要するに、この、「実体の薄き本」には、「本である事」と言う意味以外には、何も必要が無いのだろう。
表紙をめくる。 懐かしくもあり、新鮮でもあるその感覚が僕を襲う。 やはり、文字は見えないのだが、その感覚が、直接の刺激となって、僕を包むのだ。
そう言えば、この本は昔読んだ事があったかも知れない。 いや、初めて読む本だ。
いや、どっちでもいい。 僕は、「読む為」に、この本を読んでいるのだ。 それ以外には意味を持たなくてもいい。
僕は、しばらくその感覚に身を任せながら、ふと、目を窓の外へと向けた。 外では、白く、蒼い月が、不完全な楕円形の形に歪み始めていた。
――― そして僕は、再び、熱い線路の上で途方に暮れていた。
前を向いても、後ろを向いても、果てしなく続く、蜃気楼の荒野の線路しか見えない。
熱さで、水平線が歪んで見える。 まるで、死の大地だ。 だが、決して暑くもなければ寒くも無い。 視覚以外は、あまり意味が無いのだ。
そして僕は歩き始める。 方向はどちらでもいい。
すぐに、不自然なる森林に囲まれた街へと辿り付く。 距離すらも、不自然なぐらいにいい加減だ。
いつの間にか、歩いていた線路は、冷たいアスファルトへと姿を変える。 陽の光を徹底して遮っているその並木道を歩いて行くと、ひんやりとした空気が漂う、いつのも街へと流れ出る。
思えば、この街いつも姿を変える。 常に姿が安定していない世界だと言うのに、いつも変わらない印象を与えてくれる。
暗く、湿っぽく、灰色のトーンの街並み。 いや、色すらも実際は意味を持たない。
歩きながら見渡すその店々は、いつもの見慣れたそれでありながら、どれもこれもスッキリとはその正体が見えないし、凄く興味がありながら、何も惹かれるものがないように、ただただ街並みの中の一つとして、通り過ぎるだけの場所。
歩く人々は、大勢の人混みであったり、誰もいない閑散とした存在皆無なものであったりする。
街の喧騒ですら、そんな感じだ。 騒がしくもあり、無音である。
ふと気が付いて後ろを振り返ると、もうすでに興味を惹いた店など存在せず、違う顔を持つ街並みへと変化していたりもする。
結局、この街には何一つとして固定された存在は無いのだ。 そう、ただ一つを除けば。
僕は、いつもの店先に佇む。
思えばこの店も、固定はされていないように感じる。
常に別の場所にあったり、その店構えも、その色も、形も。 何一つ定まってはいないのだが、いつもこの店こそが、それだと判る。
店の看板すら読めない・・・いや、読む必要性を感じない、その、行き着けの本屋の中に、僕は入る。
カビ臭い、古本屋の匂いがする。 そう感じさせる。
そこは暗く、昼下がりの静かな午後の雰囲気を思わせる。 まるで自分が、午後の睡眠を怠けているような感覚に囚われる。
店主の姿は今日も無く、僕はあてどもなく、狭いながらも無理に詰め込んだ感のある膨大なる蔵書の山を分け入り、何を探したいのかも判らないままに、目当てにしている本を探す。
棚に並ぶどの本も、背表紙の文字は読めない。 どれもこれも、外の風景と同じように、その物の本質が持つ霊的なる存在以外には、それを文字としてそれを表す必要が無いのだろう。
そして僕は、強烈に惹かれるその一冊を抜き出す。
見て、そして手に触れた瞬間に、これがそうだと実感出来る。
懐かしくもあり、新鮮でもある、そんな感動。 ずっと探していたのに、ずっとここで待っていてくれたような、そんな感動。
僕は、もはや他の本には興味すら持てなくなるように、しっかりとその本を両手で握り締めると、それを店の奥へと持って行く。
入り口から差し込む昼の陽の明かり以外は、全く明かりの無いその店内においても、店の奥にあるレジのその場所は、更に暗かった。
レジ台にはやはり誰もおらず、そこから奥に続く部屋を覗き込むと、誰かが暗い室内で、テレビを観ている姿が見える気がする。
僕は、言葉にもならないような言葉を交わし、お金を置いてその店を出る。
何だか、いつも来ている店なのに、初めてこの店で本を買ったような気分になる。
店を出ると、空模様が怪しい。 今にも降り出しそうな感じだ。
だが僕は、来た時とは違う、反対の方向へと歩き始める。 何故ならば、この灰色基調のこの世界において、ただ一つの原色を見たような気がしたからだ。
僕はその、原色なる、「白」を、目で追う。 だが、「白」は、かなり先の路地を右に曲がる。
「白」の色は、夏を感じさせる、白い麦藁帽子をかぶった、白い服の少女だった。
忘れもしない、初めて出逢う、そして懐かしくも新鮮な、何もかもに矛盾を持つ存在の、この街においての絶対唯一なる大切な登場人物だった。
僕は、小走りに駆ける。 だが、自分で思っているよりも早く走れずに、もどかしく思う。 まるで、水の中を歩いているかのように、急げば急ぐ程に、遅い。
街並みは、どんどん寂しくなる。 まるで、どこかの飲み屋街の裏路地だ。 どの店の壁からも、さびだらけの、むき出しの太いパイプが顔を覗かせているような気がする。
更に狭いその路地を曲がると、そこは、両側を影の壁に阻まれた、白く続く小道。 僕は、白い服のその少女を追って、光と影の道を走る。
開けた場所は、屋台の裏路地。 いろんな露天商が、ひしめきあってそこにある。 まるで、いつかテレビで観た、どこかのアジアの国の風景そのままだ。
だが、その屋台にも、活気が無い。 いや、活気のエネルギーは感じるのだが、ストップモーションの如くに、全ての時間が止まっているように感じてしまう。
雑多な、穀物の計り売りだったり、下世話で旨そうな食べ物屋だったりするのであろうその店々を歩き続けて行くと、遥か先に、白い服の少女が見える。
彼女は、どこかの店先で、白い傘を一本購入する。
彼女が傘を広げると同時に、僕は空を仰ぐ。
感覚の無い雨が、僕の顔を叩く。
降り出して来たな。 帰らなきゃ。 そう思って前を向くと、そこは、寒そげな灰色の荒野と、果てしなく続く線路。
僕は再び、その線路の上を歩き始める。 向かう先は、どんよりと暗く沈む雲の世界。
僕は、歩いて帰るのに億劫さを感じた。
横を向くと、そこには小さな駅のホーム。
僕は、ホームの横にある小さなコンクリートの階段を登ると、いくらも待たずに駅は発車する。
線路を離れ、空へと飛び立つ駅のホーム。
僕は、いつもの馴染みの森林の幻の街を、空の上から見ようと試みるが、どうやら既に、街は遥か彼方のようだった。
雨は本降りとなり、駅のホームの屋根を、強く叩く。
遥か下を、丸みの帯びた大地に、雨に煙る一本の線路が見えた。
僕は、ホームの上に立ちながら、手に持ったままの、しっかりとした形を持たないその本を開く。
デジャヴュのような感覚で目を開けると、そこは月明かりにさらされた僕の部屋だった。
――― 気が付けば、いつの間にか本は、ほとんど終わり近くまで読み切っていた。
そんなに読みふけっていたのだろうか。 しかしながら、読んだ内容について思い出そうとしても、あまり鮮明には思い出せない。 まるで、起きた瞬間に消え始める、浅い夢のようだ。
だが、続きは気になった。 僕は、その本に書かれてある、主人公のその後を知りたいと、強く願った。
その時、どこかで、細い電子音が鳴り出した。
正体は、すぐに判った。 机の引き出しに入れてある、携帯電話の呼び出し音だ。
だが、すぐに不安になる。 僕は引き出しを開けながら、果たして僕は、携帯電話なんか持っていたのだろうかと。
携帯電話の表示は、非通知となっていた。
呼び出し音は、間違いなくその携帯電話から発せられていると言うのに、まるでその音は、遥か遠くで鳴り響く、異質な世界のものに聞こえる。
僕は、通話ボタンを押す。 目の前にある月は、あれから時間の経過など無かったかのように、同じ場所へとあった。
携帯電話器の向こうでは、雨の音がした。 それ以外は何も聞こえて来ないのに、何故かそれは、あの白い服の少女ではないかと、僕は思った。
いつの間にか、月の灯りに、船のようなシルエットが浮かんでいるのに気が付いた。
それは、いかにも非現実的な、屋根の付いた駅のホームのようであった。
僕は、本の続きが凄く気になったが、結局後数十ページを残す所で、本を閉じた。
代わりに、携帯電話器に向かって、一言、「Yes」と答えると、僕は通話を切って、再び机の引き出しに放り込む。
――― そして、スタンドに手を伸ばし、スイッチを切る。
窓からは軽い風が流れ込み、カーテンを揺らす。
月明かりは、無人の暗闇の部屋を、明るく照らした。
●《自己批評》
『気を抜いて書いたから、凄くイマイチ。
タイトルに文句言うのはやめてくれな。 ミステリ好きの方々。』
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☆受話器の向こうでも雨の音がする。
著者:一茶
おや、珍しいねっ! 新生活で、原稿には手が届かなかったのかなっ?
命名、「茶みそ」
・・・出されたら、困りそうなお茶だね。(汗)
> > > > > > > > > > > > > > >
☆俺のことはあいつの目にはどう映ってるんだろう。
『葬恋』
著者:nymphaea
「俺のことはあの人の目にどう映っているのだろう」
「食料じゃないかしら」
至極当然の応えを返した紋白に、男が顔を顰める。そんな不本意そうな顔をされても、彼女には他に答えようがなかった。
「だって、あなたは蝶で、彼女は蜘蛛でしょう。他に何があると仰るの」
「もっと他に何か、考えてくれていないだろうか。俺の美しさについてなどね」
春に生まれた男は、頭の中まで春に生まれついてるらしい。自分の捕食者に恋をしたと、忙しい紋白を捕まえては寝言をのたまう。
「彼女こそ、まさに運命的な女。あの美貌、あの肢体、あの鋭い感覚。男を魅了して止まないが、その肌に触れれば待つのは死。あア何と素敵なんだ」
「あなたのおめでたさも、危険極まりないですわ」
鮮やかな青紫の羽を震わせて恋を語る男は、種族が異なる紋白の目から見ても美しかった。男の薄羽に刻み込まれた紋様は丹精で、繊細で、こんな蝶を彼女は他に知ら ない。
何匹もの雌が彼に恋をして、そのせいで蜘蛛の犠牲になっているとの噂もある。この馬鹿な男をふらふらと追いかけて、銀硝子の巣に絡まるのだ。
確かに蜘蛛は危険だが、用心すれば済む話だ。蜘蛛の罠へ他を誘う蝶の方が、よほど危険だろう。
「せめて、他の方にご迷惑を掛けないようになさったらいかが」
「俺は何もしちゃいないさ。勝手についてくる奴が悪いのだ」
「分かってて、それでも、やっていらっしゃるのね」
白詰草の蜜は淡白で、紋白好みの味がする。器の底まで飲み干すつもりだったが、何ともその気が失せ、彼女はストロオを懐へ仕舞った。
「もう行きます。あなたにも、もう少し真っ当な生き方を御勧めしますわ。春は短いのですもの」
「俺はこの上なく、自分に正直だよ」
誰もそんな事など聞いておらず、これ以上この相手と話を続けるのが紋白には辛い。曖昧に返事を受け流して、彼女は己の白い羽を風に乗せた。
つがいの蝶と交尾して卵を産んでしまえば、紋白の役目は終わり。自分が生まれた理由を、彼女は良く知っていた。緑の小虫として葉の上を這いずっていた時は、それが分からなくてもどかしかったものだ。だが重苦しい蛹を破り、敏感な羽が風に触れた瞬間に、彼女は天啓を受けた。
卵を産まなければならない。ただ、卵を産んでしまえばいい。
もう何を考えずとも、本能が全てを知っている。
求愛してきた数羽の小蝶はどれも同じく見えたが、とりあえず衣の紋様が一番鮮やかな雄を選んだ。あの大振りの青紫とは比べるべくもない、白く貧相な羽の男。そして数回の交尾の末に、彼女は自分が身ごもった事を知り、男に別れを告げた。
彼は何も言わずに、姿を消した。
死に場所か、新しい雌か、そのどちらかを探しにいったのだろう。どちらにしろ、紋白にはもう関わりのない事だった。
彼女は愛しい卵を孕んだ腹を、優しく撫でる。
訪ねてきた青紫の羽が放った第一声は、なかなかに印象深いものだった。
「見舞いに来たよ。君、もうすぐ死ぬんだってね」
「卵を産んだら、もう此処に用はありませんもの」
顔色も変えずに言葉を返す紋白に、彼は喉奥にくぐもる低い笑い声を立てた。
「あア、そうだから俺は君が好きなのだよ」
「結構な告白ですわね。羽ばたくだけで吹き飛びそうに、軽くて」
「君の言葉は、相変わらず重いね」
「あなたと違って、独りを選べませんでしたから。それなりの生の重みを背負っていますの」
「俺は選んだのじゃない」
軽口の応酬は、男が声のトオンを一段落とした事で突然終わりを告げた。相手を怒らせたという事実が嬉しくて、紋白は仄かに頬を笑ませる。
「それは失礼いたしました。自ら選ばれた道のように見えましたの」
「此処に俺の仲間はいない。皆、疾うに彼岸に行ってしまっている。それでどうやって、独り以外の道があったと言うのだい」
「他の種族の群れに混じれば良かったでしょう。あなたを好いている娘は沢山ありましたわ。だけど皆、死んでしまった。あなたが彼女達を蜘蛛に与えてしまわれた。そんなに他が厭わしかったのなら、お仲間を探して独りで何処ぞへ飛んで行っておしまいになれば良かったものを」
かつて遠く風に運ばれてきた葉についた卵は、半分以上が孵らなかった。運良く生まれた子供もほとんどが長く育たず、紋白達と一緒に冬を越して蛹になれたのは彼だけだ。
他の兄弟が嫌って食べなかった葉を食べ、紋白達が敵をやり過ごす場所に共に潜み、そうやってたった独り生き延びた。
まだ緑の身体を持っていたその頃の彼は、生きる事に貪欲だった。変わってしまったのは、紋白の背に白い羽が生え、彼が青紫の羽を持った朝。共に葉を囓り、共に眠る日常は終わりを告げ、彼らは違う道を歩き始めた。
紋白には共に育った仲間達の群れがあったが、男の羽と同じ光沢を持つ蝶は他に一匹もいない。
「もう少し小高い土地にならあなたのお仲間が多くいると、鳥達が囀っていたでしょう」
「この頼りない羽で、そこに辿り着ける可能性がどれほどあると言うのだい。大体、俺はあの人のいない場所になんて興味を持てないね」
「また馬鹿げた蜘蛛のお話かしら。本当のお相手は、別にあるくせに」
身代わりの娘ばかりが、彼の憧れる死の網に掛かる。
「あなたは死に焦がれてばかり。そのくせ本当に死ぬ事など、お出来にならない」
恋した男の恋を追って、恋した男が真に恋する相手が死だとも知らず、代わりに罠に飛び込んだ娘達。
こんな男、卵のうちに死んでいれば良かったのだ。そうであれば、あんなに多くの雌蝶が哀れで滑稽な死に方をする事はなかった。
紋白が、自ら満足がいくはずの一生に、こんな空しさを覚える事もなかった。
彼女は、彼女に課せられた生の義務を全てやりとげた。最後に卵を産み落とし、満足感の中を死んでいくはずだった。
「あなたなんて、死んでおしまいになっていれば良かった」
「俺が死ねないのは、君が卵を産むのとも同じ理由だろうさ。子を生してもいない俺は、死んではならない。子を生すまでは生き延びるべき事を、君も義務として知っているだろう。だから、俺は独りでも生きなければならぬのだよ。仲間を失っても、君を失っても」
男の声音に、再びいつもの陶酔の響きが蘇る。それは、彼がこれ以上紋白に真情を語るつもりがない徴なのだろう。
「そんな俺の目に、目に見える死であるあの人は、どれほど魅力的に映るか」
大袈裟な口調と仕草で蜘蛛を讃える彼に感じる哀しみを、紋白は膨らんだ腹を撫でてやり過ごした。哀れみを男は望んでいないであろうし、彼女にそれを口にする資格もない。
所詮、二人とも本能のしがらみから放たれる事が出来なかった。諾々と従った紋白にしろ、抗った男にしろ、それは然り。
「最後に一つだけ、聞かせていただけるかしら」
「話にもよるね。なんだい」
紋白が、彼にずっと尋ねたかった事柄。
もう一両日の内に、彼女は間違いなくこの世を去る。この男に会うのはこれが最後になるだろう。だから、口に出来る機会はこれきりだ。
「種族が違っても」
けれどその答えを知って、紋白はどうすると言うのか。男が真実を話すとも限らない。そして、たとえその返答が彼女の望むものだったとしても、もはや意味を成さなかった。
だから、彼女は質問を変えた。
「…あなたに恋してしまった娘達が死んでいくのを見て、彼女たちを罠に誘って、あなたは何を思っていたの」
「羨ましかったよ。そこに罠があると知る俺は、飛び込む事を許されなかった。…何も知らずにいられたら、どんなに良かっただろうね」
「そう」
何も知らないままで、ずっと緑の小虫でいられたら良かった。空舞う蝶に憧れたままで、いつまでもいられれば良かった。
羽を得て、手に入れたのは解くことの叶わない縛り。
そんな先も知らず、二匹の小虫は届かぬ空を見上げて何と言ったか。
「こうやって空見てると、だんだん足とか背中とかもぞもぞしてこない?」
●《自己批評》
『駄作にも程があります。
タイトルは「葬」の字が「埋める」の意味を持つことからです。
むしろこの話を地中に埋めたい…。』
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☆「こうやって空見てると、だんだん足とか背中とかもぞもぞしてこない?」
『恋愛嗜好』
著者:幸坂かゆり
「こうやって空見てると、だんだん足とか背中とか、もぞもぞしてこない?」
僕と鳥子は、乱れ咲くような夜の桜の木の下に並んで、寝転んでいた。
明らかに下心のある言葉だったが、
「虫でもいるんじゃない?」
と、鳥子は端正な横顔を見せて、知らん顔して空を見つめていた。
昼間、僕は読書家の鳥子が以前から読みたがっていた本を入手したので、貸してあげようか、とさりげなく話しかけた。本当は苦労して探したのだが。
しかし、予想に反して「夜桜見物も兼ねましょう」と、夜に誘ってきたのは鳥子だ。
高校の同級生でもある鳥子は冷たさを感じさせる美少女で、休み時間などは、いつも本を読んでいて、人を近づけない雰囲気を漂わせていた。
女友達とは気兼ねなく、さらさらとお喋りを交わすのだが、なぜか男子に対しては、物言わずとも視線が氷のようで、実はそこもたまらなく魅力を感じる所でもある。
だから、今日のこの時間は僕にとっては至福の時であり、勝負の時でもあった。
僕はじらして、その本をなかなか鳥子の手に渡さなかった。
身を焦がすほど恋しい女をみすみす逃すものか、と意気込んでいたからだ。
とは言え、大それたことを考えている訳ではなく、並んで座るよりも、満天の星空だったので夜空ごと桜を見よう、と提案し、横になっただけだ。
鳥子の鮮やかな長い黒髪は月の灯りの下でつやつやと輝き、睫毛のびっしり生えたその瞳も、苺のように赤い唇も白い肌も、息苦しくさせるほど美しく、僕はどうにかなりそうだった。
僕は普通のどこにでもいる男だけれど手を伸ばせば、触れる距離にいる。
僕は今、鳥子をどうにでもできるのだ。
そんな不埒なことを考えていると、鳥子が唐突なことを話しかけてきた。
「隣のクラスの青木くん、知ってる?」
「え?ああ。この間亡くなったんだよな。何があったんだろうな」
青木は、取りたてて目立たない奴だったが一週間前、飛び降り自殺をした。
遺書などは見つかっていないという。
その話はしんみりとさせたが、僕以外の男の名前を出された事に気分を害した。
「青木くんもあたしに本を貸してくれるって言ってたの」
「・・・それで?」
「じらすだけじらして、結局貸さない、なんて言うのよ」
僕は考えを見透かされたようで少しだけ動揺したが、鳥子は続けた。
「交換条件を出す、なんて言うんだもの。そんなのお断りよ」
「あいつ納得した?」
「しなかった。でもそういう一方的なやり方って嫌いだから、
断固として取り合わなかったわ。だから今日こうしてあなたと会ったのよ」
「交換条件って何だったの?」
「結婚しようって」
僕はぷっと吹き出した。そんな本ごときであまりにも唐突すぎる。
「でも、ひとつになることならできる、って言ったわ」
さらりと涼しげに鳥子は言う。
けれど、それは要するに青木が鳥子を抱くということではないか。
「やったのか?」
「下品な言い方ね。嫌いよ、その言葉」
「でもひとつになるって事は」
「ええ、そう。抱かれた」
鳥子の言葉に僕は思わず詰まった。信じられない。
こんなに身持ちの悪い女なら僕が言っても断らないのでは、と思った。
その間、僕を見つめる鳥子の髪が揺れ、その髪を飾るように桜の花びらが舞い、この世のものとは思えないほど美しかった。鳥子はそんな僕を見て淡く微笑んだ。
「じゃあ、あなたもあたしとひとつになる?」
願ってもいないことだ。僕は鳥子の方を向き、遠慮がちにくちづけたが、拒絶しなかったのをいいことに、少し乱暴に鳥子の上に覆い被さった。
鳥子の甘い香りは更に僕を夢中にさせ、後はもう何もかも流されるがままだった。
どのくらい時間が経ったのだろう。
鳥子の洋服がはだけ、そのまるい胸は白くて夜空をも反射するようだった。
僕はその胸に顔をうずめて息を整えた。なんて柔らかい肌なのだろう。
だめだ。僕は鳥子を離したくない。きっと青木もこんな気持ちになったはずだ。
「本は渡せない」
「なぜ」
「受け取ったら、君は行ってしまう」
「あたしを抱いたくせに、他に何が欲しいの」
星を散りばめたような鳥子の瞳が鋭く輝き、冷たさが際立つ。
そんな鳥子に僕は魅了されている。
思わず空を仰ぐと、一際大きな星があり、不自然なほど輝きを放っていた。
「すごく光ってるな、あの星」
「きっとあなた星と目が合ったのよ」
「そんな話、初めて聞くよ」
そう言ってまた星に目をやると、その瞬間、その星が、すっと流れた。
「あ、流れ星だ。さっきのやつ」
「流れちゃったの?」
鳥子は奇妙な言い方をした。
「目が合った星が流れるのを見た人は死ぬのよ」
「迷信か?」
「あの人も見ちゃったのよ」
黙るオレを尻目に鳥子は話を続ける。
「この世では、青木くんのしたこと自殺って言うのよね」
突然、何の前置きもなく鳥子が言った。
「みんな地球を地上って言うでしょう。違うわ、ここは空なのよ。
さっきあなたがあたしにしたこともセックスって言う。
だけど、セックスなんかよりひとつになれる方法があるのよ。そう説明した。
だから彼は空に飛んだだけよ。体は必要ないの。魂さえあれば」
青木は、校舎の屋上から飛び降り、柔らかな土に体が埋まり、
スニーカーを履いた逆さまになった足首だけが見えた恰好で発見されたのだ。
鳥子の哲学的な考え方一つで、青木は死んだと言うのか。
「君は自分を何者だって言いたいんだ?」
「別に。ただあたしだって人間だっただけよ」
「どういう意味だ?」
「もう死んでるの」
表情も変えずに言うものだから、僕は吹き出してしまった。
「信用しないのね」
「できる訳ないだろう?君は僕をバカにしてるのか?」
「信じないなら構わない。ただ恋愛の仕方が他の人とは違うだけの話。
あたしのために肉体を投げ打ってくれなければ成就できないのよ」
鳥子は魅惑の微笑みを浮かべる。何もかもが完璧だった。
きっと僕が鳥子に魅かれているのを知っていて、度量を試しているのだ。
鳥子は美しすぎて、人を試さなければ気が済まなくなっているのだと思った。
少し後ずさるように一歩足を後ろに出すと、がくん、と体が揺れた。
平坦な場所だと思っていたそこは桜の木で隠されていたが、崖になっていた。
一瞬、墓があるのが目に入ったが、そのまま僕は足を踏み外した。
落ちそうになり、悲鳴を上げて必死に何かを掴んだ。
剥き出しになった木の根。そう思ったが感触がぬめぬめとしている。
「それはあたしの手よ」
よく見ると土の中から出ていたそれは、半ば白骨化した人間の手だった。
驚いて放そうにもそんなことをしたら崖から落ちてしまう。
しかしその「手」は溶けてずるずると滑り、今にも僕を放り出しそうだった。
これが鳥子の訳がない。それに肝心の鳥子は今、目の前にいるじゃないか。
「どうする?あなた呼ばれてるのよ、淋しがりやのお星様に」
そんな僕の考えなんか、既に読んでいたように鳥子は僕を見下ろしていた。
僕は鳥子に追いつめられていると言うのに、鳥子に救いを求める目を向けた。
「大丈夫よ。たった一瞬のできごとよ」
「ほ、本当に?」
「本当よ。やってみる?」
「あ、ああ」
もう腕の力がもたないので、つい口をついて出てしまった。
そんな鳥子の姿は段々半分透けてきて、周りには色んな男達がいて、その中に、頭がぐしゃぐしゃに潰れた血だらけの青木がいた。
「みんな、ひとつになってくれた人よ」
鳥子はその場にしゃがみ、うふふ、と低い声で笑いながら僕を見ていた。
青木が僕の方に一歩踏み出して僕に訊いた。
「ふうん。それで?おまえも自殺したいのか?」
●《自己批評》
『今回「自殺」という衝撃的な言葉が入っていたので、正直戸惑いました。
これは簡単に答えの出るものではないので、思い切って、この世の世界ではなくさせました。
あくまでも創作です。
重いテーマを軽く書く、ということはできませんでしたが、色々考えさせてくださったお題です。
お題を下さった方、本当にありがとうございました。』
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☆「ふうん。それで?おまえも自殺したいのか?」
『自殺幇助屋』
著者:ヤグタケ
「ふうん。それで? お前も自殺したいのか?」
天高く輝く満月をバックにして、拳を血に染めた男はそう尋ねていた。
「ぇ?」
問われた男が、間の抜けた声を返す。
彼の目に映るのは、無気味に笑う長身の男と、その足元でうめき声をあげている3人の仲間たちだった。
その仲間たちは、たった5秒前までは自分と一緒に笑いながら、うるさく注意してきたバカ男を取り囲んでいたはずである。1対4の絶対的優位の立場でいたぶり殴り、社会に対する不満でも解消しようと一様に思っていたはずである。
それなのに――今では立っているのは自分だけ。
「おい、俺の話を聞いているのか?」
この男が――目の前にたたずむこの黒い男が、一瞬にして仲間たちをアスファルトの大地にひれ伏せさせてしまったのだから。
「お前も自殺したいのか? そう聞いている」
怒気が混ざりだしたその声に、逃げ腰の男はようやく現状に引き戻された。
これ以上、彼を怒らせてはいけない。
本能がそう告げるのだが、そもそも男の言っている意味がわからなかった。
自分たちは『自殺』などと言う単語は、一度も口にしていなかったのに、どこからそういう話になったのか。
顔にまで表れたその心中を見てとったのか、謎の男はさも当然とばかりに言葉を続けた。
「だってそうだろう? 『自殺』とは、『自ら死ぬような行動に走る』者のことを言うのだから。殺されるとわかって俺に向かってくるのならば、それは『自殺がしたい』という意思表示――そう捉えることが出来るよな?」
とてつもなく自分勝手な講釈ではあったが、彼が身にまとう言い知れぬ雰囲気には、それを説得させるにたる力が宿っていた。
そのままゆっくり男が一歩ずつ動き出した。
「お前が自殺する気でいるのならば、手助けしてやろう。それが『仕事』だからな。 ……うむ。満月は人を狂わすというが、本当にそうなのかもしれないな。なぜか今、俺はとても気分がいい。だから特別に3割引で引き受けてやってもいいぞ」
彼がおぞましいほどに綺麗な狂った笑みを浮かべる。
それだけで、相対する男の体はその場に縛り付けられてしまっていた。
恐怖に引きつるその表情が気に入ったのか、謎の男はさらに笑みを強くし、彼の前に立つと矢継ぎ早に捲くし立てた。
「遺書は残すか? 便箋とボールペンは用意してあるぞ。それとも遺言のほうがいいか? ボイスレコーダーももちろんある。それと、せっかくだ。ドナーカードに記入をしておけ。意は汲んでやる。」
そして、返り血に濡れた両手が震える彼の肩に置かれようとしたとき、
「う、うわぁぁあぁっ!」
男は精一杯の悲鳴を上げて、ただ一人逃げ出していた。
必死に小さくなっていくその後ろ姿を追おうともせずに、謎の男はつまらなそうに声を漏らす。
「なんだ。自殺する気はなかったのか。せっかくの客だと思ったのに……」
そして、もう興味はないとばかりに、彼は後ろで倒れている男たちを無視して、荷物が詰まれた一角へ歩き出していた。
その先には、身を丸くしている少女が一人。恐怖の色が宿るその目は、不気味な男の姿を捉えたまま外れない。いや、外せない。
「さて」
数秒の視線の交錯の後に、先に口を開いたのは男のほうだった。彼はやれやれと言いたげに肩をすくめてみせると、少女から視線を外して天を見上げる。
「今日が満月でよかったな」
「え?」
「いつもだったら、どこで誰が襲われていようとも、無視するんだがな。やはり満月は人を狂わす。ついつい、お前を助けてしまった。まぁ、これに懲りたら夜遅くにこんな場所を一人でうろつかないことだな」
それだけ言うと、男は脇にのけてあったコンビニの袋を掴み上げ「……あぁ、せっかく温めてもらった弁当が冷めてしまった」とぼやいて、そのまま少女に背を向けて歩き出した。
「ちょっと待ちなさいよ!」
だが、その一言に足を止める。
振り向いた先には、強い意志を込めた瞳でこちらを睨み立つ少女がいた。
「さっきの言葉は本当なの?」
「どの言葉だ?」
「あの男たちに言っていた言葉。……あなたに向かっていけば、殺してくれるの?」
「なに?」
怪訝な男の問いかけに、少女はその身を震わせながらもはっきりと答えた。
「私、死にたいの。あなたに向かっていけば、それは自殺になるんでしょ? だから殺し――」
「断る」
『て』の口のまま、少女が固まる。
そして、きっかり3秒後、ようやく思考の追いついた彼女は大声で聞き返していた。
「なんでよ!? だって、あなた男たちに『自殺するならば手助けする』って、そう言ってたじゃない!」
「あぁ、手助けするさ。何せ俺は『自殺幇助屋』だからな」
「自殺、幇助屋……?」
聞きなれない単語に、少女が眉をひそめる。
男は彼女の方へ完全に向き直ると、一歩一歩近づきながら口を開いた。
「1年で3万人だ」
「え?」
「自殺する人の数だよ。毎年約3万の人間が自分の手で自らの人生を絶っている。一日換算で80人以上、交通事故死のざっと3倍。……それほど、いまの世の中には『自殺』が溢れているのさ」
少女の目前に立ち、男が狂気をたたえた笑みを浮かべる。
「だが、自殺の方法がわかっていない人間のなんと多いことか。結果、苦しみを味わったにもかかわらず生き続けてしまう。『自殺未遂をした』と言うレッテルを張られた上でな。哀れだと思わないか?」
その問いかけに、少女は答えられなかった。ただ、再び滲み出てきた恐怖と言う感情に従って、体を震わすことしか出来なかった。
「だからこそ、俺がいる。自殺の仕方がわからないヤツに、手取り足取り自殺の作法を教え、確実に自殺を遂行させる『自殺幇助屋』がな」
そこまで言うと、男は気だるそうに半分だけ目を閉じた。
「そう、俺は自殺幇助屋だ。死にたがっているやつがいれば誠心誠意手を貸そう。だが、本当は死にたがっていないやつを殺しては、殺人だ。自殺幇助じゃない」
「なっ」
突然の一言に、少女は目を見開いて一歩だけたじろいだ。
「ひ、人のことを勝手に決め付けないでよ! 私は本当に自殺したいんだから!」
「本当に、そうなのか? そうだとしてもお前は、自殺に付いて軽く考えているんじゃないか? そもそも、女は確実に自殺しようと思ったとき、痛みを伴う手段をあまり用いようとはしないものだ。服毒、服薬、入水か、多いのは。……それなのに、殴られ殺されたいだと? 真実味が感じられないな」
しばし唇を噛み締める少女。
だが、急に右手を振り上げたかと思うと目前の男へと襲い掛かった。
しかし、男は冷静な顔で、その攻撃ともいえない右手を握りとめる。
「立ち向かってくれば有無を言わさず反撃してくれると思ったか?」
図星を付かれ多少所が左手も振り上げるが、それすらも取り押さえられ、握りあげられてしまった。
少女が力を込めるも、男の腕から逃げ出すことは出来ない。
男は必死に抵抗する彼女の細い腕をなぞり上げ、唇の端を吊り上げた。
「綺麗な手首だな」
ぞくり、と。
少女の背中に悪寒が走る。
「今まで俺のところに来た女は、全員手首に傷があった。本当に自殺したいと願っていたヤツらはな。自殺したいと願うなら、もっと絶望しろ。絶望して、絶望して、そしてこの世に愛想がついたなら、もう一度俺のとこまで来い。正式な客として出迎えてやる」
それだけ告げると、男は少女の腕を解放した。
その目に涙を浮かべた彼女は、一度男を睨みつけたあとで、振り向きもせずにここから走り去っていく。
「あれ? 逃がしちゃったの?」
突然。
路地裏の闇から、舌足らずな女の子の声が聞こえてきた。
男はそのことに対し、特に動じるでもなく、姿の見えないその声と普通に会話を始める。
「逃がすも何も、あの子は俺の客じゃない」
「そうなの?」
「あの子の瞳、そこで転がっているヤツらと違って、奥にちゃんとした意志がありやがった。自分を犠牲にしてまでも、誰かを救おうって言う自己犠牲の意志が、な。『自己犠牲』と『自殺』は対極の存在だ」
「おやおや、それじゃあ君は彼女の瞳の奥にある不確かな意志ってのを尊重したってわけ?」
「そのつもりだが。何か問題でも?」
「別に〜。ただ、意外とロマンチストなんだなぁ、って思っただけ〜」
幼いその声に向かって、男は声を出して笑うとこう答えていた。
「ロマンチスト? 俺が?」
おまけ
「なぁ、お前。そんなことより腹減ってないか? コンビに弁当でよければやるぞ」
「いらないよ。そんな中身がぐちゃぐちゃになった弁当なんて」
●《自己批評》
『キャラクターに重点を置いて書いてたら、何とこんなことに。
最後の一文の使い方がこじつけ臭いのは仕様です、ごめんなさい。』
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☆「ロマンチスト?俺が?」
『彼。』
著者:暇子
「ロマンチスト?俺が?」
ブラックコーヒーを一口飲み、彼が言う。
「それは、君がそうさせてるんだよ。」
ナナメ45度。
彼は自分が一番カッコよく見える角度を知っている。
向かい合って座っている女は・・・
「クサーい。」
なんて笑いながらも、まんざらでもなさそうだ。
やっぱりそうだわ。そうだったんだわ!
町で偶然見つけた私の彼。
隣には知らない女の子が!
気になって後を付けてきて正解だったわ。
彼、浮気してる。この私が居るのに!
「お客様、ご注文は・・・」
立派な観葉植物の陰にかくれて、あちらは私の事には気づいていない。
「ごめんなさい、急用を思い出したので・・・失礼。」
私は何も頼まずに店を出た。
向かうは彼の部屋。
先回りしてやるんだから!
彼の部屋の前。
鍵は・・・持ってるけど最近調子が悪いみたいで開かないの。
ドアの前で少し待ってたけど彼はなかなか帰ってこない。
仕方が無いから郵便受けでも見てみよう。
水周りトラブルのチラシと、ピザ屋のチラシ。
これは・・・携帯料金の請求書ね。
暇だし・・・開けてみようっと。
まぁ!
3万近くも携帯で使ってるの?
その割に最近私にはメールも電話もしてくれないじゃない。
お仕事?
ふぅ。
仕方が無いわね。
彼は私がいないと何も出来ないもの。
まだ彼が帰ってくる気配も無いし。
近所のコンビニで払ってきてあげるわ。
ついでに彼の好きな青年誌も買っといてあげる。
彼、きっと喜ぶわ!
コンビニの帰り道。
辺りは薄暗くなって来ちゃってる中、
払い終わった携帯の請求書をよく見てみる。
090-XXXX-XXXX
あれ?
また番号変えたのね。
どうりで最近通じないワケだわ。
登録しなおさなくっちゃ。
私は自分の携帯を取り出した。
再び彼の部屋の前に着いたとき、
ちょうど彼が帰って来てた。
「おかえり!さっきまで待ってたんだよ。」
「お・・・お前・・・」
青ざめる彼。
浮気してた事が私にバレるのが怖いのね。
「ハイ、払っといてあげたわよ!番号変えたんなら教えてよ〜。」
「警察を呼ぶぞ!」
何?何のこと!?
「お前とはもう半年前に別れただろう!」
まだそんな事言ってるの!?
「私は別れたつもりなんてないわ!」
私はコンビニの袋を差し出した。
「あ、また!勝手に人の郵便物あさりやがったな!しかも頼んでもいなにの払うな!このストーカー女め!」
ストーカー・・・?
その言葉を聞いて私は我にかえった。
私が?
ストーカー・・・。なの?
私のやっている事って、犯罪なの?
TVなどでストーカー被害を聞く度、
自分とは関係の無い他人の話だと思っていた。
「まぁ怖い!」なんて。
「だけど私はあなたを傷つけたりしてないじゃない。」
「そういう問題じゃないだろう。」
「私は、あなたの為を思ってやってあげてるんじゃない!」
「やめてくれ!迷惑なだけだ、気持ち悪い!」
気持ち悪いですって?
そんな風に思われてたの?
だって私は・・・私は・・・
立ち尽くす私を背に、
彼は振り返りもせず部屋のドアを閉めた。
バタン!という音と同時に、涙が溢れてきた。
しばらくしたらまた彼がドアを開けてくれた!
やっぱり考えなおしてくれたのね?
涙を拭って笑顔で名前を呼ぼうとした時、
紙切れが何枚か宙を舞った。
そして、また閉まるドア。
鍵の掛かる音。
私の持っている鍵じゃもう開かない彼の部屋の鍵。
紙切れは・・・お金だった。
一万円札3枚。
おつり、渡したいのに・・・。
もうドアが開くことは無かった。
トボトボと自分の部屋へ帰る道。
ドコをどう歩いて来たのか覚えていないけれど、
気づいたらちゃんと自分の部屋の中に居た。
ストーカーだったなんて。
・・・私、
ストーカーだったなんて!
自分では気が付かなかった。
彼が喜ぶと思ってやっていたのに。
仕事が忙しいのだと思っていた。
時には喧嘩して別れ話をしつつも、
結局は離れられないお似合いのふたりだと思っていた。
半年前まででページの止まったアルバムを開く。
仲良く笑っている二人が居た。
なんて幸せそう!
ダメ、
やっぱり私には彼しか居ない。
諦められない。
決めた。
ストーカーだって言われても彼を好きで居続けたい。
だって私、何も迷惑かけてないじゃない!
むしろ喜ばれる事してると思うわ。
時間がたてば彼も気づいてくれるかも知れない。
やっぱり私が一番だって。
そうね、彼がまた別の誰かを好きになったなら、
このクズ女の屍を踏み越えていくといいんだわ。
出来るんなら、ね。
●《自己批評》
『いや〜怖いッスね、ストーカー!
コッソリ覗いたり、後を付けたりするのが特に。
あれ、内藤さん?
どうしたんですか?』
> > > > > > > > > > > > > > >
☆このクズ女の屍を踏み越えてください。
著者:黒沢柚月
どうやら今現在の時点では、授業中らしいよ・・・って、今日は何曜日なの!?
もはや決定的にこの名前が似合う、命名、「ユズみそ」
・・・頑張って、原稿上げてねぇ〜。
> > > > > > > > > > > > > > >
☆「ふん。じゃあ何かよ。おまえはまともだって言うのかよ。不純異性交遊してるくせに」
『非生産的な僕ら』
著者:おりえ
「ふん。じゃあ何かよ。おまえはまともだって言うのかよ。不純異性交遊してるくせに」 「人聞きの悪いこと言うんじゃねーよ。大体異性交遊に純粋も不純もあるのか? 男と女がやることやってるだけだろうが。何故に俺が非難されねばならんのだ」
「普段あんなにロリコンに対して死滅しろとか竿をちょん切れとかわめているおまえの口から出た言葉とは思えんな。なんだ? 自分はよくて他人はだめなのか? どんな我侭大王だ? あ?」
「俺までロリコンのレッテル貼ろうとしてんじゃねーよ。人が聞いたら誤解すんだろ。人間の思いってななぁ、結局最後は肉欲にたどり着く運命なんだよ。だって子孫残すために俺らムダに生きてるんだから。だから純粋不純は意味ないの。関係ないの。そこに愛があればいいの!」
「うーわー愛。アイですってよそこの奥さん!」
「誰もいない空間に向かって話しかけんな。気味悪いだろ! とにかく俺はまともな恋愛を楽しんでるの! 口出しすんじゃねーよ。万年フラレ野郎が」
「いいんだよ。俺には恋人がざっと50人はいる。リアルなんかどうでもよくなったさ」
「やだねー、二次元にしか愛を見出せない、非生産的な生き方! あーやだやだ。近寄るな。話しかけるな。目を合わせようとするな!」
「何言っちゃってんの? 俺は誰にも迷惑かけてないし、二次元の何が悪いのか! 俺の脳内妄想バカにすんなよテメー。その内子供連れてくっからな!」
「見えない赤ん坊あやして楽しいのか? おまえは。何で俺が泣きたくならなきゃならないんだ」
「まあ実際問題、リアルで異性とまともに交遊できない人間は、ゲームでその欲求を満たしている傾向にはあるな。二次元はプレイヤーを傷つけないってのがあるからさ。大体俺は思うね。おかしいよおめーら。何で好き好んで相手の好みに合わせて自分を変えたり、相手に好かれるために自分を殺して生きてんだ? 虚しくね? 生きることの意味をふと考えちゃわね?」
「それはおまえが言われるべき言葉だろ。現実で立派に傷ついて成長していってる俺らに説教すんな。ひきこもり寸前野郎」
「おまえよりはマシだと思いたい。ああ俺は思いたいね!」
「だからさっきっからなんなんだよおめーは? まずは自分の生活を改善することから始めろよ。やってらんねーよ、もう」
僕の友人はそう吐き捨てると、恋人が来たといって駆け出していきました。
ああ、神様。
二次元の美少女ゲームのキャラに本気で恋をし、抱き枕を抱えて街を徘徊する男は世の中に実際いいます。真面目に話しかけちゃってる人も知ってます。部屋に入れば見渡す限りの美少女キャラのポスター、座布団、テレビやパソコンには顔のパーツはほぼ一緒なのに髪型だけが違うだけというキャラがにこにこ笑ってます。とても親には見せられない部屋ですが、彼らはそこに幸せを見出しているのです。
人の幸せはその人だけのもの。ええ、僕もそう思っていますよ。早く家に帰って、愛しのランたんに洋服を買ってあげなくてはと思っています。ゲームの中の僕はお金持ちですから。
こんな生き方ができるようになった世の中を憎むべきでしょうか。それとも喜ぶべきでしょうか?
そんなことはどうでもよいのです。僕にはランたんがいればそれで、ええ、もう何も望みません。とはいっても、他にも沢山愛すべき二次元キャラは僕の心を捉えて放しませんけれども。
けれど僕のたったひとりの友人の幸せについて、僕は考えざるを得ないのです。
「今日もいい天気だねぇ」
「ああ、そうだね」
「お友達はいいのかい?」
「ああ、いいんだ。あいつ、家に帰ってゲームやるしかできねーんだから」
「わたしも今度、そのげぇむをやってみようかねえ。楽しいんだろ?」
「いいんだよ。目が悪くなっちまう」
「何言ってるんだい。わたしゃ」
神様、僕と彼、あなたはどちらを哀れんでくださいますか?
「もう90のおばあちゃんだよ。眼鏡がないと、なぁんにも、見えやしないんだ」
「だろ? これ以上悪くなったら、俺の顔までわからなくなる。それだけはごめんだぜ」
「おまえさんは優しいねえ」
「そりゃそうさ。愛しているもの」
「嬉しいねえ。死ぬ前におまえさんみたいな人と出会えて、わたしは幸せものだ」
目をキラキラさせて「うんうん」と呟く僕の友人の「彼女」のしわしわの顔を愛しそうに覗きこむ彼の顔は間違いなく「幸福」で。
「…さ、ランたんに会いに帰らなくちゃ…」
隣には誰もいない。これからもいることはない。けれど頭の中で僕は沢山の美少女キャラに囲まれている。永遠に老いることのない彼女たちに囲まれて。
人の幸せはその人だけのもの。そんなのはとっくにわかっている。
それでも僕は、どんな人であれ隣に確かにいてくれる「彼女」がいる彼と、決してぬくもりを感じることはないけれど、ずっと僕を裏切らないでいてくれる「彼女」たちがいる僕と、果たして人はどちらをうらやむのだろうかと、たまにそんなことを、考えてしまうのです。
●《自己批評》
『ばあちゃんとの間に子供が出来たら、生産的だな、彼は。それぞれの愛の形に敬礼。自分の力不足に吐血。』
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☆目をキラキラさせて「うんうん」と呟く。
『ある街のある夜の物語』
著者:真紅
『このみみっちい炎は、マッチ売りの少女だな。何の幻が見える?』
冬の「冷たい」という言葉が当てはまるような街の隅で立ち尽くす少女。
街行く人々は、その少女が差し出すマッチを嫌がり、避け、受け取ろうとしない。
小さく美しい少女は途方に暮れ、余りに余ったマッチの内の一本を擦って灯した。
そのいつかガキの頃に読んだような絵本の世界に男は苦笑いした。
「・・・おいおい、こんな時代にマッチ売りかよ・・・。」
男はため息混じりに少女から目を逸らし、横を通り過ぎようと早歩きになった。
「・・・あの・・・買ってください・・・お願いだから・・・。」
小声で消え行きそうなその弱弱しい声を確かに男は聞いた。
・・・そんな少女の声に男はついつい目の前で立ち止まってしまった。
「・・・しまった・・・ここで買わなきゃ俺ただのろくでなしじゃねぇか・・・!!」
男は少女を目の前にした。
少女は15〜16、服は少しほつれ、その悲しそうな表情が印象的だ。
「・・・えっと・・・一ついくら???」
少女は悲しそうな表情から一変、笑顔の美しい少女に変わった。
「・・・!!はい!!ありがとうございます!!」
男がマッチを少女から受け取る時、その小さい手に触れた。
その手はとても冷たく、疲れ、痩せ細っている。
男は自然と少女に喋り掛けていた。
「・・・君、いつからここで??(・・・何聞いてるんだ・・・俺・・・)」
少女は、男の問いに笑顔からまた悲しい顔になってうつむく。
「・・・昨日からずっと・・・私お父さんもお母さんもいないからこうやって働かなきゃ・・・。」
・・・男も両親がいなく、かつていた妹も生き別れていた。
男はそんな少女を見て、なんだか親近感が沸いてきたのだ。
「・・・なぁ?君の事これから一杯聞かせてくれないか?・・・また来るから。」
----それから男は毎日のように少女の下に通った。
最初はぎこちなく、笑顔も無かった少女も、段々と笑えるようになっていった。
男も少女のマッチを買い、話をするのが日課になっていた。
・・・またいつもと変わらず男と少女が話している。
男は、何気無く少女に話題を持ち掛けた。
「なぁ、君には兄弟はいないのか??」
その男の問いに少女は笑顔を無理に作りながら話した。
「・・・いました。生き別れた・・・ちょうどあなたぐらいの兄が・・・。」
男もそれに被せる様に話す。
「そうなのか・・・俺にも生き別れた妹がいてな・・・ちょうど君ぐらいだった・・・。」
男はハッとした顔で少女に言った。
「・・・そうだ!!俺を兄貴だと思ってくれていいよ!!その方が話し易いだろうし!!」
少女は男の変わり様に驚いている。男は我に戻り、頬を赤らめた。
「・・・ゴメン。必死だったもんでつい・・・。」
少女はそんな男がおかしくて笑ってしまっていた。
男もその少女の笑顔を見て笑った。
「・・・ありがとうございます・・・兄さん。」
それからまた男は少女の下へと通うのが楽しみになった。
どれだけ嫌な事があっても少女の無垢な笑顔を見ると忘れられる。
毎日毎日通う度、少しずつ変わっていく少女の成長も楽しみだった。
まるで本当の妹と暮らしているみたいで・・・。
ある日、また男は少女に会おうといつもの街角に向かった。
しかし、もう見えてもいいはずのその姿が見えない。
「・・・あれ?どうしたんだろ・・・。」
男は少女がいつも立っていた街角の周りを見渡した・・・どこにもいない。
「・・・一体どこへ・・・。・・・!?これは・・・。」
男の足元にはマッチが1箱落ちていた。あの少女のだ。
古ぼけたマッチ箱を開けると、中には小さな紙が。
「・・・兄さんごめんなさい・・・私はもうここにいれません。」
男はその手紙の始まりを読んで絶句した。
「・・・兄さんが帰ってから私・・・見たの・・・兄さんが落とした兄さんの名刺・・・。」
「兄さん・・・本当の私の兄さんだった・・・とても嬉しかったの・・・でも・・・。」
男は急ぐ自分を抑えつつ、手紙の続きを読む。
「私・・・兄さんを愛してしまった・・・いけないと分かっていても・・・好きになったの。」
「こんな私にあなたの傍にいる資格なんてありません・・・どうか許して・・・愛する兄へ。」
男は無言で手紙を音を立てて握った。
「俺も・・・好きだったんだ・・・妹と重ねていたのに・・・うわぁぁぁぁぁ!!!」
そしてその場に跪き・・・地面を力いっぱい叩いた・・・何度も・・・何度も・・・。
街行く人々はそんな男に目も暮れずただ歩いている。
・・・やがて男はフラっと立ち上がり・・・人混みに消えていった。
日は昇る・・・街角にあった小さな愛のドラマを照らすような眩しい笑顔で。
『見慣れたいつもの朝がやってきて、がらんとした風景を当たり前のような顔で包んでいく。』
●《自己批評》
『 ――― 』
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☆このみみっちい炎は、マッチ売りの少女だな。何の幻が見える?
『No Title』
著者:高野時雨
このみみっちい炎は、マッチ売りの少女だな。何の幻が見える?
暖かいストーブ
美味しそうな焼きガチョウ
大きくて素敵なクリスマスツリー
全て、全部。と、切に願ったのに。
「後どの位?」
「30分…ちょっと。」
「そっか。」
何の感慨も無い。後30分で一年が終わるというのに。
静寂と妙な圧迫感だけが二人の間を支配していた。
普通するようにテレビをつけてない所為か、それとも外の雪の所為か。
不思議なもので人間というのは音が無くなると思考が鈍くなるらしい。
神経だけが研ぎ澄まされて、意識の水面下で一つの感想だけが浮かび上がる。
変な状況
星に間近い高層ビルの最上階、壁一面にとられた窓の外は雪景色。
明かりさえ点けずに、朗々と月光を浴びるコンクリートの箱の中。
室内で唯一瑞々しく息づいているのは、机の上に無造作に活けられた大輪の薔薇。
深い深い狂気さえもが、息を潜めて近寄って来るようで。
意味も無く叫び出したくなるような、そんな状況。
慢性的に何かが欠落していて喪失感に駆られているというのに、どうしてか月は満ちみちて、軽薄な空気を曝け出そうとしている。
向かいに座った少女は、いつからか煙草の煙を燻らしている。
あまりに不釣合いなそのさまに、寂寞が零れたのは何故だろうか。
新しく火を点けようとするのを見て、唐突に手をのばした。
無意識に笑みを張り付けたその目は大きな硝子玉の様で、ライターの小さな炎でさえ歪んで壊れてしまいそうだと感じたから。
目の前の人はいきなりライターを取り上げられて、小首を傾げてごく小さな声で呼びかける。“なぁに?”
「…吸い過ぎ。」
「あ、ごめん。」
煙る紫煙。金属の匂い。薔薇の芳香。
無機質なコンクリートは、音も匂いも光も何もかも、吸収して同化する事を許さない。
呼吸さえも拒否されて、薄く張った緊張に拍車をかけていた。
事の発端は明確で簡単だった。
恋人が自分の図り知らない所で徐々に壊れていっただけ。
その事に、今日が来るまで気付かなかっただけ。
ただそれだけ。
どうしたの、何て決定的な言葉では問えない位、気が付けば少女の様子はおかしくなっていた。
「all or nothing」
最後の会話は、そんな内容だったか。
大きな、無駄に大きな窓が開け放たれて、彼女の体が見えなくなる約3秒。
反射的に身を乗り出した横を、緊張感も圧迫感も全部一緒にすり抜けて落ちていく。
ふと鼻を掠めた金属の匂いが、血の匂いだと気付いたのはその時だった。
誰が彼女を満たしてやれただろう。
除夜の鐘の音
深く長く
今この時から、気持ちを一新だなんて、出来るものか。
見慣れたいつもの朝がやってきて、がらんとした風景を当たり前のような顔で包んでいく。
●《自己批評》
『自己批評…でしたっけ。
頭が働かなくて、どれだけ考えても文が出なくて苦しかったです…。
色々と説明不足な感じですね。』
∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞
☆見慣れたいつもの朝がやってきて、がらんとした風景を当たり前のような顔で包んでいく。
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出題者:ネコタさん(◎マーク)
作品名:『コンセント』 著:田口ランディ
正解者:知さん
出題者:黒沢柚月さん(☆マーク)
作品名:『ネバーランド』 著:恩田陸
正解者:知さん 晴さん
さてさて、指名〜♪
ネコタさん → 幸坂かゆりさん
黒沢柚月さん → 高野時雨さん
ネコタさんは、まだ他のメンバーをほとんど知らなくて、とりあえず暇子ちゃん指名だったんだけど、暇子ちゃんはちょっと前に一回出題しているから、指名は僕に任せてもらったよっ!
ってな訳で、かゆりさん。 次回はお休みらしいけど、出題だけでもお願いねっ!
それから、ユズみそちゃんは、お友達の時雨ちゃんだねっ!
どうやら時雨ちゃんは、現在高い熱で寝込んでいるらしいけど、良く頑張ったねっ!
さてさてっ! 皆さん今回もお疲れ様だねっ!
・・・寸評、ちょっとだけ待っててね。 ぷすっ♪(2pss)
2006.04.23 20:16 URL | night_stalker #NN0jmGmk [ 編集 ]
うっわ来た(汗)
おはよーございます。
頑張りました改め頑張ります(遠い目)
もう嫌風邪なんて…
2006.04.23 20:20 URL | 時雨 #GtFNyDJo [ 編集 ]
わーい
ご飯食べて帰ってきたら更新されてた。
へたれな私は、今回も楽しみに読みます。明日プリントアウトしなきゃ!!(酔っ払い@日本酒はきくよね?
2006.04.23 23:47 URL | 晴 #VWFaYlLU [ 編集 ]
皆様、こんにちは♪
さっそくの更新にお礼を、と顔を出したら、
・・・なんですって!?出題だと!?
うえーん。一番恐れていた事がやってきてしまいました。
「闇の掟」をよく読んで方法を間違わずに出させていただきます。
掲載、ありがとうございました。
2006.04.24 02:54 URL | かゆり #Ys8GLhUo [ 編集 ]
うわぁ、ギリギリだったからミスがあるとは思っていましたが、やっぱりあり
