『笑うソーセージ』
著者:なずな
「魚肉ソーセージの値札じゃない、これ」
拭いてもすっきり曇りの取れない陳列棚の隅に、小さなシールが貼り付いていた。
最近付いたものだろうか、すっと簡単に剥がれたシールを顔の高さまで持ち上げて、しげしげと見ながら理子は呟いた。
「何だって?」
レジ台で新聞を広げていたハルさんが ずらした老眼鏡越しに見る。
「値札シール。ばあちゃん こんな所に付いてるよ」
「ああ そんな所に付いてたか。一枚足りないと思ったんだよね、個数分だけシール作ったのにさ。」
コンコンと背中を孫の手で叩きながら、ハルさんはそう言うと、もっと大事な事を忘れてたという顔をして振り返り、店の隅にある小型TVのスイッチを付けた。
聞きなれた推理ドラマのシリーズのオープニング曲が流れる。再放送だけど、ハルさんはいつも始めて観るような様子だ。
「新聞のTV欄にさ、3番目に名前が出てる人、ほれ、ここ、この人がが犯人なんだよね、大抵」
「解ってたら 面白くないじゃん」
「馬鹿だねぇ。その推理が当たるかどうかが見ものってもんじゃないか」
ハルさんの言うことはよく解らない。
客は来ないし、特にすることもなくなったので、結局理子も一緒にTVを観る。
得々として繰り広げるハルさんの的を得ない推理や、そりゃ、作り手の意図ではないだろうという俳優の小さな仕草や小道具の配置など
を挙げての「怪しさ」の指摘は 聞いているだけでも、結構面白かった。
*
理子の祖母ハルさんは、昔ながらの商店街の中で小さな食料品店をやっている。
駅前に大手のスーパーが進出し客足はさっぱりだから もう店を閉めてもいいんじゃない?と言っても、
ハルさんは頑固にこの店を続けている。言っても聞かないんだから、倒れるまで放っておけ、と理子の母は言う。
この頑固ばあさんと理子は結構気が合って、時々覗きに来ては店番を手伝い、そのまま泊まることも多かった。
冷蔵棚も古臭いし、品揃えもばらばら。レジときたら骨董品のようなもの。
ショーウィンドウや飾りだなくらいは自分ののセンスで変えてみたいと思うのだけれど、
ハルさんが自分の店に口を出されるのが一番嫌いなのが解っているので 理子も軽く埃を拭くくらいしかしたことがなかった。
暇な店番をしながら壁の広告ポスターをぼんやり眺め、鑑定に出したら「お宝」ものかもしれないなぁ、と思う。
小さいシールに数字の回転印で判子を押した手作りの値札は、ハルさんがいちいち商品に貼り付けている。
レジを打つたびに剥がせるものなら剥がして回収するというとんでもない店だ。
(もちろんその値札は使い回す)
今日珍しいな、と思ったのは、超のつくような旧式のレジスターが、少し進化したタイプ(それですら時代遅れには違いないのだが)に代わっていたこと。
「何だ、レジ替えたの?」
理子が言うと、ハルさんはニヤリと笑って
「あたしと同じで年寄りだったからね、どうにもこうにも言うことを聞かなくなっちまってさ、
古くてもいいから安いの持って来いっつったら これもって来た」
レジのメンテナンスをやってくれるのは昔馴染みの会社だが、今度の営業の若い男子社員はハルさんの時間つぶしの絶好の相手で、
たまに理子がやってくる時も、ハルさんの愚痴や昔話にいつも不器用な相槌を打っている。
「最近のは、バーコードでピピッってやるんだよ。おつりなんかも勝手にじゃラジャラって出て来るんだよ。
つり銭間違いがなくていいし、どうせなら そういうのにすりゃ良かったのに」
理子が言うと、ハルさんはケケッと笑って、
「繁盛しないこんなばあさんの店にそんなハイカラなもん置いたってさ・・アンタももう店閉めろとか言ったくせに」
「まぁ、そうなんだけど」
新しいのか古いのかよく解らないそのレジを眺めていると
「でもさ、これ、よく出来てるんだよ。ほら例えばさ・・・」
ハルさんは、新しいオモチャを自慢する子どもみたいに、そのレジについて述べ出した。
レシートに品物の値段だけでなく、設定済みの商品名が打ち込まれるらしい。
「商品管理に最適、なんちってさ、店は売れ筋の把握と計画的な仕入れだよ。商売はアタマを使わなきゃねぇ」
「それ、あのレジ屋の兄ちゃんの受け売り?」
理子が聞くと、ハルさんはカカカと笑って、ほれ、食べな、と冷蔵棚から魚肉ソーセージを一本、理子に差し出した。
「小さい頃から、あんたはこれが好きだったねぇ」
「おやつって言ってもこれしか食べさせてくれなかったの ばあちゃんじゃない」
「魚肉ソーセージを馬鹿にすんじゃないよ、なんなら今日のおかずは魚肉ソーセージ料理のフルコースにしてやろうか?」
「結構です。」
ハルさんは腰に手を当てもう一度 カカカと笑った。そしてちょっと勿体つけて理子に言う。
「茶箪笥の中にある頂き物のお菓子、開けていいよ。取ってあるんだ、あんたが喜ぶだろうと思ってさ」
「何でも取っておかなくていいよぉ。いつ来るか解らないんだし」
理子はそういいながら茶の間に上がり、言われた通りに茶箪笥を開けた。
観光名所の絵のついた包装紙そのまま、いくつもの食品らしき箱が積まれ、他にもお中元 お歳暮のおすそ分けらしきもの
商店街の福引の景品、粗品類が目の前にぎっちりと並んでいた。
「ばあちゃん、消費期限って・・・知ってるよね?」
箱の裏をひっくり返して見ながら、理子は ふぅとため息をつく。
*
レジを打ちかけて、理子の手が止まる。
いつもの品揃えでは見かけない 贈答用のような高級ハムの塊に付いていたのは「魚肉ソーセージの値段」シールだ。
中年の女の客は 迷う風もなくレジの台にスッと差し出した。
このあたりではあまり見かけない、一見高級住宅街の奥様風情。淡い色のニットのアンサンブルにブランド風の柄物のスカーフ。
全てがまがい物くさいのは品のいいとは言い難い化粧のせいかもしれない。何だかひとを見下したような視線がちょっとカンに触る。
その買い物がハム一品だというのも変な感じだ。
「あー、すみません、これはですね」
貼り間違えにしても、この値段じゃ客だって間違いだと気づくだろ、理子があからさまに嫌な声出して値札違いを説明しかけると、
「ああ、値札間違ってましたか、どうもすみませんねぇ」
ハルさんが続きの茶の間から つっかけ履くのももどかしげに パタパタと飛び出してきた。
年寄りのくせにこういう動きがすばやい。
女はツンとした表情を変えずに理子とハルさんの顔を見比べ、文句でも言いたげに口を開いた。
「うっかりして 貼りまちがえることがたまにあるんですよ。これだから年取るのは嫌だねぇ。
ええ、ええ。もちろんこちら側の失敗ですから そのお値段にさせて頂きます」
営業用のスマイルを顔いっぱいに広げ、ハルさんはハムを女の手から奪うように取り上げ
値札シールを手馴れた手つきでぺっと剥がすと、自慢のレジスターをガチャンガチャンいわせて、
「魚肉ソーセージ 一点」を打ち込んだ。
あっけにとられて見ている理子を肘で押しやりながら、ハルさんはいつになく愛想のいい声で
「ありがとうございました、また宜しくお願いしますねぇ」
と更に腰を曲げてお辞儀し、ご丁寧にもスタスタと引き戸の前にまで行って、女を送り出した。
「一体どういうこと?」
理子が聞くと、ハルさんはは女が行ってしまったことを確認してから、神妙な声で言った。
「あの女、値札付け替えの常習犯だよ、いつもは駅前のスーパーの夕方の値引きシールを勝手に剥がして貼り変えるんだ」
「へぇ、スーパーの人、知ってるの?有名なの?」
「知ってるさぁ。勇気あるお客がね、この間も見かねて注意したんだけどもさ。
逆切れされてそりゃあ怖かったらしいよ」
「逆切れって・・」
「店長呼べ、訴える、名誉毀損だって、もう大騒ぎ。棚は壊すわ、店員突き飛ばすわ」
「でも警察来たら、不利なんじゃないの、あの人」
「だろうね、立場が悪くなってきたら、このへんで許しといてやるとか言って、そそくさ逃げるんだ、いつも」
「また、どっかの新喜劇のような」
「面の皮の厚い女だよ、全く反省の色もないし」
「で、調子乗っちゃってここみたいなセコい店にまで来るんだ?」
「セコくて悪かったね。たまに来るよ。魚肉ソーセージまとめて買って行ったことがある、その時なんか本数誤魔化そうとしたんだよ
万引きさえしなきゃいいとでも思ってんだろうかね」
ハルさんはふんっと鼻の穴を膨らませて理子に言い返し、
「あきれたねぇ、今度はその魚肉ソーセージの値札だよ、全く・・」
「本当に貼り間違えじゃなかったの?」
「ちゃんと数えたさ、今回は間違いない」
「じゃ、売ることなんかなかったのに」
「いいんだよ、その内痛い目見るのはあの女だよ。お天道様は正直者の味方でござるっつうもんだ」
ハルさんは横目で理子を見て、ニヤリと笑った。
*
商店街の中で長年開業している「ヤブ医者」がやって来て ハルさんと座り込んで長話をしている。
どうやら昨夜 痛む腹を抱えて駆け込んだ女がいたらしい。
ヤブだけど気だけはいいんだ、とハルさん太鼓判の老先生は 夜間子どもの発熱とかで駆け込んでも、嫌な顔一つせず、寝巻き姿で診察してくれる。
理子も小さい頃何度もハルさんに連れられて診察してもらったのを覚えている。
店番をしながら茶の間の方に二人の声に聞き耳を立て、どんな女だったのか理子は想像を膨らます。
昨日店を閉めた後、巻き取ったレジの記録紙を帳面に貼り付けながら、
「今日の売り上げ記録、○時○分、『ギョニクソーセージ ○○円』」
大した品数も記録されてない細長い紙を 歌みたいに節付けて ハルさんは大声で読み上げた。
「あの女が買ったのは、高級ハムの塊じゃなく 魚肉ソーセージだっていう これは揺ぎ無い証拠だねぇ」
鼻歌まじりのハルさんは機嫌のいいことこの上ない。
ヤブ先生とハルさんの会話を漏れ聞く内に解ったことだが、スーパーで女に逆切れされた「勇気ある客」というのはどうもハルさんだったらしい。
点けっぱなしのTVでは 推理ドラマの再放送が流れている。丁度、素人探偵が名推理で犯人を名指しするシーンだ。
「あの女の腹痛の原因はですね・・」
探偵の口の動きに合わせ、理子は目を細め人差し指を左右に振りながら 小さな声で言ってみる。
「大変申し上げにくいのですが身近な人間の犯行ですな」
同じ言葉を画面に合わせて 理子は口にした時、茶の間からハルさんの高らかな笑い声が聞こえた。
一旦俯いて肩を落とした画面上の「犯人」は全てを認めた上、クックッと笑い出す。
TV欄で4番目に名前が載ってた俳優だった。
●《自己批評》
『えっと、あの、何です。
結局 あれです。
まあ、そういうことで。』
《STAND BY ME なずな》
゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜
◎大変申し上げにくいのですが、これは身近な人間の犯行ですね。
著者:櫻朔夜
゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜
◎しかしストッキングを被るとなぜこのように、面白い顔になるんでしょうか。
『不一致 is』
著者:松永夏馬
「しかしストッキングを被ると何故このように面白い顔になるんでしょうか」
暗闇の中、スポットライトに照らされた黒いスーツの男が、あなたに向けてくぐもった声でそう言った。仕立ての良さそうな黒いスーツをスラリと着こなした男は、こともあろうにストッキングを被っているのだ。顔はひしゃげて原型を留めず、当然声も篭って聞き取りづらい。
「大抵の場合この……」
と言いかけて、思い出したかのように男はストッキングを引っ張って外そうとするが、これがなかなか外れない。潰れた顔が上に引っ張られる。
「くッ……」
外れない。
「よッ……」
外れない。
「えー……」
ストッキングを被ったままの黒ずくめの男は肩をすくめると、あなたに向かって顔を曲げた。どうやら笑顔を作ったらしい。
********************
「こんな遅くに待ち伏せなんてどういうつもり」
マンションの一室、対馬ミナ子の部屋の玄関で、対馬ナナ子は鏡のように同じ顔をした姉の声に含まれる刺を感じ、少し悲しくなった。
「別にそういうわけじゃ」
ナナ子はそう言いながらも、実際待ち伏せしていたのだからそれ以上言い返せないでいる。どうしても会って話がしたかったのだが、避けられているのだからこうして多少強引な手段に出ざるを得ない。部屋へと進む姉の背を追ってナナ子もハイヒールを脱いだ。
「まったく、ナナ子といい平原といい、なんでこうアタシの周りにはストーカー気質な連中ばっかり集まるのかしらね!」
平原というのは二人の高校時代の同級生で、ミナ子を一方的に慕いつきまとっていた男だ。学生時代には気付かなかったが、ミナ子に対して思いつめていた感情が、3年前の同窓会での再会で爆発したのだ。高校時代から数えて10年以上、良く言えば情熱的な、悪く言えば執着心の強い性格らしい。
その様子だと今でも何かしらの接触があるのかもしれない。
平原のことをストーカーとまで言うのは少し言い過ぎなのではないかとナナ子は思う。姉は妹と違い自信家で自意識過剰のきらいがある。
「アタシはさ、その……」
「矢口とのことでしょ。いいんじゃない? 結婚でもなんでもすれば」
ダイニングテーブルに買い物袋を置き、ベッドルームへと進むとジャケットを脱いでハンガーにかける。
「……え?」
「でもアタシ、口軽いからね。何かの拍子にいろんなこと喋っちゃいそう。披露宴出るのも止めたほうがいいかしら? お酒出るでしょ?」
鏡台に置かれたメイク落としのコットンを片手で取り出し、眉毛とマスカラを落としながらミナ子は笑う。
「そんな」
「矢口の家はけっこう格式高いからね、風俗でバイトしたなんて彼が知ったらどうなる……」
「お姉ちゃん!」
姉の恋人だった男が双子の妹と結婚する。同じ顔をした女に鞍替えされたという事実は、ミナ子の高いプライドを深く傷つけたのだろう。それはわからなくはない。
しかし。
マスカラを落としたコットンを足元のごみ箱に放り込んで姉が振り向く。その細めた瞳はまるでガラスのように冷たく無機質に見えた。
静かに溢れる悪意を感じ、ナナ子の中の自己防衛本能が働いた。視界がくらりと揺れたその瞬間、床の上に脱ぎ散らかされたTシャツや丸まったストッキングなどが目に入る。
気付けば暗いベッドルームのベッドの上で姉は事切れていた。
パンティストッキングを首に巻きつけ、色の変わったやけに長い舌を出し、目を剥いて微動だにしなくなっていた。命の灯が途絶え、ただの物質に成り下がっていた。
そんな姉の上で呆然としていたナナ子は、ドアチャイムの鳴る音で我に返って飛び上がった。
鍵―――!
玄関の鍵はかけていない。ガチャリと金属的な音がやけに響いた。ナナ子は慌ててベッドルームを飛び出し、玄関へと走る。
「こんな夜更けにすみません」
ドアの隙間から顔を覗かせたのは壮年の男だった。黒いシャツに黒いジャケットを羽織った、イタリアの俳優のような洒落た雰囲気の男。落ち着いた雰囲気でありながら、勝手にするりと玄関に入り込んでいた。
「先日この上の部屋に引っ越してきた者です。ご挨拶が遅くなりまして。……あ、これおソバ」
「は、はぁ」
乱れた息を押さえつつ、ナナ子は考えをめぐらせた。手渡されたのしのついた包みを見て、このやたらと丁寧な男が自分と、そして姉とも初対面だと判断する。
「古葉谷、と申します。少々時間が不規則な仕事をしていますので、そのへんでご迷惑をおかけするかもしれませんが。よろしくお願いします」
「対馬ミナ子です」
つい姉の名を口にした。口にした後で、あらためてナナ子は姉になりきってやり過ごすのが得策と決めた。ところが意に反し、古葉谷はにっこりと笑って帰ろうとしない。
「こちらはお一人で?」
「え、ええもちろん」
「女性の一人暮らしは大変でしょう? 最近は物騒ですから、気をつけてください」
「はぁ」
「ちなみにお仕事とかは?」
「……古葉谷さんとは初対面ですよね? ずいぶん詮索好きな方ですね」
今は姉になりきるのだ。姉のように堂々とした態度で、目に力を入れて。ナナ子は姉を真似て手を腰に当てた。
「ああ、すいません。職業病です」
「……古葉谷さんお仕事は?」
「警察に勤めております」
「おまわりさん?」
背筋に冷たい物が走る。数メートル先の扉の奥にはこの部屋の本当の主が転がっているのだから。
「刑事です。役職は警部補。捜査1課、えー……つまり専門はその、コロシです」
ゴクリと唾を呑み込みつつも、ナナ子は下腹部に力を入れてニヤリと笑う男を正面から見据えて言った。
「そう、それは心強いですわ。女の一人暮らしですから」
そして、どうぞお帰りください、と言わんばかりに手で古葉谷を促した。押し出すようにして古葉谷をドアの外へと追いやると、わざと音を立てて鍵とチェーンをかけてやった。有無を言わせぬそぶりで、男を従わせる。それはまるで姉のようで、ナナ子はなんだか少し楽しかった。
再びベッドルームに取って返したナナ子は、姉がさっきとまったく同じ恰好で寝ているのを見ると、なんだか急に可笑しくなった。常に自身満々で自分を威圧していた女が、今ではだらしなく四肢を弛緩させている。死ぬとはこういうことなのか、とナナ子は思った。威厳も何もない。
しかし、笑ってばかりもいられなかった。このままでは殺人犯となってしまう。自分の正当性、過失、たとえそれを訴えたところで、矢口との結婚は当然ご破算だ。それは避けなければならない。
どうしたらいい。
ナナ子は必死で考えたが、名案など浮かばない。それでもナナ子は落ち着いて思考を廻らせる。姉は妹の前で狼狽することなどなかったから、今は自分もそうでなければならない、そう思い込んでいた。
再びチャイムが鳴った。今度は慌てなかった。鍵はロックしてあるし、チェーンもかけてある。時間も時間だから居留守を使ってもいい。
LDKに設置されたテレビドアホンの画面には、見たことのある顔が映っていた。
平原良介。ミナ子のストーカー男。
その時、ナナ子は名案を思いついた。その天啓に従い、彼女はキッチンに出しっぱなしになっていたフライパンを手に取った。
再び鳴らされるチャイム。深呼吸をして息を整えたナナ子は眉間に力を入れる。今はナナ子ではない。今の私は、対馬ミナ子だ。そう強く念じてドアチェーンに手を伸ばした。
********************
フライパンで思い切り殴りつけると、平原は崩れるように床に倒れ込んだ。おそらく突然すぎて彼には何が起きたかすら理解できなかったであろう。叩きつけた瞬間の、体がひしゃげるような気味の悪い感触を忘れるように手を服の裾に何度もこすりつけた後、ナナ子は次の作業にとりかかった。
ミナ子の服を脱がし、自分の着ている服を身に付けさせる。多少崩れても争った後なのだから問題はない。さすがに死体の着ていた服を着て帰るのも嫌だったので、ナナ子はクロゼットから適当に選んでそれを身に纏った。自分の趣味とは違うが仕方が無い。
この死体が発見されるまでどのくらいの時間がかかるだろうか。ミナ子が息絶えてから30分程度だ、明日発見されたとしてもどちらが先に死んだかなどわかるはずはないとナナ子は思った。押し入ってきた暴漢に襲われたミナ子は首をしめられながらも応戦した、シナリオは単純なほうが良い。
相手はなにせストーカー、ミナ子を知る人物は誰もがそう証言するだろう。不自然なところは何もない。
ナナ子は寝室まで運んだ平原の死体をミナ子に覆いかぶせ、フライパンをミナ子の手に握らせる。さらに玄関で脱いだ彼の靴を使い、玄関から寝室まで適当に床に跡をつけると再び平原に履かせておく。
そこでふと思いついて、ナナ子は床に丸まっていたストッキングを拾い上げた。ストーカーとしての異常性愛を示すこともできるが、なにより強盗には覆面が必需品だ。
********************
新居義也警部補は部下の紅野真巡査と共に対馬ミナ子のマンションの一室にいた。LDKの大きな吐き出し窓からは、初夏の昼下がりの爽やかな風が心地よかったが、室内に篭る独特の匂い、死臭は未だ消えず、新居はあいかわらず苦虫を噛み潰したような不機嫌そうな顔をしていた。
奥の寝室にストッキングで絞殺された女と、ストッキングに覆われた頭部をフライパンで殴打された男が折り重なるように倒れているのが見える。女はこの部屋の主で対馬ミナ子。男は隣町に住む平原良介。所持していたサイフの中にあった免許証で判明した。ちなみにこのマンションの近くの路上に彼の車は停められていた。
無断で会社を休んだ対馬ミナ子と連絡がとれずにいた同僚がマンションを訪れたところ、携帯電話の着信音が室内から聞こえることと、どことなく漂う腐敗集を不審に思って管理会社に連絡、そしてその管理会社所有の合鍵で扉が開かれて惨状が発見されている。
普段から機嫌の良い時のほうが少ない上司が、さらに不機嫌なのは、LDKをうろうろする黒いスーツの男のせいだ。紅野は心の中で何度もため息をつきつつ、冷蔵庫や食器棚の中を覗くその男に駈け寄った。
「これは……ロースのスライス? あ、この包み紙は高級和牛で有名な老舗王久のだよほら」
今度はテーブルに置かれたままのレジ袋を覗いて、黒ずくめの男は羨ましそうにそんなことを言った。王久は駅前デパートに入っているこだわりの和牛を扱う有名精肉店だ。鼻を近づけて顔をしかめる。
「冷蔵庫に入れなくて大丈夫?」
「古葉谷さん。古葉谷さんは担当じゃないんですから。あまりうろうろしないでください」
「ああ、ごめん紅田君」
「紅野、です」
紅野は訂正する。今朝会った時も訂正した。
「憶えておきます」
古葉谷は今朝会った時と同じ返事を返した。ずかずかと音を立てるように新居が進み出て、じろりと古葉谷を睨んだ。古葉谷を見上げるような形になる。
「いいか古葉谷。お前は今日は参考人なんだ。わかってるよな?」
「はい。えー……被害者の対馬ミナ子と会った、同じマンションに住む重要参考人です」
重要、にいくらか力をこめた古葉谷。とぼけたような仕種の彼をもうひと睨みして、新居は紅野を引き連れて寝室に入った。鑑識が目礼してから腰を上げて口を開いた。
「死亡推定時刻はほぼ同時期です。とはいえ分単位でわかるわけではありませんが、二人とも一昨日の午後8時半から10時半くらいの間でしょう。司法解剖でももう少し狭まるとは思いますが」
「覆面代わりにストッキングか。今時いるんだな」
吐き捨てるように新居が言う。すでにストッキングは取り払われていたが。
「情交の跡は?」
鑑識員に新居が訊ねた。
「なさそうですね。恰好からして帰宅した直後、といったところでしょうか」
「ふむ」
新居は顎をさすりながら二人の遺体から周囲に目を移す。
「この男、土足で上がりこんでますね。やはり押し入ってきた強盗か何かで、争った結果でしょうか」
「んー。それはどうでしょう」
紅野の問いに答えた声の主は古葉谷。勝手にクロゼットを開けて中を見ている。衣装持ちのようで、クロゼットの中はぎっしりと服が詰まっていた。
「押し込み強盗なら何かしらまともな凶器を持ち歩くんじゃないでしょうかねぇ」
「ああ、なるほ……どおおっと古葉谷さんッ」
新居が噛み付きそうな顔で一歩踏み出したのを見て、紅野は慌てて古葉谷をリビングに追いやった。
「ふん……まずこの二人の関係が明らかにならんとそんな推論は始まらんだろうが」
新居は低い唸り声のような声でそう言った。
********************
「ご遺族の方をお連れしました」
制服警官に促され、対馬ナナ子は再び姉の部屋へと踏み込んだ。LDKでは不味い物でも食べたのかというような顔をした迫力ある男と、真面目そうな青年とが出迎えてくれた。二人は新居警部補、紅野巡査と名乗った。リビングの隅には所在無さげに古葉谷警部補が立っていたが、ナナ子は、ナナ子としては初対面だったので軽く会釈するだけに留めた。念のため化粧で印象を変えているし、一度会った程度で一卵性の双子を区別できないだろう。
「ご足労頂きましてありがとうございます」
「あの、姉は」
「すでに警察病院のほうに搬送しました」
「……そうですか」
「お察しします」
古葉谷が口を挟んだが、新居に睨まれて一歩下がる。
「……あの、こちらの方は?」
「えー、わたくし……」
「ただの参考人です」
新居が間髪入れずに言い切って黙らせる。古葉谷は不貞腐れた子供のように下唇を突き出して肩をすくめた。新居がじろりと睨むと、古葉谷はそっぽを向く。
「対馬、ナナ子さん。ミナ子さんの双子の妹さんですね」
紅野が取り直すようにそう言って、ナナ子をソファに座らせた。
「さすがによく似てらっしゃいますね」
「一卵性ですから」
いつも同じようなことを最初に言われるので辟易しているが、今回も同じだった。ナナ子はそっけなくそう答える。
「お姉さんと最後に会われたのは?」
「……そう、ですね。2ヶ月くらい前でしょうか。正確な日付はちょっと」
「電話などの連絡は?」
「同じくらいでしょう。めったに連絡しないものですから」
「はぁ、そういうもんですか」
「あまり仲が良いわけでもないですし……」
そうナナ子は寂しげに笑ってみせる。そして、演技とは難しいものだとナナ子は妙に冷静に考えていて、そんな自分に少し驚いた。
ミナ子との最近のやりとり(ナナ子にとって話せることはろくに無かったが)について応答した後、紅野がテーブルに写真を置いた。
「この男を知っていますか? 寝室でミナ子さんと一緒に発見された男です」
免許証からの複写らしい顔写真だ。ナナ子は頷いて返す。
「平原という男です。私達と同じ高校の同級生でした」
「最近では?」
「……姉が」
「はい」
「執拗に迫られていたらしいです。いわゆる、その、ストーカーというヤツです」
「ストーカー」
紅野が咀嚼するように繰り返す。
「この男が……その、姉を?」
「状況を見るにその様子です」
ナナ子はうつむいて唇を噛んでみせる。
「何度も家に押しかけられたりしたこともあると聞いていました。こんな……ことになると知らず」
「なるほど。新居さん、やっぱり平原が忍び込むなり押し入るなりしたと見て間違いないですかね」
紅野がいくらか声を押さえて隣の上司に告げた。新居はほとんど表情を変えなかったが、「今んとこはな」と一言漏らした。
「ベッドルームで争った跡がありました。平原に襲われ命の危険を感じたミナ子さんはフライパンで応戦した。……もちろん、故人のそれは正当防衛でありますから、その」
刑事達の、互いに命を奪いあった、という解釈に、ナナ子は心の中でほくそえんだ。シナリオ通りだ。
姉も人殺しとして死んだのかと思うと噴出しそうになるが、顔を伏せてなんとか堪える。姉を殺した瞬間から姉のような過剰気味な自信が腹の中にあるのを感じてはいたが、今までの自分の理性的な落ち着きをあえて意識しコントロールしていた。そしてその巧みなバランスが、さらに自信をつける結果となる。
新居と紅野が席を外した隙に、ソファに古葉谷が腰を降ろした。体を深く静め、物言いたげなうわ目使いでナナ子を見つめる。たまらずにナナ子は口を開いた。
「あの……なにか?」
「いえ、その、よく似てらっしゃいます」
「双子ですから」
「えー、実は私、双子というのに憧れていまして、はい」
突然何を言い出すのだろうこの刑事は、とナナ子はわずかに眉をひそめた。
「同時に同じこと言ったり、感じたり、シンクロニシティっていうんですか? そういうのとかあるんですか? テレパシー的な」
興味本位なのか、体を起こして古葉谷は言った。顔は笑顔だ。
「無い、とは言いませんけど、さほど奇跡的な何かがあるわけじゃないですよ。テレパシーだなんてそんな」
「そうなんですか」
「ドラマじゃないんですから」
古葉谷は心底残念そうに顔を伏せたが、思い出したようにパァっと顔を輝かせる。
「あ、あと。やっぱり、入れ替わったりして人を騙したりとかしました? ああいうのって一度やってみたいもんですけど」
「まさか」
即答。楽しそうだった刑事の口元がへの字に変わる。
「それこそドラマやマンガの世界ですよ。あのですね古葉谷さん、たとえ一卵性の双子といってもまるっきり同じじゃないんですよ。外見がどれだけ似ていても、生活が違えば性格も纏う空気も違うんです」
くくくっと小さく古葉谷が笑った。ナナ子は馬鹿にされたように聞こえてムッとした。
「そうですよね。大人になってそんなふざけたことしませんよねぇ」
古葉谷の言葉にナナ子はギクリと身を奮わせた。殺害直後の入れ替わりが頭にあったから考えが及ばなかったのだが、双子の入れ替わりなど普通に考えれば子供の悪戯レベルの話。不敵な笑みを見せた刑事が憎たらしい。
「……それに。子供の頃は髪型が全然違いましたから」
言い訳じみた答えをしてナナ子は密かに奥歯を鳴らした。
「古葉谷ッ」
その時突然新居のドラ声がLDKに響いた。慌てて古葉谷が両手を上げて立ち上がる。まるで拳銃を突きつけられたかのようだ。
「お前な……」
不機嫌そうな目をぎょろりとさせて新居が睨み、その後ろでは紅野が汗をかいていた。
「えー、ちょっと世間話……はい、すいません」
新居の視線に耐えられなかった様子で、古葉谷はナナ子に会釈するとそのまま後ずさるように部屋を出て行った。
********************
「紅田君、紅田君」
マンションの1F玄関で紅野は声をかけられ、振り向くと案の定柱の影から古葉谷が顔をのぞかせていた。
「……紅野です」
「紅野君? 紅野君ね、はい、今度こそ憶えておきます」
こめかみを指でつつきながら古葉谷が口元をニィと上げた。相変わらず人を食ったような笑み。新居とはまったく違うタイプの刑事だが、この男の部下も何かと苦労しそうだ。軽く紅野はため息をつく。
「また新居さんに怒られますよ」
「ちょっとだけ。えー、二人の当日の行動はどのくらいわかってるのかな?」
紅野は困ったように口を曲げたが、古葉谷の覗き込むような目から顔を背けて言った。
「宝飾デザイナの対馬ミナ子は8時頃に退社しています。いつも通りJRと徒歩で何事もなく帰宅していれば9時前にはマンションに到着している計算ですが」
「ちなみに僕と会ったのは9時半過ぎでした。買い物でもしたんでしょう」
「平原良介は証券会社の経理をしていますね。係長に昇進したばかりみたいです。この年齢で係長というと、優秀なんですかね。7時過ぎに会社を出て車で帰宅。まぁアパートに一人暮らしなので確認は得られてませんが。あ、自宅近くのスーパーで8時12分に買い物をしています。サイフにレシートが残っていたので時刻は正確でしょう」
「買い物? ストーカーの前に何買ったの?」
「えーっとですね……」
手帳に挟まれていたビニル袋の中のレシートを、紅野は読み上げる。
「長ねぎ、卵、ポテトチップスに豆腐製品、缶ビール、缶チューハイ、しいたけ、それから複合調味料ですね」
「自炊するんだ」
紅野の手からレシートをひょいとつまんで古葉谷が覗き込む。
「みたいッスね」
「この複合調味料ってのは?」
「いや、そこまでは……」
「調べといて」
「はい?」
「それから、対馬ミナ子さんとナナ子さんの二人の関係についてもう少し詳しく調べといてもらって、あとは……うん、ナナ子さんの当日のアリバイなんかも」
当然のように言う古葉谷に紅野はいくらかムッとしたが、そんな青年刑事に彼は不敵な笑みを返して言った。
「よろしく頼むね、紅田君」
「……はぁ」
紅野はもはや訂正する気にもならず、げんなりした顔で頷いた。
「さて……ふむ」
古葉谷は人差し指で眉間をつつきながら考え込んだ。その後ろで紅野が何か言いたげな顔をしたが、諦めて仕事に戻っていった。
そして暗転。
切り取られたように灯されたスポットライトの光の輪の中で、古葉谷がふっと顔をあげた。その視線はまっすぐあなたに向けられる。
「えー……双子というものに憧れていたというのは正直な話です。シンクロニシティや入れ替わりといったドラマチックな体験をしてみたいというのは、子供の頃誰しも一度くらいは考えたことではないでしょうか」
そして古葉谷は肩をすくめて小さく首を振る。
「しかしながら。この事件の犯人は入れ替わりも失敗ならばシンクロニシティもありません。双子とはいえ所詮は他人なんですねぇ。
はい……ポイントはストッキングとコレ」
古葉谷が掲げて見せたもの、それはビニル袋に入ったレシート。古葉谷はあなたに向かって満足そうに頷いた。
「古葉谷三郎でした」
********************
ベランダから差し込む夕日を、古葉谷はカーテンで遮った。薄暗くなった室内が妙にひんやりと感じるのは、この部屋の主がすでに息絶えているからかもしれない。対馬ナナ子はLDKの照明をつけ、窓際に立つ黒づくめの刑事に振り向いた。
「聞きたいことがあると伺ったんですが」
何を考えているのかわからない男だとナナ子は初めて会った時から思っていたから、呼び出され落ち着かない自分と、シナリオを押し切ってやろうという強気な自分とがナナ子の中で渦巻いている。
「えー、双子というものへの憧れが、少し薄れてきた感じがします。双子だからといって神秘性があるというわけでもありませんし、入れ替わりだってそうそう上手くいくわけがありませんからね」
皮肉げな笑みを浮かべ、古葉谷はナナ子を昼間と同じソファに勧めた。
「……ええ、そんなものですよ、双子なんて」
言葉の端々にチクチクとした感触を受けながらも、ナナ子は目に力を入れたまま無理やり笑顔を作ってソファに座る。カウンタに置かれたビニル袋の横に、抱えていた紙袋を置くと、古葉谷はキッチンカウンターの高いスツールに腰をかけた。
「実は、いくつか気になることがありまして。えー、今回私、仕事じゃないんで世間話程度で少しよろしいですか? よろしいですね?」
「強引ですね、古葉谷さん」
「職業病です」
残念そうに古葉谷は首を振った。そのおどけた仕種にもナナ子はニコリともしない。妙な間が空いた。取り直すように古葉谷が咳ばらいをし、再び口を開く。
「えー、お姉さんは帰宅した直後に私と会ったということになっています、それが9時半頃。そして強盗が押し入り事件発生。キッチンからフライパンを持ち出して応戦したものの、一番奥のベッドルームで決着……ね?」
「どこが気になるのですか?」
ナナ子はまっすぐに古葉谷を睨むように見つめて言い返した。古葉谷はその視線をやはりまっすぐに受け止めて口元をニィとあげた。
「私と出会った後で襲われたのですから、平原さんは室内に潜んでいたのではなく、その後に押し入って来たと見て良いでしょう。私が部屋を出た後で、彼女は鍵をかけました。しっかりチェーンもかけています」
刑事の言葉を反すうしてナナ子は眉をひそめた。古葉谷は軽く頷いて続ける。
「ミナ子さんのストーカーだった平原さんが、たとえ合鍵等を用意できていたとしても、チェーンまでは外から開けられません。このマンションのインターホンにはモニタもついている。……つまり、ミナ子さんは自ら平原を確認して、招きいれたということになってしまいます」
「ちょっとまってください」
ナナ子は小さく手を挙げた。古葉谷はまるで教師のように手で彼女を示して「どうぞ」と言った。
「姉は帰宅した直後だったんですよね、平原が室内に潜んでいた可能性だってあるでしょう?」
古葉谷は不敵な笑み浮かべ人差し指を立てた。
「鑑識によると、平原さんの靴の跡は玄関からリビングダイニング、そしてベッドルームにしかありませんでした。LDKには隠れるような場所もありませんから、潜んでいたというのならば場所はベッドルームということになります」
「じゃぁベッドルームだったんでしょう」
「ベッドルームに潜んでいたストーカーに対し、キッチンでフライパンを持ち出して応戦した、と」
「姉は強気な人でしたから」
「しかし、玄関ドアのチェーンははずした。発見時ドアの鍵はかかっていましたが、チェーンはかけられていませんでした。果たしてミナ子さんは勇ましくも戦おうとしたのか、それとも、逃げようとしたのか。……はっきりしません」
「襲われてフライパンで応戦し相手がひるんだ隙に逃げ出そうとした、で良いのでは?」
古葉谷が言い返すと、素早くナナ子も反論する。
「それでは事件現場はもっと玄関の近くでなければなりません」
「そうかしら。乱暴目的ならベッドルームまで姉を引き戻してもおかしくは無いのでは?」
「行ったり来たり忙しいですね」
「可能性の問題です」
古葉谷が初めて黙り、ナナ子は微笑みを浮かべた。ナナ子は目を瞑る刑事をしばらく見つめてから、もう帰ろうかとソファから立ち上がった。ハンドバッグを手にとる。
「えー、可能性の問題です」
古葉谷は目を閉じたまま言った。
「最初に引っ掛かっていたのは、ミナ子さんが着ていた服です。クロゼットの中を見せていただきましたが、他の服に比べて地味だったように感じました。そして、その服は仕事の時に着ていたものでは無いそうです」
「仕事から帰ってきて着替えた、と?」
「はい。クロゼットはベッドルームです、着替えもそこでしたのでしょう。しかし、そこには平原さんが潜んでいたはずなんです」
ナナ子がわずかに動揺する。刑事は再び恭しくソファを勧めた。
「……一度帰宅して、また外出する。その間に平原が忍び込み、帰宅した時に古葉谷さんと出会う」
「ミナ子さんのお化粧ですが、マスカラとアイシャドーだけが落ちていました、ベッドルームの鏡台脇のごみ箱に、化粧を落としたコットンが捨てられています。いいですか、ミナ子さんはベッドルームで化粧を途中まで落としているんです」
そこまで言って古葉谷はナナ子に目をやった。彼女は黙ったままだ。
「帰宅してからベッドルームへ行って、そこでマスカラを落とす余裕があった。今あなたが言った順番では、ベッドルームで不法侵入している平原さんと対峙しつつ化粧を落とし始めたということになります」
「……不自然ですね」
「自然な解釈があります」
古葉谷は再び口元に笑みを浮かべた。
「第三者の介入があった」
「私のことを言っているのですか?」
古葉谷は睨みつけるナナ子におどけて肩をすくめて見せた。ナナ子の顔が険しくなる。
「不愉快です」
「それは大変失礼しました。しかし、可能性の問題です」
いけしゃあしゃあと。ナナ子は苛立ちを隠せずに奥歯を鳴らした。
「その第三者の存在を仮定するとします。彼、ないし彼女は少なくともミナ子さんが部屋に招き入れるに足る人物であることは間違いありません。先ほど話したドアの鍵とチェーン、そしてインターホンのことからもその仮説は証明されます。いえ、もしかしたらもっと前からすでに室内にいたのかもしれません」
「古葉谷さんはそれを私だとおっしゃりたいのですよね」
ナナ子の言葉に古葉谷は小首をかしげる。
「ちなみに、ミナ子さんが化粧を落としたのは本人の意思でしょう。他の誰にもそんなことをする理由が思いつきません。……続けます。平原さんが呼び出されたのか、それとも偶然居合わせたのかはわかりませんが、少なくとも第三者は彼がミナ子さんのストーカーであるということを知っている人物です。そうでなければ平原さんにストッキングをかぶせて異常性を示したりしません」
「その、第三者の存在は仮定でしか……」
古葉谷はナナ子の言葉を手で制した。飄々としたたち振る舞いの中、目だけは鋭くナナ子を射抜いた。
古葉谷はゆっくりとカウンタに置かれた紙袋に手を突っ込んだ。
「事件の日、平原さんはこんなものをスーパーで買っています。えーと、まず長ねぎと卵」
一つずつ紙袋から出してカウンタに並べていく。
「しいたけ。豆腐製品」
豆腐製品、と言って取り出したのは焼き豆腐だ。
「そして、複合調味料」
コトリ、と音を立てて置かれた小瓶には『すき焼きのたれ』というラベルが貼られていた。
「……えー」
古葉谷は並んだそれらの品物を手で示す。
「すき焼きを作ろうとしていたようです。彼のアパートでもすき焼き用の鍋が用意されていました。しかし、これでは何か足りません」
小さく唸るような笑い声を刑事はもらした。そしてゆっくりともう一つの袋、ビニル袋のほうを手にとった。
「こちら。ミナ子さんが駅前のデパートで買った高級和牛。……長い間放置されてましたから残念ながら痛んでますが。
はい、これ。ちゃんとスライスされています。ステーキ用じゃありませんし、こんな高いお肉で肉じゃがは作らないでしょう」
ナナ子は古葉谷の言葉を理解するのに時間がかかっていた。混乱である。古葉谷はそんなナナ子を見て不敵な笑みを浮かべてカウンタに並べられた品物をもう一度眺めた。
「さて。……ストッキングを被ったストーカーが、どうしてこんなものをセッティングしたんでしょうか」
そんなバカな。ナナ子は刑事の言わんとしていることが理解できずにいた。
あのプライドの高い姉が、ストーカーまがいの男を。
「ナナ子さんとミナ子さん、外見は本当によく似ています。しかし平原さんは一途にミナ子さんだけを思い続けていたのでしょう。えー、ナナ子さんの婚約者、矢口さんでしたか。彼はミナ子さんからナナ子さんに……失礼な言い方で申し訳ありません、乗り換えたわけです。それはもちろんナナ子さんの魅力なんでしょうけども、平原さんはそうではなかった。平原さんがミナ子さんの外見以外の部分を認めていたことに、ミナ子さんは気づいたのです。もっとも、ミナ子さんはナナ子さんの手前、かつてストーカーだと言い放ってしまった男とお付き合いすることを隠さざるを得なかった」
ナナ子は姉のことをわかっていなかった。双子なのに。何も理解できていなかったのだ。
「おわかりですね。平原さんとミナ子さんはあの日の夜、平原さんの家ですき焼きを食べる予定だったんです。高いお肉をミナ子さんが用意していますから、もしかしたら昇格のお祝いなのかもしれません。しかも、帰宅したミナ子さんは一旦化粧を落とそうとしていました。平原さんの家に行く為に化粧をし直すつもりだったのでしょう。もしかしたら、化粧せずに気兼ねなく会っていたのかもしれません。
どっちにしろとにかく、二人はそういう関係なんです。えー、つまり。たとえ直前にケンカをしてしまったのだとしても、平原さんが土足で上がりこみストッキングをかぶる理由にはなりません。……第三者の存在を認めていただけますか?」
ナナ子は何も言わない。その沈黙は肯定を意味した。力をこめていた目が伏せられる。
「あの時私が会ったミナ子さんはあなたですね」
ナナ子の体が深くソファに沈んだ。そこでナナ子は最初に古葉谷が言った言葉を思い出す。
「古葉谷さん。さっき、入れ替わりも上手くいくわけがない、とおっしゃりましたが、どうしてわかったんですか?」
ナナ子の問いに古葉谷はなんでもないといった様子で答える。
「ああ。ナナ子さんが最初に私の名前を言った時、まだ私、名乗ってません。新居警部補に睨まれてましたから」
古葉谷が「ご挨拶が遅くなってすみません」と笑う。
その、刑事らしからぬやけに楽しそうな顔を見たナナ子は、体の力が抜けていくのを感じた。
●《自己批評》
『原点回帰ということで「古畑任三郎」のパロディ。長いうえに趣味全開。
原点回帰というか、成長が見られないというか。
毎度毎度どこかで聞いたような名前が出てきますが、お借りしているのは名前という記号だけです。たとえ殺人犯役でも死体役でも、お気を悪くしないようお願い致します。ひらにひらに。』
《Missing Essayist Evolution 松永夏馬》
゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜
◎ストッキングを被った強盗が、どうしてこんなものをセッティングしたんでしょう。
著者:AR1
゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜
◎フルーツパフェはアイスのまわりをフルーツが囲んでおりまして、フルーツクリームパフェはその上にさらに生クリームがかかっております。
『とあるオフ会の出来事』
著者:知
「フルーツパフェはアイスのまわりをフルーツが囲んでおりまして、フルーツクリームパフェはその上にさらに生クリームがかかっております」
「違いはそれだけなんですか?」
「はい」
「そうなんだ……」
どちらにするか悩むなぁ、そう呟きながら少女がメニューをじっと見つめている。
かれこれ5分ぐらい悩んでいるのではないだろうか。
注文を取りにきたウェイトレスの表情はにこやかではあるが、内心どう思っているかはわからない。
「早く決めてくれよ……」
ついに少女の隣に座っている少年がうんざりした様にそう呟いた。
「よし、決めた。フルーツクリームパフェ、下さい」
少年の呟きが聞こえたかはわからないが、ようやく何を注文するか決めた。
「フルーツクリームパフェ、ですね。注文は以上で宜しいでしょうか?」
「あっ、フルーツパフェ、お願いします」
少女の正面に座っている少年がそう言った。
「注文を繰り返します。チョコレートパフェ、フルーツパフェ、フルーツクリームパフェが一つ、カフェアメリカーノが二つ、アイスコーヒーが一つ、アールグレイがお一つ、以上で宜しいですか」
「はい」
ウェイトレスが少女達のテーブルを離れると少女と少女の正面に座っている少年が微笑みあう。
「よくわかってるね」
「当たり前さ」
少女が両手を前に伸ばし、少年はそれに応え両手を彼女の両手にパチンと音を鳴らし合わせる。
「……お前ら本当に初対面なのか?」
あまりに二人の息が合っているので少女の隣に座っている少年がそう突っ込みを入れた。
他の客がこのやり取りを見聞きしていたら誰もがそう思うだろう。
「初対面以外にどう見えるって言うのよ」
「どうこからどう見ても、そう見えないから言っているんだろうが」
少女の言葉に隣に座っている少年がそう返す。
「……ミソラと陸も初対面には見えないぞ」
今まで口を出さずにやり取りを見ていた青年が二人の会話を聞いてそう突っ込んだ。(因みにこの青年は少女の左斜め前に座っている。)
他の三人よりも年をとっている様に見えるのは落ち着いているからだろうか。
(実際、他の三人よりも年をとっているのだが、それ程離れているわけではない)
「むぅ……」
青年の言葉に陸と呼ばれた少年が気まずそうに頬をかいている。
「結局、今日来るのはこの四人だけ?」
ミソラの正面に座っている少年がミソラにそう尋ねた。
「学生は夏休みだけど、社会人はまだ夏休みじゃないからね」
「他のメンバーって全員、社会人だっけ?」
「学生の人もいるけど、私や陸、遊のように高校生の人が多いからね」
「あ〜住んでいる場所がここから遠いのか」
ミソラの言葉に頷きながら遊と呼ばれた少年はそう返した。
「色々な所に住んでいる人、色々な年齢の人と交流できるのがネットのいいところだけど、こうしてオフ会するときに困るよね」
ため息混じりにそうミソラは呟いた。
今回のオフ会の幹事はミソラだ。日程の調整で苦労したのだろう、ため息が重たい。
「盆前とか盆にすれば社会人の人も来れたんじゃないか?」
「盆前や盆だと用事がある人が多いから、結局参加できる人数が変わらないのよ」
「そうなのか」
「ええ。他に別の理由もあるんだけど、その理由を今言うと後の楽しみがなくなるから内緒ということで」
「あ〜この後、何処か行くのって聞こうと思ってたんだけど、それも内緒?」
「うん。内緒」
こんな会話をしている内に注文していた品が全部来た。
「ご注文は以上で宜しいでしょうか?」
「はい」
ウェイトレスがミソラ達のテーブルを離れるとミソラは自分が注文したフルーツクリームパフェと遊が注文したフルーツパフェを見比べた。
「本当に生クリームがかかっているかしか違いがないね」
「……これで値段が200円違うんだよな……」
フルーツクリームパフェとルーツパフェの違いは生クリームがかかっているかいないか。それなのに値段が200円も違うのだ。
しかもフルーツクリームパフェの方が割高感があるのにこの店の一番人気はフルーツクリームパフェらしい。
「「「……」」」
ミソラ、陸、遊の三人共がじっと同じ場所を見ている。
その視線の先にあるのは……
「どうしたんだ、ミソラ、遊、早く食べないと融けるぞ?」
チョコレートパフェを美味しそうに食べている青年だった。
「いえ、キラさんがそういうのを食べているのが意外でして」
三人の気持ちを代弁するようにミソラがそう言った。
「むっ、そんなに意外か?」
「意外と言うか何と言うか……」
陸は似合わないという言葉を何とか飲み込んだ。
「甘党とは聞いてましたけど……」
「喫茶店に友達とかと行って、俺が甘いものを頼むと皆、驚くんだよな」
「その友達の気持ちよくわかりますよ」
「最近は一人でこういう店に入って甘い物頼むのが恥ずかしくなくなったけど、高校時代は恥ずかしく他の人を連れて行ってたな」
「男性だけでですか?」
「いや、恥ずかしがって行きたがらない奴が多かったから、クラスの女子とよく行ったよ」
キラのその言葉を聞き、ミソラの目がキラリと光った。
「ほぅ……女性とですか……」
「色っぽい話は全くないぞ」
そんなミソラを見てキラは苦笑しながらそう言った。
「え〜そうなんですか?」
「何度も同じ子を誘うのも悪いかと思って毎回違う子を誘ってたら、昔からの知り合いの子に忠告されたよ。あなたが誘うと期待する子や勘違いする子が多いから意味深に誘うなって」
「あ〜キラさん程の美形の人ってそうは見かけませんからね」
キラの言葉に頷きながら納得するミソラ。
ミソラのその言葉に今度は陸の目が光った。
「まさか、惚れたか?」
「う〜ん、確かにキラさん程の美形の人は滅多にいないけど、私はただ美形なだけの人ならパーティーとかで見慣れているからね。滅多にいないとは言ってもいるところにはいるし」
陸の言葉に対し冷静にそうミソラは返した。
「お嬢だ……お嬢かも知れないとは思ってたけど、本当にお嬢だ」
「ええ、お嬢よ。お嬢様とお呼び」
「「ははぁ、お嬢様」」
ミソラの言葉に陸と遊はテーブルにひれ伏しそう言った。
「お前達、本当に息が合っているな」
キラが思わずそうこぼしてしまうのは仕方がないことだ。
「そうだった。キラさん、一つ質問宜しいですか?」
ミソラが唐突にそう言った。
「答えられる範囲内なら。因みに彼女はいない」
「あっ、いないんですか……意外……キラさんって何であんなHNなんです?」
キラの言葉に反応しつつそう尋ねるミソラだった。
キラというのは彼の本当のHNではない。
彼の本当のHNは殺人者なのだ。
殺人者→Killer(キラー)→キラという事でキラと呼ばれている。
「ああ、俺の本名がキラなんだよ」
「あっ、そのままなんですね。名字ですか?」
「ああ、漢字はこうだ」
キラは鞄から手帳を取り出し「綺羅」と書いた。
「吉良上野介の吉良とは違う字なんですね」
「よく間違えられるよ」
ミソラの言葉にキラはため息を吐きながらそう言った。
「確か陸は本名そのまま、遊はもう一つのHN小鳥と共に本名をもじったものだったよね」
私は読み方を変えたものだけど、と言うミソラの言葉に陸と遊は頷いた。
「本名そのままの陸は置いておくとして、遊の本名、HNから想像がつくよね。2つのHNと本名をもじったものということを知らなきゃ想像できないだろうけど」
「あ〜やっぱりバレバレか」
「それはそれだけ情報が揃っていればな」
苦笑いを浮かべながらそう言うキラ。
しかし、一人だけその会話にはてなマークを浮かべている人物がいる。
「……あの俺、さっぱりわからないんだけど」
陸だ。
陸のその言葉にミソラとキラが呆れたような視線を投げつける。
「わからないってそのままなんだけど」
「そのまま?」
「はぁ……こうよ」
ミソラがキラの手帳を借りて「小鳥遊」と書いた。
「……これ、何て読むんだ?」
「やっぱり知らないかのね」
「読み方を知っていたら遊の本名の予想がつくだろうしな」
陸の疑問にため息を吐きながらそう返すミソラとキラ。
「タカナシって読むんだよ」
「これでタカナシ、って読むのか」
遊の言葉に関心したように陸がそう呟いた。
「ミソラ、時間大丈夫なのか?」
会話が途切れたところでキラがミソラにそう聞いた。
「あ〜そろそろ移動した方がいいね」
腕時計で時間を確認し、そう言ったのでミソラ達4人は店から出た。
「これから何処へ行くんだ?」
店を出るとすぐに陸がミソラにそう聞いた。
「ん〜3時30分まであそこで時間つぶし……かな」
ミソラはそう言うと一際大きなビルを指差した。
「時間つぶし?」
「そう。実は3時ぐらいから来れるかもしれないっていう人がいてね。あそこで待ち合わせになってるの」
今が2時45分。ゆっくり歩いても3時には十分にあのビルに着くだろう。
「どうするんだ、来るかもしれない人が来るか時間がくるまでじっと待っているのか?」
ビルの中に入ると陸がそう言った。
「俺、見たいものがあるから行っていいか?」
「あっ、俺も」
ミソラがどうしようかと悩んでいるとキラと遊がそう言った。
「そう。じゃあ、私と陸はここで待っているよ。待ち合わせ場所がここになっているから私はあまり動きたくないし」
「俺も少し……」
「却下ね」
陸の言葉を遮ってミソラは無碍なくそう下した。
「何故だ」
「時間までに戻ってきそうにないから」
陸は遅刻の常習犯らしく、実際、今日も集合時間よりも15分遅れた。
そう返されると陸は何も言い返せなかった。
「なぁ、それ何なんだ?」
キラと遊の姿が見えなくなると、陸はミソラの背負っているものを見ながらそう言った。
「これ?今はまだ秘密」
「重くないのか?」
「それは、重いわよ」
ミソラが背負っているものは長さが1m以上ある。幅も結構あるし、ミソラが女性にしては背が高いほうでも、背負っているのではなく背負われているように見えてしまう。
「それにしても、カップルが多いわね」
「若者向けの店が入っているからなぁ」
「私達、傍から見るとどう見えるのかな……例えばこんな風に腕を組んだりしたら」
そう言うとミソラは陸の腕に自分の腕を回した。
「……おい」
「いいじゃないの減るものじゃないし」
「減る減らないの問題じゃない。それに当たってる」
陸が慌てた様子でそう言うが、ミソラは聞く耳を持たない。
「当たってるって何が?」
そう言うとミソラは陸の腕をより自分の胸に引き寄せる。
「……俺をからかって楽しいか?」
「ええ、凄く」
「ふ〜ん、楽しそうねぇ〜」
陸が肩を竦めていると背後からドスの聞いた声が聞こえた。
「な、何で海がここにいるんだ? 今日はバイトじゃなかったのか?」
「何でって言われてもねぇ」
海と呼ばれた少女は陸の腕をじっと見ている。
「えっと、これはだな……ミソラが……」
「陸、この人誰?」
陸が何か弁明しようとしたらミソラがそんな事を聞いてきた。
「『ミソラ』に『陸』ねぇ……呼び捨てで呼び合うほど仲がいいんだ♪」
歌うような口調でそう言っているが、それが余計に恐ろしさを出している。
「あの……だなぁ……」
目線でミソラに助けを求めてみたが、ミソラは微笑んでいるだけだ。
「あはは……」
海の乾いた笑いが陸の耳に異様に響く。
「あの、あの……だなぁ……」
陸は何かを言おうとしているが言葉が上手く出てこないようだ。
「く……」
「……く?」
「……く……くぅ……あ〜もうダメ……可笑しい……」
海が急に笑い始めた。
「海、だめだよ、笑ったら。折角、これから面白くなるところだったのに」
「……もしかして俺、からかわれた?」
「そうよ……ああ、可笑しかった」
思う存分笑ってから海はそう返した。
「来るかもしれないもう一人って、海の事だったのか。今日は用事が入っているから無理って言ってなかったか?」
「久しぶりに会うんだし、こんなサプライズもいいかなって思ってね」
陸の疑問にミソラがそう答えた。
「久しぶり?」
「もしかして、気づいてないの?」
「気づいているわけがないでしょ。気づいてたらあそこまで慌てないでしょ」
陸が頭にはてなマークを浮かべているのを見て、ミソラと海は好き勝手にそんな事を言う。
「え……何……」
「陸・海・空……これでわかるでしょ?」
「……もしかして……空(ソラ)なのか?」
海のヒントに陸は驚いた表情をしながらそう言った。
「ええ、久しぶり」
ミソラの本名は美空(ミク)、海の本名は七海(ナナミ)という。(因みに七海のHNはニックネームと同じ海)
3人は幼馴染でそれぞれの名前に陸・海・空の文字が入っているので、陸海空トリオと呼ばれることもあった。
ミソラが小学2年生の時に転校したため、離れ離れになっていたのだ。
「久しぶりだなぁ……今更だけど」
「本当に今更だけどね」
陸の言葉にミソラが肩を竦めながらそう返した
「雰囲気が違ったから全くわからなかったぞ」
「うん、ソラ、雰囲気変わったもんね。私も、昨日会ったときびっくりしたもん」
陸の言葉にそう同意する海。
「あ〜そろそろいいか?」
背後からそんな声が聞こえた。
「あっ、ごめんなさい。キラさん」
「いや、無事、海とも合流できたようだな」
人数が一人増えていることを確認すると、キラはそう言った。
「キラさんは海がくること知ってたのか?」
「ああ。因みに知らなかったのは陸、お前だけだ」
キラの容赦ない一言に落ち込む陸。
「で、ソラ、何処に行くの?」
そんな陸を無視して海がミソラにそう聞いた。
「背負っているのは……フォニだよね?もしかして、ソラのフォニ、聞けるの?」
目を輝かせながらミソラにそう言い迫る。
「ケースだけでフォニってわかるって……海、本当にフォニが好きなんだね」
「ええ、私は弾けないけど……聞くのは凄く好きだよ」
ミソラの感心したような呆れたような言葉に海はそう嬉しそうに答えた。
「では、そんな海に問題。この周辺にフォニで有名な場所があります。何処でしょう?」
「この周辺……もしかして……」
「そのもしかして、よ」
「え?音楽祭以外の日でも部外者、入れるの?」
「事前に許可を得ればね」
「うわ〜楽しみ♪」
海はミソラの両手を握り締め、上下に大きく振り喜びを表現する。
「……で、結局、何処に行くんだ?」
話についていけていない陸がそう聞いてきた。
「私の通っている高校よ」
「ソラ、あそこに通っているんだ。ということは優秀なフォニストなんだ。う〜ん、楽しみ」
ミソラの言葉に反応し、そう楽しそうに言う海。
「時間には早いが、行くか。海が待ちきれなそうだしな」
そんな海の様子を見て苦笑しながらキラはそう言った。
今でも他の客に半分見世物状態になっている。
これ以上、ここにいてもいい見世物になるだけだろう。
実に気の回るキラであった。
●《自己批評》
『どうも、前作、Quartetの外伝でした。
ミソラ=美空(ミク)でした〜
バレバレ? それとも感じが違うのでわからなかった?
でも、素の美空はあんな感じなのですよ。
本当はミソラの通う高校まで行って、演奏するところまで書くつもりだったのですが、長くなったので行く前でストップ。
勿論、演奏する場にはアリスと萩原先輩もいます。
アリスと萩原先輩にキラを紹介するときに殺人者と言ってアリスがパニックを起こすというシーンを考えていたのですが、そこまで書けなかったw
まぁ、アリスは知らない人に聞いてもらうという時点で半分パニックを起こすのですが、それは別の話。
もしかしたら、後で演奏する場所まで追加するかも。』
《Liar's villa 知》
゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜
◎実に気の回る殺人者であった。
『悪人正機』
著者:コサメ
実に気の回る殺人者であった。
彼は私のために椅子をすすめ、さらには紅茶とクッキーを出してきた。私は彼の言うがままに椅子にすわり、クッキーをかじって紅茶を飲んだ。しかし私は素直にゆったりと紅茶やクッキーの味をあじわうことができないでいる。すぐそこで、血まみれになって倒れている女がいやでも視界に入ってくるからだ。
「その紅茶は私のお気に入りなんです。おいしいでしょう?」
「はぁ……まぁ……」
彼は茶葉を買った店のことだとか、他にも様々な茶葉があってとてもおいしいんだとか、そういったことをにこやかに話し始めた。私は適当に相槌をうちながら、どうやって逃げ出そうかということをぐるぐる考えていた。しかしなかなか思考がうまく働かないでいる。そうしていつしか私はこの場の打開策を考えるのはやめて、今までのことをひたすら後悔するだけになっていた。
なぜ私はすぐそこで死体が横たわっているというのに何もせず初対面の男に茶をすすめられてのんきにお茶を楽しんでいるというこの奇妙な状況にいるのか。それは私が盗みを働こうとしてこの家に侵入したのが全ての始まりだった。よし誰もいないぞ、これはいけるぞ、とびくびくしながら家に侵入。月明かりがさしこむ薄暗い部屋には、たくさんの本が壁一面にならんでいた。さらにそれだけでは足りないというように、平積みになった本の山もそこらじゅうにある。何か金目のものはないだろうかと、そろりそろりと物色していると、いきなりパッと電気がついた。息を止めて後ろを振り返ると、そこには血まみれの男がいた。彼は片手に包丁を握りしめて、もう片方の手では女の頭部をつかんでいた。その女は血まみれで、だらりと四肢を投げ出してぐったりとしていた。人形かなにかだろうかと思ったが、見るからにそれは人間だった。あっけにとられて絶句していると、男は「こんばんは。私に何かご用で?」と微笑みながら言った。私が何も言えないでいると、彼は「ちょうどこれから紅茶をいれようと思っていたところなんです。よかったらご一緒しませんか」とにこやかに言って私を見つめた。私は頷くしかなかった。ここで下手に騒いだら何をされるかわかったもんじゃない。すると彼は「ではこちらへ」と言って、死体をずるずるずるとひきずりながら私を奥へ案内した。彼が歩いた後には血の跡が残った。私はそれを踏まないようによけながら歩いた。そして今に至る。
彼はとくに何の変哲もない青年だ。紅茶を飲む仕草はどこか中性的でもある。もっと違う場所で出会っていれば、そして彼のシャツに返り血がついていたりしなければ、きっともっと気軽に楽しく話すことができたかもしれない。
「ところで、あの部屋で何をしていたんです?」
私はぎくりと肩をこわばらせた。しかしここで何を言っても無駄だということは明らかだった。私は正直に白状した。借金を抱えているということ。だからどうしても金が必要だったこと。
「それはそれは、お困りでしょう」
すると彼は何か考えるようなそぶりをし、ふと自分の腕時計をはずして私の前に置いた。金色の、見るからに高価な時計だった。しかしベルトの部分には血がついている。
「これを売れば、少しは足しになると思います」
「そんな……受け取れません」
「ああ失礼しました。こんな血だらけの時計じゃ、売るにも売れませんよね。すぐに拭きますので……」
「いや、そういうわけでは……いえ、そうなんですけど……」
すると彼はハハハと笑った。私もつられて笑いかけ、しかしすぐにぎこちないものに変わった。膝の上の手は知らずのうちにぎゅっと握りしめていて、汗でぐっしょりと濡れている。背中も然りだ。それに気付いているのかいないのか、向かい側に座る彼はゆっくりと紅茶を飲んでいる。
私はちらりと女の死体を見た。それは目をそむけたくなるような、無残なものだった。凝視することができないくせになぜか視線はすぐに死体にいってしまい、そしてまたすぐにそむけ、といった動作を繰り返した。
「彼女は私の恋人です」
彼の言葉に私は息を止めた。
「いえ、恋人“だった”といった方がいいでしょうか。彼女はつい先日、他の男と結婚しましたから」
彼は死体を見やった。その視線はとても無機質なものだった。私は背筋がゾクリと粟立つのを感じた。そして何か言わなければ、という強い衝動が湧き上がった。
「あの……私は、勝手にあなたの家に泥棒に入ったくせに、何かを言える立場ではないんですけれど……その……」
口ごもっていると、彼は次の言葉を促すように、口元に微笑を浮かべながら私を見つめた。私はごくりと唾を飲み、一度息を止めて、
「どうして、こんなことをしたんですか」
すると彼は目を細めてにこりと笑った。まるで私の言葉に満足しているような笑みだ。
「そうですね……まぁ、しいていえば『それは太陽のせいだ』ですかね」
お読みになったことはありますか? と彼は静かに言った。何のことだかわからずに黙っていると、彼は続けた。
「なぜ殺人を犯したのかと問われて、主人公は法廷でこう言うんです。『それは太陽のせいだ』――とても正直で、スマートな回答です。そのときの主人公の気持ちが、私にはよくわかる」
彼は私を見つめた。私が何かを言うのを待っているようだった。しかし私が何も言えないでいるのがわかると、そのまま続けた。
「つまり、理由なんてないんですよ。もし明確な動機が自分でわかっていたのなら、きっと彼は人殺しをしなかったでしょう。私もそうです。理由がわかっていたなら彼女を殺さなかった」
「で、でも……それでもあなたは人を殺して、あ、悪人だということには変わりないと思います」
「悪人」
「はい。わ、私も、ですけど……」
私は不法侵入、あなたは殺人で、立派な犯罪です。だから一緒に自首しましょう。そう言おうとしたときだった。
「……一体、何が悪で、何が善だというんだ」
彼は少し目を伏せて、つぶやいた。私が「え?」と聞き返すと、彼は誤魔化すように軽く微笑んで、
「紅茶の味はいかがでしたか」
「は?」
「紅茶の味は、いかがでしたか」
私はいつの間にか空になったカップと彼を交互にみやり、悩んだ結果、
「……よく、わかりません」
すみません。そう言うと彼は意外にもにこりと微笑んだ。
「泥棒さん、あなたは非常に礼儀正しい人だ」
そのとき私は、なぜかこの青年を哀れんでいた。借金に困っていると言えば何のためらいもなく腕時計を差し出すが、その一方で人を殺す凶悪な部分も持っている。死体の傍らで紅茶を飲み、泥棒に入った私と出くわしても口封じをしようともしない。
法律の上では、私よりも彼のほうが重罪だろう。しかし私はどうしても自分のほうがよっぽど悪で、汚い人間であるとしか思えなかった。
●《自己批評》
『だからどうした、と思ったそこのあなた。それで正解です。』
《Amadeus Recipe コサメ》
゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜
◎非常に礼儀正しい人なんです、この泥棒は。
『礼儀正しい泥棒』
著者:かしのきタール
(一)
――泥棒だな。礼儀正しい泥棒みてえ。
汗染みと焦げ跡のついた煎餅布団の上で、起き上がりざまタバコに手を伸ばしたヤスジは「礼儀正しい泥棒」という思いつきを笑おうとして失敗した。深酒とタバコのせいで舌は粘るし、治療しないままの奥歯はズキズキと痛む。
――歯医者に行けって、うるさかったな。
やっとの思いで薄笑いに成功した途端、慣れない胸苦しさに襲われて、あぐらをかいた足の上、ゴムの伸びたトランクスにかぶさっているたるんだ腹めざして首を折り、「はぁ〜」と長いため息をつく。泥をかぶったみたいに頭が重い。小山のような肩を縮めて、しぼみかけたバルーンよろしくしょぼしょぼと丸くなると、吐きそこねたタバコの煙が背中に開いた空気穴から湯気になってのぼっていく気がした。
突然鳴り始めたピーピーという電子音が何なのかを思い出せないまま、ぼんやりと目をあける。ウトウトしたらしいと気がついて頭を起こすと、ヤスジの代わりに炊飯器が湯気を出していた。予約タイマーがセットされていたらしい。
えり子は律儀な女だ。
前夜、コンビニの袋をひとつ下げ、一人住まいのアパートの一室に帰ったヤスジは、抑揚をつけた「たんだいまぁ〜」を自分に向けて歌うようにつぶやきながら玄関から続くキッチンスペースを抜け、まっすぐ数歩でたどりつく和室の隅のテーブルに鍵を投げだしたあとで、首をかしげたのだった。
えり子が来るようになって一変した住まいは、いつものようにゴミひとつ落ちていない。雑誌はまっすぐに積み上げられているし、その日の朝脱ぎ捨てていったTシャツもズボンも、この前の休みに身に着けたトレーナーとジーパンも、洗濯され畳まれて、清潔な匂いを放っている。いつもと同じなのに、何か大事なものが抜けている気がする。シャワーだけの入浴を済ませ、ビールを出そうと開けた冷蔵庫の扉をいったん閉めかけまた開けて首をかしげた。やっぱり何かが抜けている。
テレビの画面を見るともなく眺めながら、コンビニの袋からカッパえびせんを取り出して、口をとがらせ顎を突き出して缶に吸いつく。ビールを口に含んでからあらためて部屋を見回すと、やっと異変の元に気が付いた。えり子が持ち込んできたものだけが、きれいさっぱり消えていた。
「うお……!?」
飲み込めなくなったビールが、喉もとで泥の味になった。
ゴクリと大きく喉を鳴らして、喉にたまった苦い液体を飲み下す。しばらく止まった呼吸のあとに、「はぁ〜」と長いため息が漏れた。あらためて部屋の様子をまじまじと見つめて、消えた物を指折り数えてみることにしたヤスジは、「壁に立て掛けた折りたたみテーブル」と「冷蔵庫のタッパーが三つくらい」のところで挫折した。「三つくらいのタッパー」を、一つとするのか三つと数えた方がいいのかで迷い、面倒臭くなったのだ。
「しゃーないか、な」
面倒臭い気分を維持する努力と、それをあきらめに変える根性を出すために声をあげ、ビールを一気に飲み干して、もそもそと煎餅蒲団にもぐり込む。身体の疲労と回った酔いにいたわられ眠りに誘われながら、それでもヤスジはひそかに願った。
――目覚めたら元に戻っていますように。
目覚めても、消えたものは消えたままだった。
――礼儀正しい泥棒、かあ。
つぶやく間に、炊飯器の音と湯気の匂いに反応した腹が鳴る。
落ちたタバコの灰を軽く払ってから、布団を畳んで横にずらし、振り向きざま、壁際に寄せたテーブルの端を片手で持って手前に引く。小さな折りたたみテーブルの上は、放り出されて広がった鍵の束と、端のほつれた布製の財布、ポケットからつかみ出してくしゃくしゃになったレシートと小銭が少し、空き缶がいくつかとリモコンで手いっぱいだ。鍵の束を手の甲で押しながらこじあけるように作った隙間に吸い殻のはいった灰皿を置き、腰をかがめた姿勢でテレビに向けてリモコンのボタンを押すと、どっとわいた賑やかな笑い声が、ヤスジがかぶった泥をかすめて去った。
――あ、そうだ。
メラミン製の白い灰皿も、えり子が持ってきたものだと思い出した。「これだけ置いてったのか」とつぶやきながら、両手を広げて太い指を見る。どの指を折って数えたらいいかわからなかった。その丸い掌を取ったえり子が「ぷくぷくしてる」とうれしそうに言った声も思い出してしまった。
えり子は無邪気な女だ。
(二)
「フンフフン〜フフ〜フフン〜フ〜フフゥ〜ン」
大きく後ろに倒したシートに寝ころぶ姿勢で体を預けて鼻歌を歌うヤスジは、身体の向きを左にかしがせ、右手だけを大きくのばしてセダンのハンドルを操作していた。
橋を渡ると急にせばまった一本道になる国道は、点在する個人商店群を抜けるとじきに湾を臨む場所に出る。海に背を向けて道を折れ、うねうねと曲がる小路を行くと、やがて黄色い帽子をかぶったランドセル姿の子供が描かれた「飛び出し注意」の看板が数メートル置きに現れ始めた。近くの小学校の外壁には、生徒たちの顔写真を焼き付けた陶壁がある。幼いヤスジの顔もそこに残っているはずだった。
舗装道からそれて、砂利道の脇に停車させ、助手席に置いたボストンバッグと紙袋を両手に持って車を降りる。坂道に向かうと、野菜を入れた藤の乳母車を押しながら、ほおかむりをしたおばあさんが上ってきた。不器用に体をねじ曲げ道をあけて待つヤスジに「兄(あん)ちゃん、あんがとね」と言って通り過ぎる。「あいよ」と答えて下っていく彼の隣には、壁一面にぎっしりと埋め込まれた焼酎瓶が、ギラギラと顔を光らせ口をあけて、帰省者を歓待していた。
焼酎瓶が埋められた壁の反対側には、「土管坂」の名の通りに土管が積み上げられ、地面には焼き物の欠片がびっしり埋め込まれている。ひんやりと懐かしい坂を下りながら、ぶら下げていた紙袋を腕にかけ直し、幼なじみと再会する気分で壁に触れていく。朝礼中の小学生のように整然と並んだ瓶の頭たちには、ひとつひとつに個性があり、見覚えがある。ほぼ大きさの揃った中に、ひとつだけ小さな瓶が混ざっていた。他のものに比べて半分くらいの大きさしかないその瓶が、いつも身をこごめていたのをヤスジはよく覚えていた。梅雨の頃、学校の行き帰りに、のびのびと這いまわる虫たちに身を縮めているその瓶から、かたつむりを取り除いてやっていた。小さいながら、五月晴れの日差しを浴びてぎらぎらとはりきっている今日の親友を見つけると、ヤスジは「おう」と挨拶をした。
焼き物の街T市は坂が多い。土管坂は、坂が崩れるのを防ぐために焼き物で三方向を覆いつくした坂道だった。片側には両手で抱えるほどの太さの土管が縦横に積み上がり、反対の壁には焼酎瓶が口を向けてバスケットボールほどの半球を残して埋め込まれ、地面にも焼き物が欠片となって埋まっている。土管の円柱と瓶の球体に覆われた赤褐色の坂は、初めて見る人をたじろがせずにはおかない迫力に満ちている。
「この坂を見たいって言ったのにな」
えり子は勤勉な女だ。
(三)
裏木戸を開け、枕木が敷かれた庭にはいると、マテバシイの向こうに父の姿があった。痩せてひょろ長い体の半分が幹に隠れている。
「たんだいまぁ〜」と声をかけると「お。きたんか」とだけ言って、また前を見る。葉影の下をのぞくと、父は腕組みをして、薄いピンク色に咲いた薔薇の花をじっと見ていた。
「今朝、咲いた」
ふぅん、そうか。答えて父の隣に立つ。薔薇に興味はないが、丹精する父の姿はヤスジの心に焼き付いている。
「入るか」
玄関の方に向き直った父に向かって慌てて紙袋を差し出す。母に手渡すのは照れくさかった。
「おう、すんません」
ひょこりと肩をすくめた父に、ヤスジも小山のような肩を少しだけ縮めた。
畳に寝転んでいると、縁側から草木を通した風の匂いがやってきた。アパートでは、窓をあけても排気ガスとアスファルトの匂いしかしない。
鼻から思い切り空気を吸い込んだところで、畳をこする裸足の足音と一緒に母の声がやってきた。
「こっちで。ほれ、食べな」
寝ころんでいても手が届く高さのちゃぶ台に、赤褐色の皿に乗った枇杷を置き、「よっこらしょお」というかけ声とともに母が座ると、縁側からの風が揺らいで止まった。
「アンタが久しぶりに帰ってくるって話したら、『そりゃ珍しい』ってな」
いとこの家から今朝届いたばかりだという枇杷の実は、小ぶりで不揃いで色も薄い。母と向き合ってちゃぶ台の前にあぐらをかき、薄い黄色にところどころ黒い点のついた皮をむくと、瑞々しい果肉があらわれた。
「どうね」
母の手は、枇杷からすばやく種を取り出していく。
「どうったってなあ」
ヤスジは皮を剥いた枇杷にかぶりつく。
「変わり、ないのか」
「変わんねぇよ」
――変わんなかったな。ヤスジは慣れない感情に戸惑った。茶棚に並ぶいくつもの急須の朱泥が頭にのしかかってくるように感じる。
――俺んち、行ってみる?
そう聞いたあの時、えり子は確かにうなづいたのだ。
「電話で、ほれ、なんか言ってたろ?」
――えり子のことしゃべったか俺?
母に問われて焦ったヤスジは黒々とした種に歯をぶつけた。奥歯の痛みが蘇って、気持ちのきしみも戻ってくる。「いてててて」と頬を抑えて下を向いた間にと、電話の会話を思い出そうとしてもなかなか思い出せない。
「歯医者いかないと。なあ」
歯の奥から涙線に熱がせりあがってきた。
「そんなに痛いか?」
丸い掌で背中をさすられながら鼻をすすりあげた。
家に上がった時、床がつるつると滑ったことを思い出す。はいつくばってワックスをかけている母の姿が目に浮かんだ。やっぱり口を滑らせたんだなぁ。
新鮮な枇杷の香りが、ヤスジの鼻から抜けていく。
えり子は賢い女だ。
(四)
自分で買った土産の菓子をひとつ持って黒光りのする階段を上り、高校を卒業するまで過ごした二階の部屋へ入って窓際に腰掛けると、太ももの下で木製の窓枠がギシギシと鳴った。タバコに火をつけて一息吸い込み、木々の間に連なる屋根と、その向こうにわずかに見える湾に向かって煙を吐き出す。庭を見下ろすと、父がまた薔薇を見ていた。
――そんなに見張ってないと、ダメなのかなあ。
一度だけ、えり子に花を贈ったことがあった。通りががった花屋の店頭のバケツにはいっていたミニバラの小束が目にはいったのだ。
何もなかったヤスジの部屋に、えり子はいつもさりげなく花を飾った。殺伐としていたヤスジの日常は、彼女によってどんどん彩られていった。
一人暮らしを始めた頃に不用品としてゆずられたワンドアタイプの古い冷蔵庫の手垢を拭きあげきれいにし、庫内にはタッパーに用意した常備菜を入れておいた。元々あったものと同じタイプのテーブルをもうひとつ持ちこんで、手料理をふるまう時には、ふたつをくっつけクロスを敷いた。汚れものを目ざとく見つけては、やはり不用品だったヤスジの二層式の洗濯機をくるくると頻繁に回し、片っ端から整理整頓していった。14型ブラウン管のテレビも、今どき珍しいよね、と言ってはこまめに埃をぬぐい取った。ヤスジの目覚める時刻に合わせて米を研ぎ、炊飯器の予約タイマーを忘れずセットして帰った。自分のペースを変えられて戸惑うことはあっても、わずらわしいとは思わなかった。楽しそうな彼女を見ているだけでうれしかった。
だけどあの時、情熱の赤い薔薇だぜ。気取ったつもりで渡したら、えり子はすぐに視線を手元の雑誌に戻してあっさり答えたのだ。
「ありがとう、きれいなカーネーションね」
えり子はそそっかしい女だ。
置きっぱなしの学習机の引き出しから高校の時の実習で作ったぐい呑みを取り出し、ろくろを回す時の泥の感触を思い出しながら、タバコの灰をその中に落とす。焼き物実習があるたび増えていった小物を、引き出しの中や棚の隅から出しては、埃をふーっと吹き払いながら並べてみる。魚の形をしている色の薄い平坦な焼き物は、箸置きとして作ったものだ。お猪口なのか茶碗なのかわからない中途半端な大きさの碗もゴロゴロとたくさんある。大きめの動物は、ヤスジの干支、猪の置き物だ。
「えり子ちゃん、あそびましょ」
小物をいじっているうちにままごと遊びをしている気がしてきたヤスジは、その時、テーブルをふたつ合わせた食卓を思った。かいがいしく食事を作っても、えり子自身はほとんど食べずに帰っていった。深夜まで帰らないことの多い彼の留守中に来ては、掃除をし洗濯をし、好きに飾り付けをした。たまにしか主は帰らずろくに家具もない殺風景な四角い部屋は、彼女にとっては格好のままごと遊びの舞台だったのかもしれない――。
ショートカットのえり子の横顔が、横を向いた魚の箸置きに重なる。そういえば、とまた気付く。えり子の視線はいつもぐるぐると部屋ばかりを見ていた。舞台装置を確認する演技指導者のように。
えり子は。本当のえり子は、どんな女だったんだろう。
魚の箸置きと猪の置き物を並べたヤスジは「似合わねぇ」と笑うのに成功した。
「礼儀正しい泥棒さん、さよーなら」
箸置きを引き出しにしまいながら、ひょこりと頭をさげ、ふと、首をかしげる。灰皿だけ残していったのは、どうしてだろう。
「俺なら全部持っていくのにな。ケチだからよ」
その前に、持ち込めるような商売道具を何ひとつ持ってないなと、ヤスジはまた笑う。メラミンの白い灰皿ひとつ、泥棒がくれたお情けだな――。
「ヤスジーっ」
階下で母が呼んだ。懐かしい煮込みの匂いに鼻を鳴らす。どかどかと階段を下りきった床であやうく滑りそうになったヤスジが、おっとっと、と踏ん張ってから顔をあげると、父が黙って一升瓶を掲げてみせた。
●《自己批評》
『昭和の男の失恋譚。
T市の方にはごめんなさい。一度しか行ったことないです。土管坂見たことないです。(「土管坂」はぜひ検索してみてください。)
あと、「薔薇とカーネーションを間違える」というのがいくらなんでもそんなバカな、とおっしゃる方のためにもう一言。ワタシ間違えました、ハイ。』
《酒呑み家 かしのきタール》
゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜
◎泥棒のくせに何一つ商売道具をもっていなかったんです。
著者:空蝉八尋
゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜
◎なぜなら老人は首から下がなかったからだ。
著者:真紅
゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜
◎ドラマじゃないんですから、都合良く時計は壊れはしません。
『おばあちゃんのこと』
著者:rudo
「ドラマじゃないんだからっ
そんな都合よく時計が止まるわけないでしょっ」
玄関の鍵を開けるとすぐ 大きな時計がある。
どうしてだか止まっていた。 それを見た弟が
「この2時40分にばあちゃんに何かが起きたんだな」
・・と言ったからだ。
「いやっ この時計はばあちゃんが大事にしてた。
だから ばあちゃんに何かあったことを知らせてるんだっ」
時計は壁にかけてあって大きな振り子がついている。
すこし斜めになっているのまっすぐに戻すと
振り子はまた左右に揺れてコチコチと動き出した。
「ただ 曲がってただけだよ」
「おおっ 何かあったから曲がったんだなっ」
おばあちゃんは私たちの母親の母親だけど
二人はものすごく仲が悪い。
喧嘩らしい喧嘩をするわけではないが
お互いの言葉には刺々しさと嫌味が含まれていて
聞いているほうがドキドキする。
そんなだからほんの一駅・・歩いたって15分そこらの距離に
住んでいながらほとんど行き来はない。
行き来はないが・・それでもひと月に一度
おばあちゃんは私たちの家にやってくる。
毎月毎月 きっちり 15日の午後3時。
家賃の集金に来るのだ。
そう・・私たちはおばあちゃんから家を借りているのだ。
母親はそれも気に入らないのだ。
娘が住むのに金を取るなんてっ と思っているのだ。
さらに言えば他人に貸すのと同じだけ取るのも気に入らないのだ。
「あのばあさんは 娘が憎いのさ」 そんな感じだろうと思う。
だからおばあちゃんがいなくなったって
本当なら気づきもしないのだが
必ず来るはずの5月15日。
15日だというのに おばあちゃんは来なかったのだ。
今までだって来なかった日はある。
病気になったり
雨がざあざあふってたり
そんな時だ。
そんな時はでも 必ずきっかり来る予定の時間 午後3時に電話をかけてくる。
そして 今すぐ振り込めとか 持って来いとか しばらくだだをこねるらしい。
母親は「明日来ればいいでしょっ」 最後にはそう言って
力任せに受話器をたたきつけるのだ。
たまたま来る時にいなかったりしたら大変だ
おばあちゃんは玄関の前に座り込んで待っている。
いつまでもいつまでも待っていて
戻ってきたとたんに大声で
「家賃を払えっ 払えないのかっ お前の亭主はそんなに貧乏なのかっ」
そんなふうに言うものだから みっともなくて留守にも出来ない。
たまたま休日に重なってみんなで泊りがけで出かけた時は
帰ってきたら玄関に 金払えっ と大きな紙が貼ってあった。
いまどきサラ金の取立てだってそんなことしない。
だから こない。 電話もない。
それはただごとではない。
16日の日には母親は 弟に見て来いと命令した。
帰ってきた弟が言う。
「いない」
「いないってなによ?」
「だから 留守みたい」
「本当に?」
「本当に本当に留守だった?」
たたみかけるように聞くので弟は自信をなくし黙り込む。
17日になっても 18日になっても
おばあちゃんは来ないし電話もない。
それで もしや死んでるんじゃないかと思い
今度は私も一緒に行って 中も見て来いと鍵を持たされたのだ。
そして まず玄関の時計が止まっていた。
茶の間にはテーブルの上に朝ごはんだか昼ごはんだかの後がそのままだ。
その奥の和室にはとりこんだだけの洗濯物が放り出してあった。
洗濯ばさみがついたままのもいくつかある。
「おばあちゃんらしくないね」
「なにが?」
「おばあちゃんはこんな風に出しっぱなしにしたり
あとかたづけしないなんて嫌いじゃん」
「そうだっけ?」
「あんた なんにも見てないのねぇ」
弟はちょっとふてくされて言う。
「じゃあ ねーちゃん ばあちゃんの冷蔵庫の横見たことあるか?」
「??冷蔵庫の横? なにそれ?」
「ふふん 知らないだろう?」
弟は勝ち誇ったような顔をして私を冷蔵庫の横に引っ張っていく。
・・・
「な・・に? これ?」
冷蔵庫の横一面は白い小さなラベルでいっぱいだ。
「ばあちゃんの趣味だ」
「趣味? 冷蔵庫に貼る事が?」
「冷蔵庫じゃなくてもいいだろうけど
このラベルをとっとくことがさ」
「おばあちゃんがそう言ったの?」
「言わないけど 集めてるんだから趣味だろう?」
ラベルには数字が打ってあるけど
みんながみんな同じ数字でもない。
63 とか 298 とか 132とか・・
でも298が一番多いかな・・
「これは・・なにかいなくなったことに関係あるのかな・・」
「ないよ」
「なんでよ? そんなことわかんないでしょう?」
「わかるよ。 趣味だもの。 関係ないよ」
そんなことを言い合っていてもしかたないので
とりあえず出しっぱなしの食器を流しに運び
洗濯物は・・洗濯ばさみだけはずして隅によせていったん帰ることにした。
洗濯物をたたまなかったのは
ひとそれぞれたたみ方が違ったりするし
下着とかもあるだろうから触られたくないんじゃないかと思ったからだ。
母親はそういうことを気にしないんだよね。
そんな細かなところからして気が合わないんだろうな。
「・・帰ろうか・・」
「おかあさん 警察に言うかな」
「・・・さあ」
このあと捜索願を出すとか
もう少し待ってみるとか
そういうことは大人の考えることだ。
とにかくこの家の中を見る限り
なんだか急いで出かけたのかもしれないが
特に事件があったようには見えないから。
戸を閉めて鍵をかけて・・
うしろで急に声がした。
「あんたたち。 何やってんのっ」
「ひゃああっ」
「あーっ おばあちゃんっ どこ行ってたんだよ
15日に来ないから心配だから見て来いっておかあさんが」
「ふーん? 心配だと? どうだかね」
おばあちゃんはさっさと鍵を開けると
中に入り 「あんたたちもお茶飲んで行きなよ。 おみやげあるから」
・・と手招きした。
「おや? 食器をさげてくれたんだね?」
「うん。 でも洗ってないよ」
「いいのいいの。 人に洗ってもらっても
結局また もう一度洗っちゃうんだから」
「洗濯物も・・洗濯ばさみはずしただけ」
「うんうん。 あんたはちゃんとわかってる」
おばあちゃんはお湯を沸かしほうじ茶を入れてくれた。
おばあちゃんの家のお茶はいい香りがしておいしい。
弟はお茶なんてふだん飲まないが
おばあちゃんの家のは飲む。
「おばあちゃん どこ行ってたの?
15日なのに電話もしてこなかったし・・」
「昔のね。 友達に会いに行ってきたんだよ」
「どこに?」
「京都。 ほらだからおみやげは八橋だよ」
「京都に友達がいたの?」
「死んじゃってね・・ 友達。
京都の人と結婚したからお墓が京都なのよ」
「お墓参りに行ってきたの?」
「まあ それもあるけど。
その友達のご主人とも仲良くしてたからね
会っておこうと思ってさ」
「なんでまた 急に・・」
「でも もう亡くなってたわ」
「・・・えっ?」
「テレビで高野山の特集をやってたんだよ。
お墓ね 高野山なの。 ご主人が高野山の坊さんの親戚とからしくてさ
遅かったねぇ。 急に思い立って出かけたけどねぇ」
「あんたたちにはまだ関係ないかもしれないけど・・
歳とったらさ。 友達には会おうと思ったとき
会っといたほうがいいよ」
「ほんとにさ。 いつ死ぬかわかんないんだから・・
・・まあ そんなこといったら 歳は関係ないか
事故なんてこともあるしね」
「うん・・」
そんな話をしている間に弟は
がぶがぶとお茶を飲み 八橋を一人でほとんど食べちゃっていた。
「なによっあんた 私まだ 一個しか食べてないのにっ」
「いいよいいよ。 まだあるから。
いっぱい買ってきたから」
おばあちゃんはそのあとも
しばらく亡くなってしまった友達とそのだんなさんの話をしていたが
断片ばかりで時間軸も行ったりきたりで
なんだかよくわからなかった。
ただ おばあちゃんはものすごく後悔してるようだった。
会おう会おう 会いたい・・と願いつつ
今度 この次 と延ばしている間に
もう二度と会えなくなってしまったことを・・
「彼女・・八橋が好きでねぇ・・
だからさ いっぱいお墓の前に置いてきたんだ。
それでさ 私もいっぱい買ってきたのさ」
「ふーん・・」
帰り際、玄関先でおばあちゃんが言う・・
「じゃ 明日 集金に行くから・・
そう言っといて。 京都に行ってたことは内緒ね」
「うん わかった」
「あ・・そうだ。 おばあちゃん
あの冷蔵庫の横のラベル・・あれなに?」
おばあちゃんは 何のことかと一瞬不思議そうな顔をして
「ああ あれか・・」と言って くっくっと笑った。
「あれはね。 別になんでもないんだけどさ。
魚肉ソーセージの値札だよ」
「魚肉ソーセージ?」
「そう。 私ね 魚肉ソーセージが好きなの」
「知らなかった・・」
「でね いつも一本とか 5本の束になったやつとか買うんだけどさ
冷蔵庫にしまう前にねラベルはがして貼ってるの」
「どうして? 」
「・・どうしてだろうねぇ・・それは わかんないけどね。
子供のときからの癖みたいなもんかね」
「そうなん・・だ」
「そうだ。 あんたさ。
おばあちゃん死んだら お供えは花なんかじゃなくて
魚肉ソーセージにしておくれよ」
「・・へんなの」
「それでさ。 墓石に値札貼ってよ。
魚肉ソーセージのさ・・ねっ?」
おばあちゃんは うんうんと うなづいて
「それはいい考えだ」 とかなんとか
ぶつぶついいながら 家の中に戻って行った。
●《自己批評》
『わけわかんね。
スランプ。
ねたぎれ。
次回は・・すみません。
お休みします。』
《rudoのあれこれ・・ rudo》
∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞
◎魚肉ソーセージの値札なんです。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
出題者:松永夏馬さん
作品名:『古畑任三郎1』 著:三谷幸喜
正解者:無し
おま……たせ
ました
訂正 受け
ま……
す……
2008.05.31 18:53 URL | night_stalker #NN0jmGmk [ 編集 ]
お疲れです。
……wikiの作業、明日します(汗)
2008.05.31 19:22 URL | 平良 原 #- [ 編集 ]
お疲れ様。うっ。ごめんなさい。
ここ間違ったら 訳わかんないじゃない、ってとこばかり 訂正です。
昨日店を閉めた後、巻き取ったレジの記録紙を帳面に貼り付けながら、
×「昨日の売り上げ
○「今日の売り上げ
★ヤブ先生とハルさんの会話を漏れ聞く内に解ったことだが、スーパーで女に逆切れされた「勇気ある客」というのはどうもハルさんだったらしい。
この文を後ろの段落の方にくっつけて、下さい。
★「大変申し上げにくいのですが、身近な人間の犯行ですな」
TV画面で指さされた俳優が、がっくりと膝を折る。
一旦俯いて肩を落としたその「犯人」は 全てを認めた上、クックッと笑い出す。
同じ言葉を画面に合わせて 理子が口に出したとき
↓
「大変申し上げにくいのですが身近な人間の犯行ですな」
同じ言葉を画面に合わせて 理子は口にした時、茶の間からハルさんの高らかな笑い声が聞こえた。
一旦俯いて肩を落とした画面上の「犯人」は全てを認めた上、クックッと笑い出す。
TV欄で4番目に名前が載ってた俳優だった。
ほんっと すみません。
2008.05.31 22:53 URL | なずな #- [ 編集 ]
Wiki、更新しました。
2008.06.01 15:03 URL | 平良 原 #- [ 編集 ]
コサメさんの原稿、アップしました!
なずなさんの原稿、修正しました!
営業行って来ます!!!
2008.06.02 21:18 URL | night_stalker #NN0jmGmk [ 編集 ]
面目ないっす…ヘ( T∇)ノ
2008.06.03 01:27 URL | 朔 #- [ 編集 ]
今回も皆様オツカレサマでした。
落した方々の理由が「お題があまりにもアレだった」でしたらホント申し訳ない(笑)
個人的にはコサメさんの作品推し。魅かれました。
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